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もう一つの高校野球。中京大中京高校「女子軟式野球部」の躍進

8/21(水) 10:44配信

週刊ベースボールONLINE

 男子高校野球の雄、中京大学附属中京高校(愛知県)に、女子軟式野球部があるのをご存知だろうか。その指導は、硬式野球をふくめたすべての高校女子野球部(19年8月現在、硬式36、軟式6)のなかでも、トップクラスの質を誇る。
 軟式の女子高校生たちの最大の目標は、毎年8月に行われる中高生の全国大会「全日本女子軟式野球学生選手権大会」(全日本女子軟式野球連盟主催。地区代表24チームが出場)だが、同部は創部2年目で東海チャンピオンとしてこの大会に出場すると、3年目には3位、4年目にはベスト8、そして5年目の今年は遂に準優勝に輝いた。
 その躍進の秘密と、チームの魅力を紹介する。

「賢く、かっこよく、爽やかに」

 中京大中京高校に女子軟式野球部ができたのは、15年4月。当時男子軟式野球部顧問だった土井和也教諭(31歳、社会科)の発案によるものだった。
「そのころ本校の軟式野球部には女子選手が2人いましたが、日本高野連主催の夏の大会に女子は出られません。だからなんとかして彼女たちに活躍の場を与えたいと思ったのです」
 早速校長に相談すると、「いいよ」とすんなり許可が下りた。 軟式野球部には毎年必ず2、3人女子選手がいたので、学校としては特に驚く提案ではなかったらしい。こうして土井教諭が部長兼監督、選手は10人という体制で活動がスタートした。

 筆者が同校の練習を初めて見たのは、全国大会で3位に入る直前の17年春だった。「女子軟式野球部あるある」で、選手は少年野球経験はあるものの、中学でソフトボールに転向した人が多く、なかにはまったく野球経験がない人もいた。しかしキャプテンの指示の下、彼女たちの動きはキビキビとして無駄がなく、今自分がなすべきことに集中しているように見えた。何よりも素晴らしかったのは、彼女たちが実に楽しそうに練習していたことだ。

 当時1年生で、現在はキャプテンでエースの渡邊もえ選手(3年)は言う。
「楽しそうですねという言葉は色々な方から言われます。でもその楽しさは遊び感覚の楽しさではなくて、全力で取り組むことによって、できなかったことができるようになったり、何かを成し遂げることができたという楽しさなんです。また自分の成長だけでなく、仲間の成長を見るのも楽しさの一つです。その楽しさが積み重なってチームの力になると思っています」

 こうしたものの見方、人間性を培っているのが土井監督の指導だ。その考えを端的に表しているのがチームのスローガン「Play SMART(プレイ スマート)」=賢く、かっこよく、爽やかに、だ。

「頭を使い、閉鎖的にならず、相手に敬意をもって行動しなさい、という意味です。たとえば挨拶も内輪だけで通用する『あざーす』ではなく、『ありがとうございます』と言う、ユニホームや制服の着こなしをきちんとする、ルールを守る、ベストを尽くす、勝ったら勝たせてもらったという思いをもって行動するなどですね。生徒たちには、周りの人から自然と応援してもらえるチーム、人間になりなさいと話しています」
 全国大会で優勝することは目標であっても通過点でしかない。これから先の人生は長いのだから、野球と同時進行で、社会で役に立つ力を身につけることが大切だ、と若き指導者は力強く言葉を続ける。

 こうした理念の陰には、高校時代(豊田西高校)、自分たちを県大会ベスト4に導いてくれた恩師の教えがあった。「色々なことにアンテナを張って、言われなくても気づき、率先してやれる人であれということですね」。その思いを胸に中京大学に進学。卒業後は、もっと教育の勉強をしようと愛知教育大学の教職大学院に3年間通い、中京大中京高校に入職した。野球は大学院を卒業するまで社会人軟式野球クラブで続け、遊撃手としてプレーした。

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最終更新:8/22(木) 15:05
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