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「カジュアル化」した欧州移籍。今こそ問われる制度設計の不具合

8/21(水) 19:08配信

footballista

喫茶店バル・フットボリスタ ~店主とゲストの蹴球談議~

毎号ワンテーマを掘り下げる月刊フットボリスタ。実は編集者の知りたいことを作りながら学んでいるという面もあるんです。そこで得たことをゲストと一緒に語り合うのが、喫茶店バル・フットボリスタ。お茶でも飲みながらざっくばらんに、時にシリアスに本音トーク。

今回のお題:月刊フットボリスタ2019年9月号
『19-20欧州各国リーグ展望 53人の要注意人物』

店主 :浅野賀一(フットボリスタ編集長)
ゲスト:川端暁彦

■日本人の大量欧州移籍の背景は?

川端「今号のフットボリスタは欧州シーズンプレビュー号という形で、『53人の要注意人物』という輪切り的な特集になっていましたね。『そう言えば、ボリスタってワールドサッカー誌だったな』と思い出しました(笑)。いろんなチームのフォーメーション表がたくさん出てくる感が『ぽい』ですね」


浅野「シーズンが始まった直後くらいの時期で、しかも移籍は確定前というこのシーズンの特集は毎年難しいんだよ。何しろ、ここからまだまだ選手が動くからね。だからすでに確定している監督や新加入選手に注目して、ワクワクして新シーズンに備えるというスタンスが一番幸せかな、と(笑)」


川端「それは確かにプレシーズンの醍醐味みたいなところありますからね。『こいつとあいつが入ってきたからこういう布陣になる』みたいに考えるのも含めて布陣を考えるところからさらに踏み込んで『これはラキティッチ売られるのかな』とかまで考える人もいるでしょうし(笑)」


浅野「やっぱり、この時期はまだどのチームのファンも夢が見られるので、そこをシンプルに楽しんでこそ、フットボールの文化かな、と」


川端「『シーズン前だけは順位表は白紙』ってやつですね(笑)」


浅野「まあ、実際はJリーグと違ってやる前からかなり見えているけどね。あと欧州サッカーは選手がめちゃくちゃ動くので、一度おさらいしておかないと俺もわからなくなる(笑)」


川端「その『めちゃくちゃ動く選手たち』の中へ確実に日本人選手たちが組み込まれるようになっているということは今号を読みながらあらためて思いました」


浅野「そうそう、今夏の日本人移籍は過去にないくらい多かったね」


川端「正直、全員の名前を挙げられる自信はない(笑)」


浅野「しかも、18、19歳くらいの若い選手が増えた」


川端「久保建英(FC東京→レアル・マドリー)はちょっと特殊なパターンですけど、『高卒半年』でオランダへ渡った中村敬斗(G大阪→トゥエンテ)と菅原由勢(名古屋→AZ)はその象徴的な例ですよね」


浅野「片野道郎さんのコラムでも触れてもらったのだけど、選手の価値を上げて売ることに血眼になる『プレーヤートレーディング』の時代に入った欧州サッカーで、一番欲しいのはFIFAルールで移籍が解禁される18歳、もしくは19歳の若くて安い選手ですからね。それはもう露骨なまでに」


川端「そうした流れの中で欧州へ行く選手が増えると同時に、国内移籍を選択する選手も一気に増えましたね。『高卒ルーキーは下積みで当然。出られなくても我慢しろ』みたいな文化は今の若い選手たちにはまったくないですから」


浅野「その辺りのカルチャーの変化もあるんだよね」


川端「みんなチャレンジャーですし、同世代内での相互刺激もあると思います。『あいつがそうなら俺も挑戦する!』と。あと、何より我慢した先輩たちが総じて報われなかったという現実を見てきているのもあるんじゃないですか」


浅野「そうした気風みたいなものは一度変わり始めると止まらなくなりそうですね」


川端「でしょうね。若手以外でも鹿島の鈴木優磨のシントトロイデン移籍とかも象徴的だと思うんですよ。今年出場0試合の選手が欧州移籍を選ぶ、という」


浅野「善くも悪くも欧州移籍がカジュアル化したというか、フラットに選択肢の1つになりましたよね」


川端「そうそう、ちょっと変な言い方ですが、『気軽』なんですよね。昔は『海を渡る』ことへの抵抗感というか必死感みたいなものがあったのが薄くなったな、と。過去に海を渡った先駆者たちがそういう空気を作り、土台を固めてくれたからこそ、ですが」


浅野「あるいは失敗しても戻って来られるからというのもある」


川端「そういう意味でも確かに『カジュアル』になりました。昔は悲壮感みたいなのを漂わせて行く選手も少なくなかったですから。『慣れた』という面はあるかもしれません」


浅野「実際、ベルギーやオランダ行きが多いですが、安さの割に日本人の成功率自体はかなり高いですからね。オランダはEU外選手の最低年俸がけっこう高いので気軽には獲れないですが、ベルギーはそのハードルも低い。投資的な側面だけでなく、20代半ばの即戦力として獲られている面もあると思います。それに対して、年俸的にも負担が軽くないオランダは『転売』を視野に入れた獲得が多い印象ですね。今夏に獲ったのも10代の2人ですし」


川端「そうした『転売できそうな銘柄』の中に日本人選手が入ってきているということ自体、欧州全体で日本サッカーへの評価が底堅くなってきたんだろうなと思います。今はJ2の選手でも向こうからかなり観られていますからね。この夏、ベルギーのクラブから実際に接触を受けたJ2の選手もいます」

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最終更新:8/21(水) 19:37
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