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イタリアサッカー連盟の先駆者が明かす、データアナリストの仕事

8/19(月) 20:07配信

footballista

マッチアナリストの役割

対戦相手の分析はビデオの準備が9割。統計データは、敵よりも自チームに焦点が当たる


──A代表のマッチアナリストとしては、どのようなミッションが課されているのでしょう。A代表の試合がある時の作業スケジュールを教えてください。


 「私のミッションは、トップクラブのマッチアナリストに課されるそれと変わりません。つまり、味方と敵の双方について、ピッチ上で起こるすべてに関する客観的なデータを収集・分析するというものです。客観的なデータ分析というのは、具体的には次のようなことを指します。技術よりもチーム戦術にフォーカスしたビデオ分析、そして統計データに基づくレポート。

 マッチアナリストの仕事は、その90%がチームに提供するための戦術分析ビデオの準備、そして10%が統計データの分析に充てられます。これはA 代表でも、ヨーロッパのメガクラブでも同じだと思います。次の試合を準備するために、マッチアナリストは対戦相手の直近5試合から10試合をチェックし、分析ビデオを作成します。そこには、どのように攻撃をビルドアップするか、どのように敵陣にボールを運び、どこからどのようにフィニッシュを狙うか、最も危険な選手は誰で、チームとしての長所はどこにあるかが、簡潔に整理されます。

 守備の局面に関してもそれは変わりません。どのようにプレスを仕掛けてくるか、SBはどのように前に出てくるか、我われのゲームメイカーを誰がどのようにマークするか。そしてとりわけ、敵の守備の弱点がどこにあり、どのように攻略すべきかを特定するのが、マッチアナリストの重要な仕事です。その場合にはとりわけ、我われと同じシステムで戦う相手との対戦に注目することが重要です。最近の例を1つ挙げると、オランダについては、彼らの[3-5-2]を我われの[4-3-3]とどのように噛み合わせてくるのかに焦点を合わせて分析しました。

 そして試合が終われば、今度はタクティカルアングルから撮影したビデオをもとにした自チームのパフォーマンス分析を行います。技術的なディテールを認識するのは難しいアングルですが、コレクティブな振る舞いを見るには最適です。

 自チームのパフォーマンス分析においては、監督とマッチアナリストの立場は逆転します。試合前にはマッチアナリストの意見が非常に重要です。これはスタッフ全員の中で対戦相手を最もよく知る立場にあるからです。しかし試合後は、監督がチームのパフォーマンスをどう考えどう受け取ったかの方に重点が置かれます。監督はチーム、そして個々のプレーヤーの心理状態を誰よりもよく把握しているので、単に分析的な視点で見るよりも広い視点からプレー状況を解釈することができます。

 統計データに関しては、敵のパフォーマンスよりも自チームのそれに焦点が当たります。対戦相手の分析はビデオアナリシスとプレーヤー分析だけでも、ゲームプランを準備するには十分ですが、我われのチームのパフォーマンスに関しては、より詳細に掘り下げる必要があります。統計データを使えば、ピッチ上で何が起こっていたのかをよりよく理解することができます。例えば、この試合では敵陣でのボール奪取が11回あったけれど、これは従来の平均値18と比べて明らかに低い数字だ、というふうにね」


──マッチアナリストの仕事にとって、試合前の分析ではビデオ、試合後の分析では統計データが中心になるというのは、常にそうなのでしょうか。


  「一言で言えば、答えはイエスです。もちろん、その時々の事情に左右される部分はありますが。ビッグクラブの監督の中には、対戦相手を詳細に研究しながらその内容をチームにはまったく開示しない人も少なくありません。メンタルな側面はここにも関わってきます。対戦相手のビデオは見せない、それは自分たちの方が上であり、相手がどうであろうと自分たちの試合をするからだ、という理屈です。しかし実際のところ彼らのスタッフは対戦相手を非常に深く分析しており、その結果に従ってSBには誰を起用してどういうタスクを与えるか、インサイドMFはどのようなポジショニングを取るかといった戦術のディテールを決めているのです。

 このタイプの監督は、必ず自チームのビデオを選手たちに見せます。ゲームモデルは継続的に進化し、完成度を高めていかなければならないからです。それゆえ、ビデオを通して現時点でのパフォーマンスの長所と欠点を共有し、そこからさらに改善し向上すべきポイントを提示していくというアプローチが取られます」


──あなたの仕事のプロトコルは、監督には左右されないのでしょうか。


  「それはされません。私のプロトコルは常に一定です。例えば、対戦相手の選手1人ひとりについての統計データをまとめたレポートは、プランデッリ監督の就任に合わせて私が今の仕事に就いた時から、監督が代わっても現在までずっと作り続けています。

 しかし監督によって要請されるものは違いますし、私も監督の戦術的な考え方に対応する必要があります。具体的には、ビデオのプレゼンの仕方やレポートの内容ですね。ビデオをデータよりも重視する監督もいれば、次の試合に向けたミーティングを1回やるのではなく、毎日のトレーニングに合わせて分割することを望む監督もいます。

 典型的な1週間のスケジュールで言うと、火曜日には監督に対戦相手がどのように守るのかをまとめたビデオを見せ、それに対応した攻撃のトレーニングメニュー作成の参考にします。続いて木曜日に向けて守備のトレーニングメニューを準備するために、相手がどう攻撃するかをまとめたビデオを用意します。

 高い位置からプレッシャーをかけて敵陣でボールを奪うために、敵のビルドアップだけをまとめたビデオを求める監督もいますし、裏のスペースをどのタイミングでアタックするかを決めるために、敵最終ラインがFWの動きにどう対応するかをまとめたビデオを求める監督もいます。ラインを上げようとするならば裏のスペースを突くことを考えますし、ラインを下げる傾向があるならば2ライン間に戻ったFWに当てる方が有効です。とはいえ、私の仕事のベースは常に一定です」

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最終更新:8/19(月) 20:07
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