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オリジナル作品が契機となりキャリアを切り拓いてきた、川サキケンジ(イアリン ジャパン)。今改めてオリジナルを創りはじめた理由とは?

8/21(水) 12:30配信

CGWORLD.jp

<1>時代の巡り合わせから、ごく自然にCGを選択

2018年を通して連作で発表された、叙情的なシチュエーションを描くショートCGアニメーション。それはそのクオリティと圧倒的な表現力で、ほんの数秒足らずの作品群にも関わらず瞬く間にSNSで拡散し、発表するごとに大きな注目を浴びた。“川サキケンジ“とは何者か? 現在、話題となりつつあるバーチャルシンガー『花譜』のビジュアルディレクションも手がける彼の、クリエイターとしてのルーツを聞いた。


ーー今回のようなインタビューは以前にもございましたか?

川サキケンジ(以下、川サキ):作品への取材やメールでのインタビューなどはいくつかあった気がしますが......こうして対面で質問にお答えする、というのは初めてではないでしょうか。


ーーまずは作風について。昨年話題をあつめた連作アニメーションもそうなのですが、2011年に発表された自主制作アニメ『チルリ』を拝見しても、世界観が独特というか、常に人の細やかな心情を切り取るような、叙情的、感情的な表現をされているように思いました。

川サキ:そういう細やかなものがどうやったら表現できるのか?  を意識しながらつくるようにしています。3DCGは、実はそうした表現にとても向いている技法なので。感情の振れ、瞳の動きやちょっとした仕草、流れる汗、涙......。一般的に、感情を描くのがCGは苦手のように言われていますが、決してそんなことはないと思っています。繊細な動きにこそCGの利点があるんじゃないかなと思いながら制作しています。


ーー昨年は2月から11月にかけて発表された、オリジナルの短尺CGアニメーションの連作が大きな注目を集めましたね。普段のお仕事ではどのような作品を手がけていらっしゃるのでしょうか?


川サキ:これまではCGディレクター的な役回りを務めることが多かったのですが、今は3DCGか手描き(2D)かを問わず、CMやPV等の映像ディレクションを幅広く手がけています。もちろん、自分で手も動かしますよ。自分はCG畑出身ですが、2D、3D、実写など、表現技法自体にはこだわりはありません。つくるものには表現したいテーマが明確にあるはずなので、それを様々な方法論を用いて意図した雰囲気を引き出せればOK。そうしたスタイルは、僕だけでなく、イアリン(※1)全体に通じるものじゃないですかね。

※1:2012年から川サキ氏が在籍するイアリン ジャパン(Eallin Japan Co.,Ltd. )は、2000年にチェコ共和国・プラハでスタートした映像制作会社イアリンと提携している。起業当時のイアリンは伝統的なチェコのコマ撮りアニメーションを制作していたが、市場のニーズと共にコンピューターグラフィックス、実写撮影技術などを取り入れ、現在では様々な映像技術をミックスした独自の映像表現を確立させている。


ーーそうした業務の合間をぬって、オリジナル作品を発表されているのですね。

川サキ:自分にやりたいことが明確にある、というのが大きいと思います。あとは、周りに商業活動と並行してオリジナル作品をつくり続けている人がいることもありますね。現在所属するイアリンの同僚たちもそうですし、以前に勤めていた白組にもオリジナルを積極的に発表される人たちがいました。そういった方が周囲にいると自分の刺激にもなります。

ーー川サキさんのルーツというか、これまでのキャリアについて聞かせていただけますか?

川サキ:3DCGについては、2006年にデジタルハリウッド 大阪校へ1年間通って学びました。そしてデジハリを卒業後(2007年4月)、白組へ入社しました。

ーーデジハリには、毎日通われてたのですか?

川サキ:そうですね。当時の大阪校は人数も少なくて、僕が通っていたコースは30人くらいでした。空き時間は教室を開放していて自由に制作に使えたので、自宅に作業環境がなかったのでとても助かりました。

ーーずばり、CG創作をはじめようと思われた動機は?

