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韓国の経済構造を見誤った「文在寅大統領の大失策」

8/22(木) 11:50配信

PHP Online 衆知(Voice)

新古典派エコノミストが抜け出せない“旧来の常識”

――新古典派エコノミストの多くは「最低賃金を上げれば失業者が増える」と主張しますね。彼らの考えは間違っていた、ということでしょうか?

【アトキンソン】 そのとおりです。彼らの勘違いは、「労働市場が完全に効率的である」という大前提をもっていることです。

すなわち、労働力の価格は市場で隔たりなく評価されており、1人の労働者の労働価格は1つに決まる、と。しかしその前提は近年、覆されています。現実の労働市場は完全に効率的ではないのです。

その理由としては、(1)仕事や雇用に関する情報が不完全なため、高い収入を得るための可能性を生かせないこと、(2)転職のコストが障害になっていること、(3)労働者個人の事情により、自分の潜在能力より収入が低い仕事を選んでいること、が挙げられます。

(3)はとりわけ女性にいえることです。出産や育児によって労働市場での立場が弱くなり、本来もっている生産性に比べて低い給与で働く構図は容易に想像ができるでしょう。

――子供の面倒を見る以外にも、親の介護などで仕事をセーブするケースもあるでしょうね。

【アトキンソン】 新古典派のエコノミストたちは、「労働市場は効率的」という”旧来の常識”から抜け出せていない。

日本は過去にも最低賃金を引き上げていますが、そのことで失業率が上がったことを示すデータは存在しません。

韓国の最低賃金引き上げは失敗だったのか

――とはいえお隣の韓国では、2018年に最低賃金を引き上げたことで、失業者が増加するなど雇用への悪影響がみられました。

【アトキンソン】 韓国の場合は2018年1月、最低賃金を一気に約16%も引き上げたわけですが、これは極端すぎました。

繰り返しますが、最低賃金を引き上げると必ずしも失業者が増えるわけではありません。引き上げ方によってその効果は変わります。

アメリカのある分析によれば、12%以上の引き上げは危険な水準である、とされています。

過剰な比率で最低賃金を引き上げると、経営者がパニックに陥り、経済に悪影響が出る。

韓国で年に16%もの引き上げを行なったのは、文在寅政権が国内の経済構造を見誤っていたというほかありません。日本の場合、私の計算では、年率5%の引き上げが適切な数値です。

デービッド・アトキンソン(小西美術工藝社代表取締役社長)

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最終更新:8/27(火) 20:46
PHP Online 衆知(Voice)

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