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イタリアサッカー連盟の先駆者が明かす、データアナリストの仕事

8/19(月) 20:07配信

footballista

ビッグデータ時代の到来を迎えた今、そのデータを“ 解釈”するデータアナリストの需要は増す一方だ。しかしながら、彼らが現場でどのような仕事を担っているのかはなかなかうかがい知れない。そのデータアナリストの仕事の最前線について、イタリアサッカー連盟(FIGC)でマッチアナリストを担当するアントニオ・ガリアルディが、イタリアのWEB マガジン『ウルティモ・ウオモ』で大いに語った貴重なインタビュー(2018年7月27日公開)を特別公開する。


インタビュー・文 アルフレード・ジャコッベ
翻訳 片野道郎


 アントニオ・ガリアルディは、イタリアにおけるサッカー統計データ分析の先駆者の1人だ。今回は彼とともに、各年代のイタリア代表で統計データがどのように活用されているかを掘り下げた。

IDP(危険度指数)とは?

攻撃の危険度を客観的に測定するもの。IDPとxGの評価には近似性がある


──アントニオ、以前、マウリツィオ・ビシディとのインタビューの中で、あなた方が開発した危険度指数(Indice Di Pericolosita=IDP)についての話が出ました。この指標について教えてもらえますか。


 「ビシディが考案し、私とマルコ・スカルパが共同で開発したものです。大元になる考え方は、『どちらのチームが勝利に値したのか』という問いに答えるために、攻撃の危険度を客観的に測定する、というものです。

 どんなスポーツにおいても、結果を規定するのは得点です。もちろんそれはサッカーでも変わりません。しかしゴールというのは非常に発生頻度の低いイベントであり、チームのパフォーマンスをより深く理解するためには、ゴールの数を考慮するだけでは不十分です。そこでまずは決定機、すなわちGKの前でフリーになった選手にボールが渡った状況を数えるようになりました。そこから始まって、ラスト30mで起こった一連のイベントを拾い出し、そのそれぞれを評価して点数をつけるという方法を確立していきました。そうして生まれたのがIDP です。

 これは言ってみれば、アマチュアボクシングのポイント制のようなアプローチでサッカーチームのパフォーマンスを評価する仕組みです。アマチュアボクシングでは、当たったパンチすべてについて審判が評点をつけてそれを積み上げていきますよね。IDPも、1試合の中でゴールに結びつき得るすべてのイベントを拾い出し、そのそれぞれにポイントをつけていきます。試合が終わった時点でそのポイントを比較すれば、それぞれのチームの攻撃がどれだけ効果的だったかを評価することができます。

 当初は、A代表の試合においてすべてのイベントを手作業で拾い出しタグづけしていました。そして2014年からはSICS(イタリアのデータ分析会社)が我われのモデルを使ってセリエA、セリエBの全試合のデータを収集するようになりました。それを通してわかったのは、このモデルが導き出したデータとリーグ戦の最終結果に密接な連関があることでした。それは、私たちが当初設定した問いが正しかったことを示す最初の答えになりました」

 
──我われが使っているゴール期待値(xG)と同じタイプの連関ですね。


 「IDPとxGが、違う出発点からスタートしているにもかかわらず、ほとんど同じ結論に到達することは確認済みです。xGは位置情報をベースに算出されており、より堅固な数学的モデルに基づいています。IDPは、主観的でありながらもより高い精度でプレー状況を評価するモデルであり、xGと比べるとより戦術との関連性が深い。例えばIDPでは、シュートで終わらなかったプレーも評価の対象になっています。いずれにしても、xGとの一致は、IDPをゼロから開発した我われにとってその仕事の正しさを立証してくれる大きな材料になっています。

 さらに言えば、我われのモデルの正しさを立証してくれる統計データは他にも複数あります。例えば、1ゴールあたりのIDPは30 ~33ポイントという平均値に収束しています。これはどのリーグでも、またどのシーズンでも変わりません。もちろん、チームの攻撃力による偏差は存在します。決定率が高い、あるいは強力なストライカーを擁するチームは、1ゴールを挙げるのにIDPが20ポイントもあれば十分です。一方、順位表の下の方には1ゴールに45ポイントを必要とするチームもあります。しかしこの20から45という偏差も、リーグやシーズンにかかわらず一定です。

 IDPのモデルは時間とともに精緻化されてきています。当初、それぞれのイベントに対する評点は、我われの経験に基づいて主観的に決められたものでしたが、ある時点で過去のデータに基づいてそれを計算し直しました。さらに、セットプレーについてもIDPのデータを収集するようになりました。現在FIGCでは、アンダー世代のすべての代表チームについて、自前でデータを収集する体制が確立されています。一方セリエAとセリエB、そしてA代表、U-21代表、そして女子代表については外部の会社に依頼しています」

 
──IDPはあなたたちの仕事にとってどのような助けになっていますか。個々のプレーヤーのパフォーマンス向上にはどのくらい役立つのでしょうか。


 「FIGC育成年代統括コーディネーターのビシディは、U-15からU-21まで各年代にわたって年間およそ100試合をチェックしています。すべての試合をライブで見ることはできないので、見ていない試合については、ビデオアナリシスとデータ分析に基づく我われの戦術レポートを参照します。いずれにしても、データは我われの主観的な分析と評価をサポートするものという位置づけです。それはコーディネーターや私だけでなく、チームを率いる監督たちにとっても同じです。

 IDPはチームのコレクティブなパフォーマンスを評価する指標です。xGからはプレーヤー個人のパフォーマンスを読み取ることもできますが、IDPはチームがコレクティブに決定機を作り出すプロセスに注目し評価するものです。監督たちはチームとデータを共有することを通じて、アクティブに戦うことの重要性を彼らに示します。より多くのIDPポイントを生み出せば、長期的に見て試合に勝つ確率を高めることができるからです。

 個の成長という観点について、我われはもう1つ別のモデルを開発しました。これはキーパス、つまり敵守備ラインを越えたパスをカウントするものです。もともとの発想は、パスの数をカウントするのではなく、その有効性を測定することが必要だというものでした。敵のプレッシャーラインを越える縦パスは、他のいかなるパスとも異なる価値を持っています。これはトップ下がFWに送り込むスルーパスだけに当てはまる話ではありません。DFが2ライン間にいるトップ下に送り込む縦パスもまた、同じかそれ以上の重要性を持っています。これは個々のプレーヤーの成長にとっても大きなインパクトをもたらします。キーパスをカウントすることによって、DFは自らの戦術理解度、プレー選択の能力、キックの精度を知り、向上させることができるのですから。

 このツールは、タレントの発掘にとっても有効です。というのも、キーパスは我われが採用しているゲームモデルと深く連関しているからです。他の部分で欠点があったとしても、キーパスを数多く記録している選手がいれば、彼の欠点を修正するための特別なトレーニングを用意することはあっても、セレクションから外すことはないでしょう。彼が持っているタレントは我われにとってとても貴重であることは明らかだからです」

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最終更新:8/19(月) 20:07
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