奥川の代の野球部は、良い意味で自立した個々のチーム。野球好きの負けず嫌いの集まりでしたが、その筆頭が奥川でした。練習中に集中が切れたようなときは「ヘタになる練習をするよりは走ろうか!」と私が指示すると、必ずトップで走って帰ってくるのが彼。監督の命令だからとイヤイヤ走るのではなく、じゃあ走りを楽しもうか! という雰囲気に率先してなれる選手でした。
中学卒業前には彼に言ったんです。「高校では必ず打たれるよ。そこでどう考えて練習していくかが勝負や」と。中学では全部をゼロで抑える感じでしたけど、高校では150キロを打つ選手もいますから。
実際に1年生のときに「めっちゃ打たれました」と報告に来てくれたことがありましたけど、よくそこから成長してきましたね。さすがに150キロを出すまでになるとは思いませんでした。
奥川は自宅通学で投手なので、その後も時間があれば訪ねてきてくれます。今もとにかく謙虚で、良いことも悪いこともすべて自分の言葉で話せる。それが成長の要因でしょうね。これからも謙虚さを忘れずにいたら結果はついてくるやろうし、プロに行ってほしいなと思っています。力は十分にありますから、心配していません。
僕は捕手として対戦相手のデータもとっていて、投球の組み立てもいろいろと事前に考えます。でも奥川が投げるときは、そういうのがあまり必要ないですね。
奥川の場合は、状況に応じてこの球で打ち取れる、この球でも打ち取れる、という選択肢がいつも複数あるんです。そういう中で、奥川が一番投げやすくて一番簡単なコースを自分が選んでサインを出す、というのが基本ですね。
正直、小学生のときの奥川は大きくてボスキャラで、試合に負けるとふてくされる。そういうときは怖いので近寄りませんでした(笑)。一方で、憧(あこが)れに近いようなものを感じるすごい選手で、人に言われる前から何でもできてしまう。子どもながらに、こういうヤツがプロ野球選手になるんだなと思っていました。ただ、「高校NO.1投手」と言われるまでになるとは予想できなかったですね。
向上心が並ではないし、いつも自分のやるべきことを理解していてそれができている。中学の野球部で貴重な出会いもあった中で、自分も含めて人間性のほうも自然に変わってきたと思います。
どんなにすごい選手でも、中・高と進む中で限界や底のようなものを感じたり、感じさせるものだと思うんですけど、奥川に関してはそういうのがない。ずっと止まることなく進化してきている感じです。高校はもちろん、プロに行ってからも球界を代表するようなピッチャーになってほしいですね。
僕も負けていられない。「高校NO.1」と言われるような捕手になって奥川を支えてあげたいなと思っています。ただ、練習しなくても試合で打ててしまう、あの打撃センスだけは自分にも分けてほしいですね(笑)。
『週刊ベースボール』2019年1月28日号(1月16日発売)より
週刊ベースボール
最終更新:8/22(木) 12:15
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