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「ビールは生きもの!」独自酵母から生まれた世界一のクラフトビールの挫折と再生

8/23(金) 11:00配信

Book Bang

 400年以上の歴史を持つ伊勢の餅屋の21代目社長、鈴木成宗さん。大学卒業後、餅屋の跡取りとしての責務を全うしながらも、97年に新しい事業を立ち上げた。クラフトビール(地ビール)の醸造・販売を行う「伊勢角屋麦酒」だ。「伊勢から世界へ」を合言葉にクオリティを高めてきた伊勢角屋麦酒のビールは、その言葉通り国際的なビアコンペティションで数々の賞を受賞するようになる。特に「ビール界のオスカー」を自認する英国のビアコンペティション「インターナショナル・ブルーイング・アワーズ(IBA)」では、フラッグシップの「伊勢角屋麦酒ペールエール」が、17年、19年と2大会連続の金賞を受賞するに至った。

 そんな鈴木社長の初の著書タイトルが『発酵野郎!』に決まったと耳にし、思わず吹き出してしまった。「物心ついたときからの酵母好き」を公言してはばからない鈴木社長にとって、この上なく名誉な(? )称号と思えたからだ。そんな微笑ましい気持ちで手にとった本書を、私は幾度も涙したり心躍らせたり、クラフトビールの魅力を伝える立場として背筋が伸びる思いをしつつ、夢中になって読み進めていった。

 鈴木社長は「酵母は生きもの、だからビールも生きもの」だと語る。酵母は麦汁に入れることで、麦芽糖やブドウ糖を取り込みアルコールと炭酸に分解する。実はこの分解時、酵母にとっては苦しくて仕方がないらしい。「酵母が呼吸することで酸素がなくなると、どうにかして生きていこうとして始めるのが発酵」なのだ。私たちは、酵母が必死に生き延びようとする副産物の恩恵にあずかっていたのか……。「ビールは酵母が環境に応じて淡々と生き方を変えた最終形態だと、私には映る」と鈴木社長は述べているが、私にはその酵母の姿と、鈴木社長が歯を食いしばりながら、不眠に悩まされながら、血尿を出しながらも、ほかの酵母(スタッフ)とともに伊勢角屋麦酒をもり立ててきた姿とが重なった。

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最終更新:8/23(金) 11:36
Book Bang

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