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上村アナの先輩は五輪メダル候補。高跳び博士・戸邉直人のオタクな日常

8/23(金) 6:58配信

webスポルティーバ

短距離やマラソンは、競技が終わってから記録がわかる種目ですが、走り高跳びは始める前に「何センチ」と高さが決まっていて、しかもライバルたちの成功や失敗を見たあとに跳ぶこともある。そこにはさまざまな駆け引きもあれば、プレッシャーもある。戸邉先輩は、けっしてすべてが順調に来ているわけではなく、過去には2016年リオ五輪の出場権を逃すなど、悔しい思いもしてきたはずです。

 そんな戸邉先輩の体脂肪は4~5%。高跳びのために体重は意識的に絞って無駄はそぎ落としています。筋トレも、たとえば片足の一部を重点的にするなど、強化の必要な筋肉の部位を自分で研究して分析しているのです。

 コーチはつけずに、大学で自分自身を研究材料にしてトレーニングを続けて、自分の競技の映像を自分の目で見て、分析してデータを取り、分析結果を根拠にして、問題点を理解したうえで競技と向きあう。2016年に亡くなった大学の恩師・図子浩二先生からは「根拠を持ってやることが大事」とずっと言われていたそうです。

 研究室には、踏み切り時の圧力を測るボードなど、たくさんの機器があって、跳躍の時の角度、ひざや股関節の角度や、跳躍の瞬間にかかるGがどのぐらいかなどを計測。戸邉先輩は、そのすべてを使いこなしてありとあらゆるデータを集計していました。

 トレーナーやコーチであれば、選手にそうしたデータを伝えて、実践させることが役割になりますが、戸邉先輩は1人で全部をやっている。「むしろそれが好きでやっている。高跳びオタクですね」と、自分で認めています。

「今の自分があるのは、研究をして、そこで読み取ったものを競技にも生かしているから。そこが強みでもあるので、今後もそれを続けていきたい。博士号取得後も研究は続けていて、今後もずっと続けたい」

 そう力強く語る戸邉先輩は、海外の選手からは「ドクター戸邉」と呼ばれることもあるそうです。1日のスケジュールは、午前中にトレーニングをして、ランチ後から夜までほとんどデータの分析。「練習の息抜きが研究で、研究の息抜きが練習になっている」と話すほど没頭し、周囲から「そんなにずっと走り高跳びと向き合っていて嫌にならないの?」と言われるそうですが、「いろいろなスポーツで高く跳ぶ動作が必要な種目があるので、他の競技でも自分の研究成果が生かせる可能性がある。やっぱり研究は楽しいし、続けたい」と笑顔でした。

 ちなみに、博士号を取得した論文は『走高跳の踏切局面における下肢3関節のキネティクス特性』。そのタイトルを聞いた瞬間、「キネティクス......?」と、私の頭の上にはクエスチョンマークが並んだのでした。さらに、施設のホワイトボードに数式が書き込まれていたので、見せてもらったのですが、正直、まったく理解できず......。

 日本記録の2m35を出せた要因について聞いたところ、ポイントは「シングルアーム」と「6歩助走」でした。昨シーズンのゴールデングランプリでは助走が9歩で、ダブルアーム、つまり両手を上げて跳んでいましたが、昨シーズン終盤からさらに上を目指すために、助走を6歩に、そしてシングルアームにフォームを変えました。

「両手のほうが、上方向への推進力は増す」とのことですが、戸邉先輩の場合、踏切手前のところで重心が上に上がっていたため、ロスが生じてしまっていた。それを改善する目的でシングルアームにしたところ、動きがスムーズになって記録が伸びたといいます。

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最終更新:8/27(火) 21:29
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