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光るサメの秘密を解明、ライトセーバーに抗菌色素も

8/19(月) 17:31配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

「サメの驚異的な性質がまた1つ明らかになりました」と研究者

 海底の岩の割れ目でひっそりと暮らすサメたちは、ある秘密を持っている。皮膚から蛍光を発することで互いにコミュニケーションをとっているのだ。

【動画】光るサメの秘密を解明

 人間の肉眼ではこの光を見ることができず、適切な光を照射することで初めて発見できたのは、ほんの数年前のこと。そしてこのほど、これら底生サメが蛍光を発するしくみが明らかになった。

 8月8日付けで学術誌『iScience』に発表された論文によると、底生サメが発する緑色の斑点や縞模様は、これまでに知られているどの生物蛍光とも異なる生体内反応で生じているという。しかも、このプロセスには未知の化合物が関係していた。

 さらに興味深いことに、これらの蛍光化合物には抗菌作用があり、サメを病気から守っている可能性が高いという。論文共著者のデビッド・グルーバー氏は、「今回の発見によって新たな謎の扉が開き、サメの皮膚が持つ驚異的な性質がまた1つ明らかになりました」と話す。グルーバー氏は米ニューヨーク市立大学バルーク校とアメリカ自然史博物館に所属する研究者で、ナショナル ジオグラフィックのエクスプローラーでもある。

 今回調べられたサメのうち1種は、皮膚の表面にある小さな歯状のウロコを使って光を導いていることもわかった。グルーバー氏はこの構造を「光導波路」や「ライトセーバー」などと呼んでいる。「生物発光」するサメが利用する構造に似ているが、「生物蛍光」を示すサメで確認されたのは今回が初めてだ。

サメが光るしくみ

 蛍光に光る海の動物は、サメや硬骨魚類やウミガメで200種以上知られているが、科学者たちはもっと多く存在すると考えている。サンゴからクラゲや甲殻類まで、無脊椎動物にも蛍光に光る種は多い。

 生物蛍光は、動物の皮膚にある色素が、海の中で最も多い色である青い光を吸収して、緑色の光として再放出することで生じる。これは、化学反応によって動物が自ら光を発したり、光を放つ他の生物の宿主になったりして光る生物発光とは別の現象だ。

 2014年にグルーバー氏らは、米国沖にすむトラザメ科のクサリトラザメ(Scyliorhinus retifer)とアメリカナヌカザメ(Cephaloscyllium ventriosum)が緑色の光を発するのを発見した。これらのサメは成長すると体長90cmほどになり、ほとんどの時間を海底の岩の割れ目に隠れて過ごしている。

 この2年間、グルーバー氏はさまざまな分野の専門家を集めてチームを作り、これら2種の光るサメを調べてきた。氏は漁師が混獲したものや水族館からサメの皮膚サンプルを入手し、米エール大学の化学者パク・ヒョンボン氏とジェイソン・クローフォード氏らに送った。

 トラザメの皮膚から色素を取り出したパク氏はすぐに、それが見たことのない物質であることに気づいた。生物蛍光を示す動物の大半は緑色蛍光タンパク質(GFP)を利用している。GFPは、生物医学分野の実験で遺伝子を追跡するための便利な道具として使われる。だが、トラザメが蛍光に利用していたのはGFPではなかった。

 パク氏とクローフォード氏らはトラザメの皮膚の色素を詳しく調べたところ、GFPよりはるかに小さな分子であることを突き止めた。生体内で作られる代謝産物で、具体的には、臭素化されたトリプトファンがキヌレニン経路で代謝されてできる物質だった。

 これらは今回初めて見つかった化合物だが、興味深いことに、人体で重要な役割を果たす化合物とよく似ているという。これらから臭素を除去したものとよく似た分子は、うつ病やその他の精神疾患に影響を及ぼすことが知られており、関連の化合物が含まれる医薬品が現在研究中だ。

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