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さあ定年、悩ましいDCの受け取り方 相場急落したら

8/24(土) 7:47配信

NIKKEI STYLE

定年に伴う作業の一つに、DC(確定拠出年金)の受け取り方を決めることがあります。私はフィデリティ投信に入社した2006年からDCに加入していますが、それ以降ずっと日本の小型株に投資する投資信託で運用してきました。定年まで10年以上ありましたから、「最もリスクの高いもの、すなわちリターンが高くなるはずのもの」を組み入れたわけです。

令和の始まりとなったスーパー・ゴールデンウイーク明けの相場急落はあたふたしました。4月26日の日経平均株価の終値は2万2258円73銭。これが1カ月後の5月24日には2万1117円22銭へと5.13%下落しました。

DCでは必然的に積み立て投資を行いますから、拠出中の価格下落は積み立てコストの低下というメリットになります。しかし、4月末で定年を迎え、5月以降は拠出ができず、ただ残高を見つめるだけでしたから、「ちょうどここで急落かよ!」って思いましたね。何とも切ないタイミングです。

「退職に向けて作り上げた資産を引き出す時、リーマン・ショックみたいなことが起きたらどうするのか」といった想定を、これまでよく議論してきました。規模こそ小さいのですが、皮肉なことにこの事態が起き、それに投資教育に従事してきた私自身があたふたしているわけですから、行動バイアスというのは恐ろしいものです。

■行動バイアスにどう対応?

行動経済学では「人は感情に左右されて非合理的な行動を取りやすい」と考えます。これを行動バイアスと呼びます。「選択肢が多過ぎるとかえって選べない」「同じ金額だと利得よりも損失の方が心理的に大きな影響を与える」といった点が、よく指摘される典型です。

私は5月24日の株価を基準に急落したとあたふたしてしまいました。これも行動バイアスの一つ「アンカリング効果」です。ある特定の水準(参照点)を基準にしてモノを考えてしまうというもので、投資の場合は最も高い株価や直近の株価を参照点としてしまいがちなのです。日経平均で言えば、18年10月2日の終値(2万4270円62銭)が参照点となりがちです。5月24日の株価を比較すると、13%も下落しています。

書いていてちょっと暗くなってきましたが、では拠出した総額に対して調べてみるとどうなるか。ちょっと金額は公開できませんが、拠出総額に対して、5月24日の時価で評価するとちょうど44%上回っていました。13年間の平均にすると年率2.8%のプラスで、損をしているわけではないのです。

つまり、何を参照点にするかによって見え方は違うのです。やはり原則は拠出額が参照点であるべきでしょうが、それでも「ゴールデンウイーク前に全額現金化しておけば」とか、「18年10月に現金化しておけば」という気持ちは残ってしまいますよね。

そうした行動バイアスにはまらないための方策の一つは、感情を入れない運用をすることです。例えば、目標年を想定して自動的に資産構成を変えてくれるTDF(ターゲット・デート・ファンド)と呼ばれる種類の投信を使うといった方法です。TDFは運用の開始時点では株式などのリスク性資産の比率を高くし、年齢が進むにつれてその比率を下げ、例えば60歳時点ではこれが0%になるように最初から設計されている商品です。

18年のDC制度の改正でも、元本確保型金融商品に資産を寝かせてしまう現状を変えるべく、TDFのデフォルトファンド(指定運用方法)化の議論がなされました。残念ながら制度改正にはつながらなかったのですが、その有効性について議論の俎上(そじょう)に上ったことは良いことだったのではないでしょうか。

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最終更新:8/24(土) 12:15
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