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[甲子園・記者コラム]打倒・奥川! 履正社主将・野口海音が勝っても淡々としている理由

8/20(火) 15:42配信

週刊ベースボールONLINE

日本中が注目する甲子園。現地で取材を行う記者が、その目で見て、肌で感じた熱戦の舞台裏を写真とともにお届けする。

勝負の厳しさを知っている

 貫録十分である。不気味なほど冷静だった。

 初の夏決勝進出を決めた履正社の主将・野口海音(3年)は明石商との準決勝後、インタビュールームのベンチに深く腰掛け、淡々とゲームを振り返った。

 この日は左腕エース・清水大成(3年)を起用せず、先発の2年生右腕・岩崎峻典が2失点完投した。準々決勝から中3日で迎える決勝へ向けては好材料のはずだが、野口は「清水を温存できたことよりも、岩崎が投げ切ったことのほうがプラス」と、チームリーダーらしいコメントを残している。バットでは2本の適時打で3打点を挙げ「後輩が投げていたので、何としても援護したかった」と、はにかんだような笑顔を見せた。

 なぜ、そこまで感情を表に出さないのか。3つの黒星を経験しているからだ。

 聞くまでもなく、履正社は「日本一」を目指して戦っている。全国3730校の頂点まであと1勝も、浮かれているヒマはない。勝負の厳しさを、嫌というほど知っているからだ。

 さかのぼること1年前。履正社は北大阪大会準決勝(対大阪桐蔭)で悲劇的な敗戦を喫した。9回二死まで4対3とリードを奪いながら逆転負け(4対6)。すでに正捕手だった野口は新チーム結成以降、1学年上の先輩の悔しさを片時も忘れずにきた。

「濱内(太陽、現筑波大)さんとは中学時代から同じチーム(松原ボーイズ)で、主将を引き継ぎ、濱内さんだけでなく、先輩たちの分まで頑張ろうと思いました」

 2つ目は今春のセンバツ初戦敗退。星稜・奥川恭伸の前に3安打完封と完敗した。「勝つ意識でいきましたが、全国の中ではまだまだレベルが低いと感じた」。甲子園で味わった屈辱を胸に練習に励んだものの、春の大阪大会は準々決勝敗退(対大商大高)した。もう、後がない。

「夏もやる相手に負けて、チームの雰囲気も良くなかった。でも3年生に『最後の夏。割り切って頑張っていこう』と言いました」

 打倒・奥川――。

 つまりは、全国レベルの投手を攻略するため、ピッチングマシンをマウンドの傾斜よりも前にして、練習を積んできた。甲子園では準決勝までに5試合で41得点と、霞ケ浦・鈴木寛人、津田学園・前佑囲斗、明石商・中森俊介らの好投手を打ち崩してきた。

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最終更新:8/21(水) 18:25
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