ここから本文です

検証・子どもたちは本当に「教科書が読めない」のか

8/20(火) 16:27配信

webマガジン mi-mollet

「演劇」を活用し、さまざまなコミュニケーションで教育活動を行ってきた劇作家で演出家の平田オリザさん。大学入試改革にも携わっている平田さんは、演劇を学ぶ初の国公立大として、2021年度に開校する予定の国際観光芸術専門職大学(仮称)の学長就任も決まっています。連載「22世紀を見る君たちへ」では、これまで平田さんが「教育」について考え、まとめたものをこれから約一年にわたってお届けします。

前回は、数学者・新井紀子さんの著書『AI vs.教科書が読めない子どもたち』で語られている「中学、高校生の文章読解能力が“危機的な状況にある”」との論説について平田さんが検証。今回はその後半です。以下、今回の内容に関わる部分を要約して再掲します。

『教科書が~』では、実際に行われた基礎的読解力を測る試験(リーディングスキルテスト=RST)のすべての問題が示されてはおらず、とりわけ正答率の低かった問題のみが記されている。その問題が以下である。

[問2]次の文を読みなさい。
 Alexは男性にも女性にも使われる名前で、女性の名Alexandraの愛称であるが、男性の名Alexanderの愛称でもある。
 この文脈において、以下の文中の空欄にあてはまる最も適当なものを選択肢のうちから1つ選びなさい。
 Alexandraの愛称は(   )である。
 (1)Alex (2)Alexander (3)男性 (4)女性

正解は(1)。中学生の正答率は38%、高校の平均は65%。これについて新井先生は「背筋が寒くなる」と綴っているが、同時に、こうも書いている。
〈おそらく「愛称」という言葉を知らないからです。そして、知らない単語が出てくると、それを飛ばして読むという読みの習性があるためです〉

===================================

読解力が低いと、高偏差値の学校には入れない?

実際に学校で授業をしてみると解るが、小中学生は自分が知らない語彙に出会うと、いきなり聞く耳を持たなくなる。だから教師は、生徒が理解をしているかを探りながら、繰り返し言葉を換えて説明を続ける。

 この問題の正答率は細かく見ていくと、中一で23%、中二で31%、ところが中三になると51%となっている。おそらく、「愛称」という単語をただ知らないだけではないのだ。英語における「愛称」の意味するところが解らなかったのだと思う。この点については、静岡大学の亘理陽一先生がブログの中で、以下のような問題文なら、もっと正答率が上がったのではないかと指摘している。

「ゆうちゃん」は男性にも女性にも使われるあだ名で、女性のユウカさんの愛称の場合もあれば、男性のユウキさんの愛称の場合もある。
 →ユウカさんのあだ名は(   )である。
 (1)ゆうちゃん (2)ユウキ (3)男性 (4)女性

新井先生は、RSTと高校偏差値の相関性が高いところから、「基礎読解力が低いと、偏差値の高い高校には入れない」と書かれている。果たして、そうなのだろうか?

私が最初に持った印象は、「これは、この手の設問に慣れている子が得意な問題だな」というものだった。実際、試験というのは、その出題形式に慣れているかどうかが大きく結果を左右する。たとえば近年、全国学力テストの県ごとのばらつきが縮まってきたのは、下位になった県が、繰り返し類似の問題を子供たちに解かせることで、「慣れてきた」のが原因ではないかとも言われている。

1/3ページ

最終更新:8/20(火) 16:27
webマガジン mi-mollet

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事

あわせて読みたい