川サキ:自分の世代だと、ゲームなどで子どもの頃からCGに触れる機会が多くて。中高生の頃はNHKの『デジタル・スタジアム』(2000~2010)を好んで観ていました。創作ということでは、子供の頃から作ることや絵を描くことが好きでした。兄が絵を描くのが上手くて。3歳上なのですが、その兄の影響は大きかったかもしれません。

ーー部活動も文化部でしたか?

川サキ:いいえ、サッカー部でした。今でも草サッカーを続けているのですが、体を動かすことも好きですね。その辺は、あまりつながっていませんけど(笑)

ーー漠然と、創作したいという思いがあったということでしょうか?

川サキ:そうですね、ですが、やりたいことに対して自分の画力では思うようなものはつくれないと感じていて。そんなときに「CGならできるかもしれない、やってみる価値はあるんじゃないか」と思えたのです。究極的には、“ひとりでつくれる“ということも大きかったですね。

ーーなるほど。

川サキ:当時は3Dを使った作品はまだ少なく、チャンスも多いと感じていました。3DCGソフトでひと通りのことが無理なくできるようになったタイミングでしたし、インターネットでオリジナル作品を発表できる場も広がりはじめた時期だったことも後押しになりましたね

ーー話をもどして、白組に入社された経緯を教えてください。

川サキ:普通にWebで新卒採用の募集を見つけて、応募しました。デジハリの卒業制作としてつくった『はな』という作品が、デジハリグループ内のアワードでグランプリに選ばれたのですが、そうしたことを評価していただけたのかもしれません。


ーー『はな』を拝見して、学生作品とは思えない良質な出来だと思いました。ストーリーも独創的ですし、プロになってから発表された作品と相通じるものも感じます。川サキさんが一貫して追い求めるテーマがあるのでしょうか?

川サキ:テーマではなく制作スタイルになりますが、オリジナル作品をつくるときは、“今できることを最大限やろう“ということは学生時代から意識しています。自分の強みを最大限活かせる技法だけで表現するというか。労力に対してあまり効果的ではない技法は基本的に採り入れないようにしています。例えば、昨年公開した連作の場合は、フォトリアルに仕上げるつもりは最初からありませんでした。やりだしたらキリがないので。逆に、背景は加工した実写素材を利用しています。限られた時間で自分の注力したい部分に集中したかったので。そうした意味でも2Dか3Dか、はたまた実写など技法へのこだわりはありません。思い描いた世界を最も効果的に表現できる技法をその都度、用いています。


ーーでは、昨年の連作で表現したかったことは?

川サキ:映像全体としての雰囲気を高めることですね。ひとくちにリアルと言っても様々なリアルがありますが、このシリーズでは“感情のリアリティ“を目指しました。

ーー技術的な追求よりも、ご自身が表現されたいことを重視されているわけですね。

川サキ:現実的に、できることは限られますよね。時間的制約もそうだし、技術的にもそう。器用な人に比べれば、自分なんてまだまだです。自分のできる中で最高のパフォーマンスを発揮できる表現手法は何か? それを意識することは学生時代から変わっていませんね。

ーー感情をリアルに描くというのは、川サキさんのオリジナル作品に共通するテーマのように感じます。その原点というか、影響を受けたものはありませんか?

川サキ:強いて挙げれば“音楽“でしょうか。そこから転じて、ミュージックビデオですね。ハリウッド映画のVFXやCGキャラクター、そういったCG作品よりも、音楽から受けるインスピレーションの方が大きかった気がします。中高生の頃はNUMBER GIRLやSUPERCARなどの邦楽ロックが好きでよく聴いていたり、それらのMVを観るのが好きでしたね。テレビで流れるMV特集を録画してよく観ていたりも。そうした感情をゆさぶるものへの憧れがありました。

ーー技術的な研究という意味で、ハリウッドのVFX大作を観るといったこともありませんでしたか?

川サキ:もちろん、子供の頃からそういった映画も大好きでよく観ていました。ですが影響を受けたものとなると、どちらかというと静かに時間がながれる映画、例えば岩井俊二監督作品のような叙情的な実写映画などに感化されている部分の方が多いと思います。

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最終更新:8/21(水) 12:30
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