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「データは新しい石油である」という発想は、そもそも間違っている

8/22(木) 18:13配信

WIRED.jp

「データのマネタイズ」を形容する際に、「石油」はメタファーとして使われることが多い。だが、こうした考えはそもそも間違っている。アラスカ州が石油から得た収入を人々に分配しているように、データから得られた収入もユーザーに分配されるべきと主張する人々がいるが、それはデータから金が生まれる仕組みを無視したアイデアではないか──。創業初期のフェイスブックで活躍した起業家で、ベストセラー作家のアントニオ・ガルシア・マルティネスによる考察。

テック企業に「借り」はあるのか?

データは新しい石油である──。そんな言葉が現代社会においては、まるでお経のように唱えられている。さまざまなメディアにおいて、石油は「データのマネタイズ」を形容するうえでぴったりのメタファーとして使われてきた。誰も手を付けていない資源を探すという石油探査の性質や、埋もれた資産を“有効活用”するという点において、石油とデータは似ているのだ。

しかし、この表現は政治的な意味合いを帯びるようにもなっている。2019年1月にカリフォルニア州知事に就任したギャヴィン・ニューサムは、2月になって「データ配当(data dividend)」制度という大胆なアイデアを提案した。フェイスブックやグーグルといったインターネットサーヴィス企業に、ユーザーのデータから得た売上の一部を配当金として払い戻させようというのだ。

フェイスブックの共同創業者であるクリス・ヒューズも、18年に『ガーディアン』誌の論説で同様の考えを提唱している。このとき彼が例として挙げたのが、「アラスカ・パーマネント・ファンド(APF)」だった。これは、アラスカ州が原油生産で得た収入を州民に毎年分配する制度である。アラスカ州民と同じように、グーグルやフェイスブックの一般ユーザーも、個人データが蓄積された広大な地層の上に立っている。それゆえに、そこから発生する利益を受け取る権利をもっている、と考えられているわけだ。

しかし、どんなメタファーを使おうとデータは「新しい石油」ではないし、そのアナロジーを使い続けるのも無意味だ。石油は文字通り液体であり、移動可能で交換可能なコモディティである。世界の石油市場は、サウジアラビアのガワール油田から採掘された石油を可能な限り無駄のない方法で、ボストンにあるアパートの暖房やニューヨークの通勤バスの燃料にできる仕組みになっている。これに対してデータは抽象的なビットの集合体であり、物理的に移動することはない。

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最終更新:8/22(木) 18:13
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