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アップルが展開する屋外の「ARアート」は、これからの拡張現実の戦略を象徴している

8/19(月) 8:11配信

WIRED.jp

サンフランシスコの上空にたまった砂漠の熱気のおかげで、空は霧もなく青く澄み渡っていた。このため、ダウンタウンにある聖パトリック教会を越えて上へ上へと浮かび上がっていく「言葉」の数々は、さらに際立って見えた。

【記事の全画像】アップル「[AR]Tウォーク」

白い大文字のアルファベットで描かれた言葉が完璧な両端揃えで空中に浮かび、アーティストで詩人のジョン・ギオーノがそれらの言葉を読み上げる声がヘッドフォンから聞こえてくる。

「広大な青空のドーム/あなたの心が/くぎのように突き刺さる」

徐々にいちばん上の言葉が崩れて飛んでいき、仏教的な内省の言葉が『スター・ウォーズ』のオープニング・クロールのように上へと流れていく──。

そのスケールの大きさは息をのむようだった。ひとつの言葉に何十フィートもの高さがある。それなのに、昼休みのイェルバ・ブエナ・ガーデンズに集まった大勢の人々は気にも留めない様子だった。わたしと同じくらい心を奪われたように見えたのは、同じ方向に「iPhone XS Plus」を向け、同じように「Beats by Dr. Dre」のヘッドフォンを着けていた3人だけだった。

この3人が“アップルまみれ”だったのは偶然ではない。ギオーノの作品「Now at the Dawn of My Life」は、このほどアップルが開幕したARパブリックアートウォーキングツアー「[AR]Tウォーク」に出展された6つの作品のひとつなのだ。

前例のないアート体験

拡張現実(AR)は、仮想のオブジェクトが実世界の環境に統合される技術だ。この10年ほど前から、美術館やアーティスト(従来のアートもゲリラ的なものも含む)にも取り入れられるようになった。いまではARや仮想現実(VR)に特化した展示が、かつてないほど定期的に開催されるようになった。

大きな理由は、ARの構築や実装がこれまでにないほど簡単になったからである。AndroidとiOSには2017年からARの開発キットが導入され、いまでは大幅に改良されている。フェイスブックはARツールの「Camera Effects Platform」を「Spark AR」として刷新している。

これらの3つのシステムは、マイクロソフトの「HoloLens」やマジックリープの「Magic Leap One」といったウェアラブル端末とともに、現実世界のギャラリーでヴァーチャルアートを創るために利用されてきた。一方で、こうした限られた空間から抜け出して公共空間へと展開していくのは難しかった。すべてのユーザーに一貫性のある体験を提供することが難しいというのが、その主な理由である。

今回の[AR]Tウォークは、ニューヨークの「New Museum」と共同でつくられた。体験に要する時間が約2時間で、世界に500店舗以上あるアップルストアのうち6店舗を起点に楽しめる。体験できる場所は少ないかもしれないが、規模や範囲において非常に野心的なものだ。そしてゲームの世界以外では、まったく前例のないARの展開と言っていい。

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最終更新:8/19(月) 8:11
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