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鈴木亮平 NHK大河ドラマは「“芝居”を超えた体験」その理由〈週刊朝日〉

8/24(土) 11:30配信

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 役者を志した時から、年に1本は舞台に立ちたいと思っていた鈴木亮平。学生時代、演劇サークルに所属したことが、役者を志すきっかけになった。舞台は、彼の芝居の原点。一人の英雄の人生にどっぷり浸かり、「自分は一度死んだ」と思った経験をベースに、さらに成長していくためには、舞台がいいような気がしていた。

「昨年、『西郷どん』を撮っている最中に、『蓬莱竜太さん脚本、藤原竜也さんとのダブル主演で舞台をやりませんか?』というお話をいただきました。ただ、実は僕、そこまで蓬莱さんの作品を観たことがなかった。それで今年になって、何か上演作品はないかと調べたら、6月までの半年の間に、4本もの作品が上演されていて。4本とも観てみたら、全部面白かったんです。今回は、竜也くんと僕が小学生の役で、舞台は団地です。竹馬の友が、些細なことがきっかけで関係が壊れ、次第に団地内での王座を争うようになるという、“団地大河ドラマ”という触れ込みですが、どうなることやら(笑)」

 これまで舞台では、「ライ王のテラス」の国王役や、「トロイ戦争は起こらない」の王子役など、英雄的な存在を演じることが多かった。

「作家の思想や信条が台詞に反映されることも、舞台の面白さの一つではないでしょうか。英雄を演じながら感じるのは、自分を完全に客観的に見られる人はそうそういないのだということ。客観的になれないから苦しむし、その歪さや弱さが個性につながっている部分もある。威張れるほどの舞台経験があるわけではないですが、僕は、古今東西の作家たちは、“人間はわからない”ということを、繰り返し伝えようとしているんじゃないかと思っています」

 人間はわからない。そこに込められた意味には、“人の心を正確に理解するのは難しい”というだけでなく、“どんな可能性があるかわからない”という、未来への期待もある。

「『西郷どん』で1年間、一人の人間を演じたことによって、自分自身の演じ方も変わってきました。新しい共演者が入れ代わり立ち代わりやってきては、命のやり取りのような、大変な芝居が連日続くと、心が揺れるから、最初はものすごく疲れていたんです。でも、ずっと大変なシーンばかりで息抜きもできないので、体が麻痺したのか、慣れたのか、だんだん大変だと思わなくなった(笑)。『現場に行けば、絶対できる』という強い気持ちが生まれたのと、あとは、相手役の方からエネルギーをいただいて、それを反射に変えるように心がけていました」

 役から離れて半年以上が経つが、彼の体の中には、一人の人間の人生を生き切って、国の未来を憂えたまま薩摩の地で死んでいった感覚が、今も残っているという。

「大河は、“芝居”を超えた体験でした。今は、もう一回、新たな生を与えられているような気分です」

(取材・文/菊地陽子)

※週刊朝日  2019年8月30日号

最終更新:8/24(土) 11:30
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