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ビヨンド・ミートは食肉業界のテスラになれるか

8/22(木) 9:00配信

日経ビジネス

 米国で今、代替肉の第2次ブームが起きている。代替肉とは、植物由来のタンパク質で作ったハンバーガーのパティやソーセージといった加工商品のこと。数年前からの第1次ブームは西海岸の健康志向の消費者などに限られていたが、今回のブームは全米の一般消費者を巻き込んでいる。

【写真】ニューヨークのレストラン「TGIフライデーズ」でビヨンド・ミートのハンバーガーを食べてみた。味は確かに本物そっくり。ただ後味に独特な香りがあった

 代替肉メーカーが大手ファストフードチェーンと提携し、新商品を投入し始めたことが大きい。最新の商品が、2019年8月8日からバーガーキングが全米展開を始めた「インポッシブル・ワッパー」。代替肉のパティはカリフォルニア州レッドウッドに本社を置くベンチャー企業のインポッシブル・フーズが提供している。

 「これ、普通のワッパー(バーガー・キングの売れ筋ハンバーガー)でしょ? 肉を使ってない? 信じられない!」。消費者役の登場人物がこんな声を上げるテレビCMが連日、流れている。

●「代替肉のスーパースター」

 この代替肉界のスーパースターとも言えるのが、09年にロサンゼルスで創業したビヨンド・ミートだ。19年5月2日にナスダック市場に上場。初日に65.75ドルだった株価は、一時の200ドルを上回る高値からは下げたものの、8月16日現在でも144.77ドルと、初日の倍以上の値を付けている。他社に先駆けて見た目も味も本物そっくりの代替肉を作ることに成功して以来、代替肉業界をけん引してきたリーダー格だ。

 筆者が比較的長く自動車業界の担当記者をしていたせいだろうか。このビヨンド・ミートが食肉業界で果たしている役割が、自動車業界におけるテスラのそれと似ていると思えて仕方がない。そこで今回は、「ビヨンド・ミートは食肉業界のテスラになれるか」という視点で同社の強みと課題について考えてみた。

「BtoBとBtoCの両刀」で家庭に浸透

 ビヨンド・ミートは現在、業界の中で抜群の知名度とブランド力を持つとされる。利益こそまだ出していないが、18年1~12月期の売上高は8793万ドルで、17年1~12月期の3258万ドルから倍以上に伸ばす急成長を遂げている。生活必需品と小売りをを担当するブルームバーグのアナリスト、ジェニファー・バータシャス氏によると、この成長を支えるのが、多くの消費者が同社に対して抱いている「ロイヤルティー」だという。

 同社は競合と異なり、スーパーマーケットに商品を置いてもらう「BtoC(消費者向け)」の販路と、レストランなどに食材を卸す「BtoB(企業向け)」の販路の両方を同時に開拓してきた。これがミソだとバータシャス氏は分析する。

 「スーパーで商品を目にした消費者がレストランでもビヨンド・ミートの名前を目にする。実際に食べてみるとおいしいので、スーパーでもレストランでもビヨンド・ミートを選ぶ。『初めて食べた代替肉がビヨンド・ミートの商品』という消費者にとり、その味が代替肉の基準となり愛着となる。ビヨンド・ミートはこの戦略で消費者のロイヤルティーを勝ち取り、ブランド力を向上させようとしている」(バータシャス氏)

 現在、代替肉の市場には前出のインポッシブル・フーズのようなベンチャーだけでなく、食肉大手の米タイソン・フーズやスイスのネスレなど大手食品会社も参入し始めている。こうした後発には簡単には追随されないブランド力をビヨンド・ミートは築こうとしているのだ。

●初めからテスラを意識?

 顧客とのつながりが強いのはテスラも同じだ。EV(電気自動車)を購入したことのなかった消費者がスーパーカーのような外観に魅了されてテスラ車を購入したケースは多い。テスラ車を通じてEVの良さを実感する消費者が増えたことで、エンジン車が主流だった自動車業界でEVの存在感は徐々に増していった。テスラが自動車業界に「破壊」をもたらしたわけだ。

 ビヨンド・ミートが果たした役割もそう。代替肉は何十年も前から存在していたが、「コストは高いし、味も本物とは違う。売れるわけがない」というのが業界の常識だった。この常識を破壊したわけだ。

 興味深いことにビヨンド・ミートの創業者で最高経営責任者(CEO)のイーサン・ブラウン氏は以前、燃料電池メーカーに勤務していた。その後、動物愛護活動に興味を抱いたことから同社を創業したというが、もしかするとテスラのビジネスモデルを念頭にビジネス戦略を練ったのかもしれない。

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最終更新:8/22(木) 9:00
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