ここから本文です

年金財政検証で「検証」すべきは、非現実的な物価と実質賃金の伸び率

8/22(木) 6:01配信

ダイヤモンド・オンライン

● ようやく公表される財政検証 「老後2000万円不足」で注目

 今年は、5年に一度公表される「公的年金の財政検証」の改訂年に当たる。その財政検証が、やっと来週に公表されると報道されている。

【この記事の画像を見る】

 6月には、金融庁のレポートをきっかけに「老後資金2000万円問題」が論議され、退職後の生活についての関心が高まったが、今年は財政検証の公表が遅れていた。

 「参議院選があるので、政府は、年金問題が政治問題化しないよう配慮したのではないか」との指摘もある。野党は、参議院選前の公表を求めていたが、選挙前には公表されなかった。

 これは、逆に見れば、年金の財政見通しが、現在の日本においてきわめて重要な問題であることの反映だろう。

 ここで描かれる公的年金の将来像は、すべの日本人の将来に重要な影響を与えることになる。

● 所得代替率だけでなく、 支給開始年齢が年金水準に影響する

 今回の財政検証のどこに注目すべきかを指摘したい。

 第1は、「年金は老後生活資金のうち、どの程度をカバーすべきか?」という問題である。

 これについては、まず、所得代替率が問題になる。

 年金を受け取り始める時点(65歳)の年金額が、現役世代の手取り収入額(ボーナス込み)と比較してどのくらいの割合かを示すものだ。

 2014年の財政検証では、50%を下回らないことが目標とされた。この目標は、19年の財政検証でも、多分変わらないだろう。

 さらに、支給開始年齢の問題がある。

 支給開始年齢は25年に65歳となるが、それ以降もさらに引き上げて、70歳にするかどうかが、本当は問題だ。

 これは、今回の財政検証に盛り込まれるだろうか?

 これは政治的に大問題なので、今回の財政検証には盛り込まれないだろう。しかし、実際には、これから述べるように、将来は大きな問題として検討せざるを得なくなる。

● 「100年安心年金」は、 魔法のような結論だ

 しばしば言われる「100年安心年金」とは、「年金制度を100年間維持できる」ということである。

 これについて、前回の2014年の財政検証は、「おおむね維持できる」とした(注1)。

 この基本的結論は、今回の財政検証でも引き継がれるだろう。

 ただし、それが本当に実現できるかどうかが問題なのだ。

 人口構造の変化(高齢者の増加と若年者の減少)は、社会保障制度の維持を困難にするはずだ。

 14年の財政検証によれば、被用者年金の被保険者数は、15年から40年の間に20.8%減少する。他方で、老齢厚生年金受給者(老齢相当)は、15年の1760万人から40年の1990万人まで、13%増加する。

 したがって、ゼロ成長経済を想定し、かつ受給者1人当たりの受給額が現在と変らないとすれば、負担が約4割上昇しなければ、制度を維持できないはずだ。

 それにもかかわらず、14年の財政検証は「現在の保険料率(18.3%)のままで、おおむね年金制度を100年間維持できる」としているのである。

 なぜこうした魔法のようなことが可能になるのか?

 (注1)2014年の財政検証は、ケースAからHまで8通りのケースを示している。
ケースA、B、C、D、Eでは、マクロ経済スライドで所得代替率を6割から5割に引き下げ、保険料率を現在の17%から18.3%に引き上げることによって、制度を維持できるとしている。
ケースF、G、Hでは、保険料率は18.3%だが、所得代替率が5割を切る。また、ケースG、Hでは、積立金が枯渇する。

1/4ページ

最終更新:8/22(木) 6:01
ダイヤモンド・オンライン

記事提供社からのご案内(外部サイト)

週刊ダイヤモンド

ダイヤモンド社

19年9月21日号
発売日9月17日

定価710円(税込み)

特集 日韓激突!
ものづくりニッポンの悪夢
特集2 ウェブサイト価値 2019
特集3 チェンジリーダーの哲学

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事