ここから本文です

落語はプログラミングできるのか? 噺家は人生の問題解決をしながら、高座にあがる

8/22(木) 6:20配信

週プレNEWS

高座にあがって一礼、マクラの話もそこそこに本題へ。耳慣れた噺(はなし)にときどき挟まる「くすぐり」にクスリと笑い、気づけばお馴染みのストーリーを夢中で追いかけているうちにオチがやってきて......。落語ファンにとっては当たり前の光景だろう。

しかし実際には、噺家は同時並行でたくさんの工夫を凝らしている。彼らは、落語をどう「手続き」化し、プログラムしているのか? 新著『プログラミング思考のレッスン 「私」を有能な演算装置にする』が話題の野村亮太は、そんなプロセスを解明しようとする気鋭の認知科学者だ。果敢な挑戦は、彼が最も敬愛する噺家にどう響くのか?

最注目の噺家・古今亭文菊と認知科学者・野村亮太がおくる異色の対談、結末や如何に。

■笑いを生み出す「間」の意識
文菊 プログラミング......こうしてお題をいただいたわけですが、ちょっと私には理解の及ばないところでね(笑)。私の落語は、非常に感覚的なものですから。どう生きて、どう考え、感じるかをただずっとやってるだけでね(笑)。

野村 私の言うプログラミング思考というのは、ロボットなどをつくるような実際のプログラミングではなく、考え方なんです。つまり落語をするときに、自分が効率よくできる、より良くできるために行なう手順のことですね。

文菊 なるほど。プログラミング的にって言うんでしょうか、笑いを論理的につくっていこうとする噺家さんもいらっしゃいますよ。人間はなぜ笑うのかを論理的に、再現性のある方法を考えるわけです。たとえば有名な言葉ですが、笑いは緊張と緩和によって生まれるという考え方があるようです。緊張した後に、ふと緩和したときに笑いが生まれる、と。でもね、私はほら、論理思考じゃないから、きっとそういうプログラミング思考の噺家さんとお話しされた方が(笑)。

野村 いえいえ(笑)。すべてのプログラミングは「順次」、「反復」そして「分岐」によって成り立っています。私にとってもっとも面白いと思える噺家である文菊さんがお客さんを笑わせる手順にも、こうした共通点があるのか。それをプログラミング思考の観点からから分析してみたいという、ひとつ挑戦だと思っていただければ。

文菊 ああ、敢えて言うなら、「間を取る」ことがそうかもしれませんね。高座で噺家がやっているのは、お客さんとのエネルギーのやりとりなんです。

野村 お客さんを話に引き込んだり、あるいは離したりということですか?

文菊 ええ、自分とお客さんの持っているエネルギーがどのあたりにあるのかという感覚ですね。前座(寄席で一番前に高座に上がり、10分ほどの落語をする噺家の階級)の頃なんてのは、噺家は自分をただ「音声を発する物体」としか認識できないわけですよ。つまり自分の発しているエネルギーしか分からない。でも二ツ目(寄席で二番目に高座へ上がる階級)になると、お客さんのエネルギーを感じとっていく。すると最初はお客さんにいろんな「投げかけ」をして噺に引き込もうとするわけですね。どんどん「押し」て笑わせるようなことです。それで成功する人もいるんですが、なかなか押すだけではうまくいかない。試行錯誤しているうちに「間」を意識して、高座のこちら側へエネルギーを引き寄せるコツが分かるんです。それが無意識にできていくことが「間が取れる」ということですね。

1/3ページ

最終更新:8/22(木) 6:20
週プレNEWS

記事提供社からのご案内(外部サイト)

週プレNEWS

集英社

No.39-40
9月14日(土)発売

特別価格500円

原発は津波の前に壊れていた/急増確実!「
店外食い」の作法/堂本光一、13年ぶりの
ホンダF1優勝記念対談【グラビア】安達祐
実/小池美波/高崎かなみ/伊藤美来 他

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事