ここから本文です

憲法改正をレガシーに 首相「最後の解散」いつ?

8/23(金) 18:07配信

中央公論

永田町政態学

「衆議院もあわせれば六回連続、国政選挙において、国民の皆様から自民党への強い支持をいただくことができた」

 参院選から一夜明けた七月二十二日の記者会見で、安倍首相は淡々と話した。自民党総裁として、衆参あわせての「国政選六連勝」は前例がない。しかし、話しぶりからは、高揚感より安堵感が伝わってきた。

 首相は参院選で、三年前の前回選(五六議席)を上回ることを目標としていた。一議席でも減らせば「選挙の顔」として賞味期限切れといわれかねない。五七議席を獲得し、首相は「三年前を上回ったのだから、誰にも文句はいわれないだろう」と周囲に漏らした。

 首相が次に見据えるのは、二〇二一年九月末までの自民党総裁任期中に、憲法改正を実現することだ。日露平和条約締結や、北朝鮮による日本人拉致問題は進展が見通せない。安倍内閣の「レガシー(遺産)」として、政治家としての原点ともいえる憲法改正に全力を上げる決意を固めているようだ。

 参院選期間中、首相は憲法改正に関する野党の対応を批判した。二十二日の記者会見では、「少なくとも議論は行うべきである。これが国民の審判だ。野党の皆様には、この民意を正面から受け止めていただきたい」と述べた。秋の臨時国会から改憲論議を本格化させる意向だ。

 しかし、待ち受けるのはいばらの道だろう。参院選の結果、与党と憲法改正に前向きな日本維新の会などの勢力は、憲法改正の国会発議に必要な定数の三分の二を割り込んだ。首相は、党内の求心力を保ちつつ、野党を巻き込む多数派工作に挑まなければならない。

 もちろん、「総裁四選」の可能性も残されている。二階幹事長は二十一日夜のラジオ番組などで、「(四選も)全然おかしくないほどの支援をもらっている。それだけの活躍をしている」と語った。二階氏は、総裁任期を「連続三期九年」に延長する党則改正を主導した。党内では、「四選がありうるなら、首相の求心力は高まる」との声がある。もっとも、首相自身は「四選は全く考えていない」と強く否定しており、まずは任期中に改正実現を目指す考えのようだ。

 憲法改正論議を進めるうえで、最大の切り札となるのが衆院解散というカードだ。残る二年余りの総裁任期中、解散のフリーハンドを握ってレームダック化を避け、憲法改正に道筋をつけるのが首相のシナリオだろう。二十二日の記者会見でも「解散は今、全く考えていないが、あらゆる選択肢を排除しない」と含みを残した。「野党が憲法改正論議を拒めば、首相は解散を選ぶだろう」(自民党幹部)との見方が有力だ。

 問題は、解散の時期だ。首相周辺は「残り任期を考えると、解散できるのは一回限りだ」と指摘する。

 最速の場合、年末年始の解散が浮上する。天皇陛下が即位を国内外に宣言する「即位礼正殿の儀」(十月二十二日)など、皇位継承関連の式典が一段落する十一月以降は一つのタイミングとみられる。消費増税直後だが、来年度予算や経済対策で目玉事業を打ち出せば、有利に選挙戦を戦えるという見方もある。

 東京五輪・パラリンピック閉幕後の二〇年秋も候補の一つだ。同じ時期の米国大統領選でトランプ氏が再選されれば、同氏と蜜月関係を築く首相への追い風になる可能性がある。

「解散をしない」というのも選択肢ではある。しかし、衆院議員の任期は二一年十月二十一日に満了する。首相の総裁任期満了からわずか三週間後である。安倍首相が解散しない場合、後任の首相が就任直後に衆院選に臨まねばならず、大きなリスクを伴う。首相は「自分の任期中はやるつもりはない。次の総理にやってもらえばいい」と周囲に語る。だが、解散についてはウソをついても許されるというのが永田町の常識だ。

 首相はいつ、「伝家の宝刀」を抜くのか。参院選が終わり、早くも衆院解散に注目が集まる。(慶)
(『中央公論』2019年9月号より)

最終更新:8/23(金) 18:07
中央公論

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事