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世界を悩ます異常気象 それでも温暖化対策が滞る理由

8/20(火) 6:20配信

NIKKEI STYLE

東京大学教授 古城佳子

今年も世界で異常気象が続いている。アメリカ、ブラジル、バングラデシュでは大洪水、欧州やインドでは未曽有の熱波が生じた。日本も猛暑、豪雨、記録的日照不足に見舞われた。近年の異常気象の多発に直面すると、その原因とされる地球温暖化(気候変動)の対策が進んでいるか気になる。

地球温暖化は、一国では対応できず国際協力が必要な典型的なグローバル・イシュー(地球規模問題)であり、対応策として1992年に国連で気候変動枠組条約が採択された。以降の交渉は難航したが、先進国と途上国の対立を乗り越え、新しい国際条約「パリ協定」が採択されたのが2015年。196カ国・地域が参加し、「産業革命前からの気温上昇を2度未満に抑える」として20年以降の温室効果ガス(二酸化炭素が代表的)の削減目標設定に合意したのだ。パリ協定に至るまでの国際交渉について、小西雅子著『地球温暖化は解決できるのか』(岩波ジュニア新書・16年)が交渉の争点をわかりやすく説明し、パリ協定の意義と課題を示す

パリ協定で溝

しかし、現在、パリ協定の実行が危ぶまれている。中国に続く温室効果ガス排出大国であるアメリカのトランプ大統領が「温暖化はでっちあげ」と批判し、17年パリ協定からの離脱を宣言したからだ。今年6月に大阪で開催されたG20首脳会議では、海洋プラスチックごみの削減では合意できたものの、その陰でパリ協定をめぐるアメリカと他国との溝が埋まらず、パリ協定の実施に大きな障害があることが明白になった。

科学的な知見に基づき国際的な合意が進んだにもかかわらず、科学大国アメリカのリーダーが温暖化懐疑論を声高に主張するのはなぜか。地球温暖化が国内で政治争点化しているからである。三井誠著『ルポ 人は科学が苦手』(光文社新書・19年)は、科学に対する不信はなぜ起こるのかという観点から、アメリカで政治的立場により温暖化懐疑論が強化されていく状況を描く。

温暖化対策は国際的な規制で国民を縛るとして反対する共和党と温暖化対策を重視する民主党との溝は深い。争点化の結果、地球温暖化は党派を分ける踏み絵となり、温暖化対策は石炭産業労働者のような「見捨てられた人々」の雇用を奪う政策と位置付けられ、温暖化懐疑論は保守派の有権者支持調達のツールと化している。

欧州でも温暖化は争点化しており、温暖化対策の促進を訴える草の根運動は若者を中心に広がり、ドイツでは緑の党の躍進につながった。他方、温暖化対策を重視するマクロン仏大統領の燃料税の引き上げは、生活を直撃するものとして「黄色いベスト」の激しい反対を引き起こした。温暖化問題は、既存の政党を揺るがす争点となり、急進左派や右派ポピュリストの支持者を増やしている。

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最終更新:8/20(火) 6:20
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