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米国の「株主第一主義」見直しを日本が歓迎すべき理由

8/23(金) 6:01配信

ダイヤモンド・オンライン

 米国の経済界が「株主第一主義」を見直すようなので、これを歓迎したい。「グローバル・スタンダード」と称して米国の株主第一主義をまねてきた日本の経済界にも変化が期待できるからだ。(久留米大学商学部教授 塚崎公義)

● 米国の経済界が方針を転換 「株主第一主義の見直し」を宣言

 米国の主要企業の経営者が所属する経済団体(ビジネス・ラウンドテーブル)は、株主第一主義を見直すと宣言した。今後は従業員の待遇など、さまざまなステークホルダーを重視するという。

 経済は冷たい頭と温かい心で動いているといわれるが、これまで優先されてきた冷たい頭に対し、温かい心が異議を唱えた、ということであろうか。

 冷たい頭で考えれば株式会社は株主の利益を追求するのが当然である一方、温かい心で考えれば株主利益の過度な追求は貧富の格差を拡大し、国民経済を疲弊させかねないので改めるべきだ、ということになる。

 もっとも、米国企業が本当に温かい心を冷たい頭に優先させて経営していくのか、筆者は若干懐疑的である。単に世論の批判をかわし、政府の規制強化を思いとどまらせるだけのリップサービスである可能性もある。

 結局、株主総会で経営者が選ばれるのだから、経営者としては株主以外のステークホルダーより株主の利益を優先するインセンティブが働くためだ。今後の推移を見守りたい。

● 日本企業の「日本的経営」への 方針転換を期待

 米国についてはともかく、日本に関しては変化が期待できそうだ。バブル崩壊後の長期低迷期、「日本的な経営をしているからダメなのだ。米国的なやり方をまねすればうまくいくはずだ」ということで「グローバル・スタンダード」なる言葉が流行った。

 さすがにこの言葉は、リーマンショック以降使われなくなったが、米国的な株主重視が望ましいという考え方は、今でも日本の経営者に残っている。

 それが、本家の米国で見直されるとなれば、日本でも当然見直しの機運が盛り上がるだろう。なんといっても、さまざまなステークホルダーを重視するのが従来の「日本的経営」なのだから、その良さを見直して回帰しようという動きが出てくることは当然である。

● 株主重視はマクロ経済にはつらい話

 企業経営の視点で株主重視と日本的経営のいずれが優れているかについてはそれぞれの意見があるだろうが、マクロ経済の観点からは、幅広いステークホルダーを重視することが望ましい。それは、株主重視がマクロ経済につらい話だからである。

 バブル崩壊後の長期低迷期、「企業が従業員の共同体」から「株主が利益を稼ぐ道具」に変質したため、経営者は利益が出ても賃上げをせずに配当を増やすようになった。これが景気に悪影響を与えたのである。

 労働者は給料が増えれば主に消費を増やすが、投資家は配当を受け取っても消費を増やすのではなく、主に株の買い増し等に資金を投じる。だから需要が増えず、景気が回復しないのである。

 企業が正社員を減らして非正規労働者を増やしたことも、マクロ経済にはマイナスになった。不況期にも雇用を守るのが経営者の最大の使命であれば、不況期の労働者の所得が落ち込まず、個人消費の落ち込みも限定的であるが、非正規労働者は簡単に解雇されてしまうので、不況期には個人消費が落ち込んで不況を深刻化させてしまうのである。

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最終更新:8/23(金) 6:01
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