ここから本文です

宇宙版「一帯一路」への道筋

8/20(火) 11:57配信

nippon.com

青木 節子

今は各分野で火花を散らす米中だが、30年ほど前は両国が宇宙協定を結ぶ蜜月の時もあった。やがて、中国が米国から情報を窃取し、ミサイル開発に転用。両国の宇宙協力は途絶した。そこで中国は途上国に接近し、現在の宇宙版「一帯一路」への道筋が開けてきた。

外交の「飛び道具」

兵器として、他の衛星を攻撃するものでない限り、軍事衛星を打ち上げることが非難されることはありませんが、近年の衛星は軍事目的なのか民生利用なのかが必ずしも明らかではありません。多くの衛星は、軍事にも産業にも利用されている、という状況です。宇宙を利用する力が増すと、軍事ばかりか経済を強くする目的にも役立ちます。

外交の「飛び道具」にもなります。地上局のネットワークなど、外国を巻き込んでいくことで、対象となる国と長年にわたる親密な関係を築くことも狙えますから。

そうやって得た力を、また宇宙に振り向けていけばいい。そんな好循環は、およそ宇宙開発を目指す国なら、日本を含めどの国も追い求めるべきものですが、中国の場合、意図に明白なものを感じます。

ちなみに軍事と経済、これら両目的に相乗効果を狙うところは、昨今、ついに衛星破壊(Anti-Satellite/ASAT)実験に踏み切ったインドについても、同じように見て取れます。長い間、インドは宇宙を経済目的で開発利用していると言われていましたが、総合的な国力増大のための宇宙利用を隠さなくなりました。その象徴がASAT実験でしょう。

日本には、2008年まで、宇宙開発は非軍事利用に限るべしとする考えがありました。けれども、コレは非軍事利用、アレは軍事目的、などと、きれいに分けられると思うのはもともと非現実的だったのです。

米中間にあった宇宙協定

ここで時計を30年近く巻き戻し、冷戦終焉当時の米中関係をみてみると、そこには今と全然違う絵柄がありました。

1989年から90年にかけて、米中間に、3つの宇宙協定ができます。それによって、米国の通信衛星打ち上げを、中国が肩代わりすることが可能になったのです。

世界が新規に打ち上げる衛星のうち、当時の米国は、その8割までを一手に製造していました。それはよいとして、問題は打ち上げ用ロケットの不足でした。ソ連のロケットを使うわけにはいきません。そこで、当時「友好的非同盟国」と位置づけられていた中国に委託してはどうかということになり、くだんの協定につながります。

天安門事件が起き、さすがに同協定は破棄されました。けれども米中蜜月がこれで一気に冷え込んだわけではありません。第二次協定が締結されます。

ところがその後、米国で通信衛星の打ち上げ失敗(ヒューズ社、ロラール社による)が起きます。原因を探る過程で、米国企業は、中国と協調しました。次回の打ち上げを成功させるためです。事故調査に関連する外国への情報提供は、技術の輸出に当たり、本来は、国務省からの輸出許可―技術支援契約(Technical Assistance Agreement/TAA)―が必要なはずでしたが、必要な許可を取っていませんでした。

1/2ページ

最終更新:8/20(火) 11:57
nippon.com

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事