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“チェロのジミヘン”、ジョヴァンニ・ソッリマの来日公演が、想像以上にすごかった件

8/19(月) 8:10配信

otocoto

規格外のボーダーレスな音楽をやるチェリスト、ジョヴァンニ・ソッリマ。その名前は、知る人ぞ知る存在として、噂には届いていた。1962年シチリア島パレルモ生まれ。リッカルド・ムーティやヨーヨー・マらが賞賛し、シンガーソング・ライターのパティ・スミスと共演し、ピーター・グリーナウェイ監督の映画『レンブラントの夜警』などの音楽も担当し、オペラもいくつか作曲。クラシックのみならず、ロック、ポップス、民族音楽など、あらゆるジャンルにまたがる自在な音楽世界をもつチェリスト・作曲家として、すでにヨーロッパでは名声を確立している。
そのソッリマが、この夏に来日しておこなったステージの様子を、インタヴューでの彼の発言もまじえてご紹介しよう。


それは、さながら、秩序ある人間たちの集団のなかに紛れ込んだ、一匹の美しい野獣であった。

ジョヴァンニ・ソッリマの最初のコンサートは、夏の音楽祭「フェスタサマーミューザKAWASAKI」の一環としておこなわれた、藤岡幸夫指揮東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団とのドヴォルザーク「チェロ協奏曲」だった(8月6日、ミューザ川崎シンフォニーホール)。

大枠としては、普通のクラシックの演奏会である。
指揮者がタクトを振り下ろし、正装のオーケストラが格調高く音楽を奏でる。
最初はソッリマもそれにおとなしく従い、当然のことながら楽譜通りに、もちろん見事に演奏していた。
だが、それだけではとどまらない、何かが、あった。
野性の血が騒ぎだすのが、客席から見ていてもよくわかった。

何より目を惹いたのは、オーケストラだけが演奏しているときの、ソッリマの入魂ともいうべき耳の傾け方である。
チェロが演奏しないときでも、オーケストラが力強く盛り上がるときには、完全に音楽と同化している。ときには身体を揺らし、手に持った弓を宙に突き出すようなしぐささえ見せながら、激しく気合を入れるのだ。
その様子が、あまりにもドヴォルザークへの愛に満ちているので、私はすっかり感心してしまった。
第3楽章ではいよいよ演奏に熱が入り、最後の一音を弾ききった瞬間などは、ロック・コンサートではないかと思うくらいに、勢い余ってガッツポーズのような弓の振り払い方だった。それはもう、笑ってしまいそうなくらいに!

やっぱりこの人はタダモノじゃない!と納得しているうちに、ソロのアンコール。
ソッリマの自作「ナチュラル・ソング・ブック No.4&6」という作品を演奏したのだが、これがすごかった。

いったいチェロからこんな音が出てくるのだろうか、と思うほどの妙音を、あの手この手で、次々と繰り出してくる。アグレッシヴで、ポップで親しみやすく、歌に満ちている。
楽器のあらゆる場所を、弦のあらゆる場所を、弓のあらゆる部分で、叩く、こする、はじく。
ジミ・ヘンドリックスのように歯で演奏まではしなかったが、そこまでやってもおかしくないくらいに過激であった(実際に弓を口でくわえることは何度もやった)。猛烈な速弾きは、むしろリッチー・ブラックモアに近いかもしれない。稲妻のような弓さばきは、ヴァイオリン界のロック・スターともいうべき存在、ナイジェル・ケネディを彷彿とさせた。

まさに、檻から解き放たれた野獣のように、ソッリマは自由自在にチェロで、広大な音楽の平原を、大海原を、駆けめぐっていた。

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最終更新:8/22(木) 11:43
otocoto

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