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「兄は人の気持ちがわからない…」親の介護を担った弟の本音

8/19(月) 8:00配信

幻冬舎ゴールドオンライン

事例3:長男夫人への嫌悪感が収まらない姉二人

次はギブアップと言うべき事例です。父が亡くなり、相続人は妻(母)と長男とその姉二人の計四人です。二人の姉は他へ嫁いでおり、実家の別棟に住んでいる長男夫婦が母の面倒をみるという形です(なお、母はすでにかなり思考力が失われている状態です)。となると、最終的には長男がかなりの財産を相続することになりそうなのですが、姉二人はこの流れに強硬に反対します。

実は姉は二人とも長男の妻と大変に不仲な関係にあります。何せ長男夫人は、頭と口が抜群に回る上に行動力まであります。長男はこの夫人の尻に敷かれっ放し。姉らは以前からこの点が面白くありません。

遺産分割にしても、長男夫人は直接口出しするようなことはしませんが、長男が彼女に指示されたとおりを主張しているということは手に取るようにわかります。こうなるともう理屈抜きです。

それまでの姉・弟の仲はそう悪くはなかったのですが、もはや姉二人は弟の言い分のすべてが気に入りません。これでは遺産分割の合意は絶望的です。弟から申告の依頼を受けていた私は、この容易ならざる事態に頭を抱えました。

とはいえ、実は私はもめ事は嫌いではありません。長男からの依頼もあり、この全体像を理解した上で仲裁役を引き受けることになりました。仲裁役の鉄則は、誰の味方にもならないこと、そして皆が「なるほど」と思ってくれるであろう着地点を探しておき、そこに誘導することであると思っています。

となると(事前の了解を得た上で)、弟と話す時は姉の立場で、逆に姉との話では弟の立場で本音の話をします。その場での折衝はかなり熾烈なものとなります。しかし、「相手の立場の理解」なくして争いの解決はありません。合意を得るにはこの手法が一番だと考えています。

そしていろいろと折衝した後、ほぼ合意を見るところまでいきました。ところが残念なことに、少しのことで最終段階で壊れてしまったのです。やむを得ず相続税は未分割のままで申告しました。この件は私の力不足もあって、残念ながら話をまとめることはできませんでした。「感情が前面に出た場合にはもう理屈は通用しない。合意はまったく困難」ということを、今さらながら痛感させられたしだいです。

この件は最終的に裁判になりました。何年か経ってからその後の状況を尋ねましたが、未解決とのことでした。どのような判決が出るにせよ、この両者の絶縁状態は長期的に(おそらく最期まで)続いてしまうのではないでしょうか。

森田 義男

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最終更新:8/19(月) 9:24
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