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大気汚染で躁うつ病やうつ病に? 研究 脳への影響は不明

8/23(金) 7:11配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

精神疾患と大気汚染の関連示される、米国とデンマーク

 大気汚染は深刻な健康被害をもたらす。世界保健機関(WHO)も、肺がんや脳卒中など命に関わる病気と大気汚染との関連を指摘している。そして、大気汚染がひどい地域では、躁うつ病(双極性障害)やうつ病(大うつ病性障害)が多かったという研究結果が、8月20日付けの学術誌「PLOS BIOLOGY」に発表された。

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 米国の調査では、環境保護庁(EPA)のデータで大気汚染が最も深刻とされた郡で、躁うつ病が全米平均より27%、うつ病が6%高いことが明らかになった。

 とはいえ、米シカゴ大学の遺伝学者で論文の著者であるアンドレイ・ルゼツキー氏は、大気汚染が精神疾患を引き起こすことが証明されたわけではなく、リスクがやや高いかもしれない地域を示していると強調する。

 ロンドンや中国、韓国でも同様の調査が行われ、やはり汚染された地域と精神衛生との関連について同様の結果が得られている。

 そして、汚染度が高い米国の郡でも、神経学的疾患が多いことをこの論文は示しているとルゼツキー氏は言った。

1億5100万人のデータベース

 研究では、米国とデンマークのデータを分析した。

 まず、2003年から2013年の間に、米国で保険会社へ医療費の支払いを申請した1億5100万人の巨大なデータベースを使って、躁うつ病、うつ病、人格障害、統合失調症の4つの精神疾患について調べた。ほかに、てんかんとパーキンソン病もとりあげた。

 次に、EPAの大気、水質、地質データを郡別に分析して、保険の申請件数が高い地域と汚染度が高い地域の重なりを調べた。すると、大気汚染と躁うつ病の重なりが最も大きかった。

 さらに米国の結果を裏付けるため、デンマークの研究チームと協力して、デンマークでの大気汚染の影響についても調査した。デンマークの方は地域別のデータではなく、子どもの頃に個人がどれくらい大気汚染にさらされていたかを調査したものだ。すると、米国の結果と同様、大気汚染に多くさらされていた人で、やはり躁うつ病とうつ病の率が高かったことが明らかになった。

「大気汚染と精神疾患が関連する可能性を示した過去の研究に、もうひとつ新たな証拠が加わりました」と、英ロンドン大学キングスカレッジの疫学者イオアニス・バコリス氏は言う。

 ただし、郡全体をひとまとめにしたデータには考慮すべき要素が多すぎて、大気汚染が躁うつ病やうつ病を引き起こしているとは結論付けられないとしている。なお、バコリス氏は今回の研究には参加していない。

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