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ベビーカーのママに「気を付けろ!!」 子育てのしにくい日本社会に見る、クレームの構造

8/22(木) 5:30配信

文春オンライン

 拙宅山本家、4人目の子となる長女が生まれて3か月が経過しました。

 男の子であれ女の子であれ、赤ちゃんはかわいいですね。

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ベビーカーが高齢男性の歩行ステッキにぶつかって

 ベビーカーに乗せてお出かけしても良い時期になったので、夫婦と子ども4人であちこち赴くようになるわけですが、先日電車に乗ろうとしたところ、家内が押していたベビーカーがホームで高齢男性の杖というか歩行ステッキのようなものにぶつかってしまいました。

 なぜかポーンと跳ねて、ホームを転がるステッキ。高齢男性が背負っているリュックを見るに、脚が悪くて杖をついているのではなく、山かどこかのハイキングからの帰りのようで、ステッキがなくても普通に歩いています。そのときは、良かった、脚の悪い人ではなかった、という気持ちだけが見ていた私の心をよぎりました。しかし、その一瞬後。

 私は長男と三男の手を引いて、家内とベビーカーとは少し離れたところを歩いていたので、高齢男性はアロハシャツを着た父親である私の存在に気づいていなかったようで、張るような大声でこう言いました。

「気を付けろ!!」

女性に対してのみ強く出るジジイ

 なんだよ、ジジイ。すんげえ元気じゃねえか。これはもう、私の出番ですよね。私、出ていくタイミングですよね。山本家の威厳のために、また、日ごろ追求している正義の実現のために立ち上がるべき刻が来たのです。退屈な日常生活に張りを与えてくれてありがとう日本社会。近づいていって、こう申し上げました。

「うちの家内に何か御用ですか」

 そばに父親がいるとは知らず、思わぬ方向から声をかけられ、消沈する高齢男性。消え入るような声で、「あっ、いや、大丈夫です……」といって、リュック背負ったままかがんでステッキ拾ってそそくさと階段の方向へ歩いていきました。見送る山本家。

ギスギスした日本と、赤ちゃん連れがヒーローな海外

 最近、そういう育児に冷たい日本、というコラムが増えてきました。例えば、研究者の中川まろみさんはオーストラリアやアメリカなどの子育て事情と日本を比較して、どうにもやりづらい子育ての環境について論じています。

子育てがつらい国、日本。皆を苦しめるその「空気」の正体
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/66404

 また、経営コンサルタントの本荘修二さんは母親の立場がいまなお顧みられず、ある種の安い労働力として家事を任されている現状を憂えておられます。わかるわー。

日本の産後は異常事態 ママたちを苦しめる「暗黙の了解」
https://forbesjapan.com/articles/detail/29102

 しまいには、「泣いてもいいんだよステッカー」なるものまで出てきてしまいました。赤ちゃんなんて、泣いて、育つのが仕事のようなもので、そこで「泣いてもいいんだよ」っていちいち宣言しなければならないなんて残念な気もするんですけど、そのぐらい周囲が子育てママに支援する気持ちを表明してあげないといけない世の中になったのだ、と思うと「そこまで来てしまったか」という気持ちはあります。

赤ちゃん「泣いてもいいよ」ステッカー広がる 親のマナーに苦言も
https://www.sankei.com/premium/news/190811/prm1908110011-n1.html

 夏休みは、仕事や納税の都合もあり、アレルギーを持つ三男や生まれたての長女の移動に問題なさそうな場所を選んで家族旅行を組み込んだりしていたのですが、海外にちょっと行くと赤ちゃん連れはヒーローなわけですよ。

 いかついイミグレの親父が私を睨みつけた後で赤ちゃんがいることを知ると「おお、赤ちゃん。ようこそアメリカへ」とかさっきまでのコワモテのひげ面はどこに消えたんだと思うようなかわいい笑顔を長女に向け、飲食店に行くとフィリピンから来たという女性店員がベビーカーの周りに集まってきて「ハーーイ、ベイビーーー」とか可愛がってくれます。何というか、日本の都市部のギスギスした雰囲気とは、明らかに赤ちゃんを取り巻く環境が根本から違う。

 ロシアでも、香港でも、イスラエルでも、子育てのしやすい、しにくいというレベルとは違う意味で、なんか「赤ちゃんが歓迎されている」とか「子どもを尊重しようとしている」空気はちゃんとあるんですよね。

 逆に言えば、私のようなアロハシャツを着た白髪の中年男性はどこに行ってもトルコ人に間違われ、入国審査では「なぜ中東ヅラの人間が日本のパスポートを持って我が国に?」とか問われることになりムカつくわけですが。

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最終更新:8/22(木) 8:39
文春オンライン

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