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キャッシュレス無人コンビニが買い物を変える 渋谷和宏

8/20(火) 11:18配信

日経doors

スタートアップの600(ろっぴゃく、東京・千代田)が開発したキャッシュレス無人コンビニ「600」が、独創的なアイデアや利便性を武器に「出店数」を増やしています。「600」の見かけは冷蔵の自動販売機ですが、キャッシュレス決済の普及を追い風に成長を続けています。政府の掛け声がきっかけとなって加速した日本のキャッシュレス化、その先にある日本独自の消費・買い物の在り方を「600」は示唆しています。

【関連画像】阿部さんはEmployee Experience(従業員が働いて良かったと思える体験を通し、会社も個も成長させる)部門の執行役員を担当。18年1月、それまで勤めていたベンチャーキャピタルを退職し600に加わりました

●「常に手元に欲しい物がマンションで買えたら…」

 「キャッシュレス無人コンビニ『600』のアイデアが生まれたのは、実は社長の久保(渓氏)の個人的な体験がきっかけでした。久保の奥様が妊娠したとき、つわりがひどくて食べ物も飲み物もほとんど受けつけず、飲めるのはファンタグレープだけという状態になってしまったんです。久保は急いで買い物に出かけたのですが、訪ねた店はどこも置いていませんでした。久保は思ったそうです。『ファンタグレープがマンションで買えたらどんなにいいだろう? 常に手元に置いておきたい物がすぐに近くで買えたらどんなにいいだろう?』と」

 こう語るのはスタートアップの600で執行役員を務める阿部愛さんです。同社が開発したキャッシュレス無人コンビニ「600」は今、その独創的なアイデアや利便性を武器に、都内を中心に「出店数」を増やしています。

 キャッシュレス無人コンビニと聞くと、米アマゾン・ドット・コムが展開する「Amazon GO(アマゾン・ゴー)」のような、高感度のセンサーやカメラを張り巡らせたハイテク店舗を思い浮かべる人がいらっしゃると思います。日本でも、JR東日本リテールネットが、自社グループのコンビニ「ニューデイズ」で初のキャッシュレス無人店舗を今年7月30日、JR武蔵境駅に開店しました。店内には防犯カメラが設置され、買い物客自身がセルフレジで軽食や飲み物、雑貨などの商品のバーコードを読み取らせて、Suica(スイカ)などの交通系ICカードやクレジットカードで決済します。

 「600」はそんな固定観念を吹き飛ばします。外観はコンビニの店内にある冷蔵ショーケースを小さくした箱です。大きさは61.9cm(幅)×61.5cm(奥行き)×205cm(高さ)で、箱の中にはコンビニに置いてあるようなパンやカップ麺、菓子、清涼飲料などの商品が冷蔵されています。陳列できる商品は最大600品目、ガラス扉の付いた冷蔵の自動販売機と言えばイメージしやすいでしょうか。

 この箱型の「600」で私たちはどうやって買い物をするかと言うと、正面にあるカードリーダーにクレジットカードを通してガラス扉を開き、欲しい商品を取り出すだけです。

 品物を取り出すと「600」に据え付けられたタブレットが代金を集計します。それらの情報はネットで本部に送信され、自動的にカード払いとなります。この間、商品を選ぶのに迷わなければ5秒もかかりません。キャッシュレス決済の手段は今のところクレジットカードに限られますが、同社によれば「QRコードを使ったスマホ決済など、他のキャッシュレス決済への対応も検討している」とのことです。

 同社は「600」をオフィスなどに設置してもらい、設置料金と商品の販売収入を得ることでビジネスを展開しています。企業からの引き合いは強く、「600」の営業を本格的に始めた2018年6月からの1年強で契約設置数は88台に達しました(2019年8月7日時点の数字)。しかも顧客はKDDIやLINEなどの大手企業から、ネットショップの作成を手掛けるBASE(東京・港)のようなベンチャー企業まで多岐にわたります。「出店先」はマンションにも広がりつつあり、日鉄興和不動産の分譲マンション「リビオレゾン板橋本町ステーションサイド」(東京・板橋、総戸数95戸)の付帯サービスとして導入される予定です。「今後は2024年までに1万カ所の設置を目指しています」と阿部さんは言います。

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最終更新:8/20(火) 11:18
日経doors

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