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マセラティでフェラーリの“純血”を楽しめる!? グランカブリオの優雅さとは?【公道試乗記】

8/19(月) 21:11配信

GQ JAPAN

マセラティのフラグシップ・オープン「グランカブリオ」は、デビュー10年目を迎えた。今なお色褪せぬ魅力とは?

【写真を見る】フェラーリを積んだマセラティの実力とは? 優雅なインテリアも注目!

4.7リッターV8NAはもはや絶滅危惧種

アクセルペダルを踏み込むと、「フォーン」と「クォーン」と「カーン」が入り混じった、混じっていながら濁りのない快音が、空気を震わせた。音を遮る屋根がないから、空気の振動は鼓膜を直撃する。

タコメーターの針が3500rpmから4000rpmを越えるとエンジンの力感が漲り、レスポンスも電光石火の鋭さになる。これが「カムに乗る」とか「パワーバンドに入る」とかいう感覚なのか、と一発で理解できる。

マセラティ「グランカブリオ」の魅力は、何をおいてもフェラーリ謹製の4.7リッターのNA(自然吸気)V型8気筒エンジンだ。フェラーリ「F430」やアルファロメオ「8C」などに搭載され、世界のエンスージアストの心を打ってきた名機であるけれど、ダウンサイジング+ターボの波に押されて本家フェラーリでも使われなくなった。

いま、このエンジンを搭載した新車は、このグランカブリオとクーペ版の「グラントゥーリズモ」だけなのだ。

人によっては“騒音”にしか聞こえないかもしれないが、ある種の人にとっては美しい音に聞こえるあたり、ロックバンドのエレクトリックギター音に似ているかもしれない。ジミ・ヘンドリクスやジミー・ペイジが奏でる、ひずんでいるのに美しいギターの音色と、このクルマの音を重ねたくなる。

ターボチャージャーの過給を使うことで、いまやSUVでも600psや650psはあたりまえの時代。グランカブリオの最高出力は460psだから、現代のスポーツカーとして突出したスペックではない。

それでも、エレキギターを「ギュイーン」と弾くジミヘンの気分が味わえるこのエンジンは、速さとは別の魅力を持っている。技術点より芸術点、記録より記憶に残るエンジンなのだ。

心に響く官能的なスポーツカー

自然吸気V8エンジンのもたらす興奮が一段落すると、ちょっと湿り気を帯びたような、しっとりとしたフィーリングに心を奪われる。

グランカブリオのデビューは2007年だから、今年でちょうど10年目。ただし「湿り気」といっても、基本設計が古いとか、ボディのどこかにユルさを感じるというのではなくて、振る舞いに落ち着きがあるのだ。

そう感じる理由のひとつに、路面コンディションと車両の状態に合わせ、瞬時に最適化する「スカイフック・サスペンション」のセッティングがうまい点があげられる。

やみくもに足を硬めるのではなく、適度なロールを許しながらコーナリングしたほうが楽しめるということを、名門マセラティは教えているのだ。

専用に設計されたピレリ「Pゼロ」も、突っ張らないのに大事なところでは踏ん張るというこのクルマの特性に貢献している。

もうひとつ、パワーステアリングが電動アシストではなく、油圧アシストである点も“しっとり感”につながっている。クオーツ時計の秒針のような「ピ、ピ、ピ」という操舵フィールではなく、機械式時計の秒針の動きみたいに「ぬたー」とした、アナログの感触なのだ。

さらに付けくわえれば、ポルトローナ・フラウの艶っぽくてやわらかいレザーシートも、ドライバーにゆとりを与えてくれる。ピニンファリーナのデザイン、ポルトローナ・フラウのインテリア、そしてピレリのタイヤと、イタリアを代表する「P」が集まっている。

絶品のエンジンといい、雰囲気のある佇まいといい、ハンドリングと乗り心地の絶妙なバランスといい、新車でありながら熟し切った果物のようなスポーツカーだった。“スーパースポーツ”というよりも、“アートスポーツ”だ。いや、それではスポーツ用品店になっちゃうので、心に響く官能的なスポーツカーだと結論付けたい。

グランカブリオのフルモデルチェンジの噂は聞かないけれど、このクルマを新車で買える期間がそれほど長くないのは想像できる。したがって、少しでも気になるのであれば、早めの購入をオススメしたい。

文・サトータケシ 写真・安井宏充(Weekend.)

最終更新:8/19(月) 21:11
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