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「京アニ」犠牲者の実名公表、警察が異例のアンケート 遺族が語る公表への思い

8/20(火) 5:58配信

デイリー新潮

 異例の事態なのである。35人の命が奪われた「京都アニメーション」(京アニ)放火殺人事件。発生から2週間も経ってようやく京都府警が公表したのは、10人の犠牲者名のみだった。その背景には、府警が遺族に対して行った前代未聞の「アンケート」があった――。

 太平洋戦争末期、血で血を洗う凄惨な地上戦が繰り広げられた沖縄では、日米両軍と民間人など約20万人の命が失われた。その死者・行方不明者の名前が刻まれた「平和の礎(いしじ)」は沖縄県の南端、糸満市・摩文仁(まぶに)の丘にあり、毎年6月23日の「慰霊の日」には、犠牲者の家族や親族が多数訪れる。そこでよく目撃されるのは、礎に刻まれた犠牲者の名前を愛おしそうになでる光景だ。あたかもその行為により、すでに存在しない犠牲者の肉体に触れ、言葉を交わすかのように――。それは、人の名前が「記号」などではなく、肉体が消滅した後も残り続ける「生きた証」であることを象徴するような光景ではあるまいか。

 殺人事件としては戦後最悪、35人が命を奪われた「京アニ事件」の発生から2週間が経過した8月2日、ようやく京都府警は犠牲者の名前を公表した。しかし、明かされたのは、35人のうち10人の名前のみ。被害者名の公表がここまで遅れるのも、一部しか明かされないのも異例中の異例の出来事である。その裏で何が起こっていたのか気になるところだが、

「実は、府警は遺族にアンケートを行っていた」

 全国紙の社会部デスクはそう明かすのだ。

「質問の内容は、実名公表の可否、マスコミの取材を受けられるか否か、そして、取材を受けるとしたら誰が受けるか、といったもの。で、実名の公表を遺族が了承したのが今回の10人で、残る25人の大半は匿名希望だった。つまり、実名を公表するかどうかの判断を遺族側に委ねてしまったわけですが、こんなことは前代未聞ですよ」

 無論、その判断は府警独自のものではなく、警察庁とすり合わせた上でのことである。それについては後で詳述するとして、まずは身元が公表された犠牲者の「横顔」に触れておきたい。

 今回、名前が公表されたのは以下の10人である。

 京アニの取締役で初のオリジナル作品「MUNTO」で監督を務めた木上益治(きがみよしじ)さん(61)。やはり取締役で「らき☆すた」や「涼宮ハルヒの消失」などで監督を務めた武本康弘さん(47)。「Free!」シリーズなどでキャラクターデザインを担当した西屋太志さん(37)。「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」美術監督の渡辺美希子さん(35)。「Free!」で動画を担当した宇田淳一さん(34)。「響け! ユーフォニアム」の仕上げを担当した津田幸恵さん(41)。同作のチーフマネージャーを務めた横田圭佑さん(34)と、同作で原画を担当した栗木亜美さん(30)。今春入社したばかりの大村勇貴さん(23)と笠間結花さん(22)。

 ちなみにこの10人以外に、石田奈央美さん(49)の死亡も取材によって判明している。つまり、8月5日時点で実名が公表されていない犠牲者は24人ということになる。

 京アニをよく知る京都文化博物館映像情報室長の森脇清隆氏が語る。

「木上さんとは、2011年に京都アニメーションのスタッフさんをお招きして催した座談会でお会いしたのが最初。ただ、その前に他のスタッフの方から“木上さんはすごい”と聞いていました。京アニさんは元々、他の会社の下請けでセル画に色をつけて仕上げる仕事をしていましたが、その後、アニメーションの演出まで手掛けるようになった時、中心的な役割を果たしたのが木上さんでした」

 京アニ全スタッフの「師匠」のような存在だった木上さんのどこがすごいのかというと、

「アニメーションというのは、端的に言えば、線を動かしてキャラクターに命を吹き込むもの。動かすことで何をどう表現するのか、というのが演出です。例えば、キャラクターが疾走感を持って走っているように見せたい時は、単に体を動かすだけではなく、髪の揺れ方や足首の曲がり方など細かい動きで表現します。木上さんはそこで絶対に手を抜かないのです」(同)

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最終更新:8/20(火) 5:58
デイリー新潮

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