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セレナ対大坂、一年後に感じられる“残響” [全米テニス]

8/24(土) 12:02配信

テニスマガジンONLINE

「USオープン」(8月26日~9月8日/アメリカ・ニューヨーク/ハードコート)の開幕が迫る中、昨年の大会の消えないイメージは特別に素晴らしいショットやチャンピオンが優勝杯を掲げる姿にかかわるものではない。

USオープン2019|トーナメント表

 その代わりに永遠に記憶される可能性があるのは、セレナ・ウイリアムズ(アメリカ)が主審のカルロス・ラモス氏に人差し指を突きつけ、自分に謝るべきだと言い張っている光景だ。それは女子決勝の最中に、ラモス審判がセレナにコーチングの警告を与えたことから始まったいざこざだった。

 そのとき(そして今もだが)グランドスラムのシングルスで24勝目となるタイトルを目指していたセレナと、6-2 6-4の勝利への過程で素晴らしいプレーを見せたが、その日のアーサー・アッシュスタジアムで起きたカオスのため、その点をほとんど無視される羽目になった大坂なおみ(日清食品)の間の試合の音調は、ラモス氏が観客席からコーチングを受けたとしてセレナに警告を与えた瞬間から変わり、そこからどんどん悪い方向へと発展していった。

 セレナは最終的にペナルティとして1ポイントを、それから1ゲームをはく奪され、試合後には1万7000ドルの罰金を科された。

 それから12ヵ月が経ち、月曜日にフラッシングメドウで1回戦が始まろうとしている今、その1時間19分の戦いから派生的に生まれた産物はいまだ残響している。

 その中にはこんなものもある――ラモス氏が、セレナまたは姉ビーナス・ウイリアムズ(アメリカ)がかかわる試合で主審を務めることはないということだ。

「ほかに900もの試合がありますから、2019年に関してカルロスはウイリアムズ姉妹の試合であえて主審を務めないということを私たちは決めました」とUSTA(全米テニス協会)の責任者であるステーシー・アラスターは電話インタビューで答えた。

「私たちは競技の注目が(そういったいざこざでなく)アスリートに注がれることを望んでいるのです」

 昨年から続いている主要なストーリー・ラインの中には、次のようなものもある。

 ウインブルドンでも2年連続で準優勝に終わったセレナは、グランドスラムのシングルスでの優勝回数でマーガレット・コート(オーストラリア)が持つ全時代を通しての最多記録「24」に追いつこうと努めている。

 1月にオーストラリアン・オープンで2つ目のグランドスラム制覇を果たした大坂は、世界ランク1位としてニューヨークに戻って来た。しかし彼女は今、先週の前哨大会で棄権を強いた膝の故障に対処しなければならなくなった。

 そのほかにも、テニス界は継続中の論議で満ちている。例えば主審の適切な役割、行動規範が構築される方法、そしておそらく何より試合中のコーチングがどの大会でも許されるべきか否かなどについての論議だ。

 この最後の議題に関し、例えばここまで成果を出すことなく働きかけていたUSTA自身のように、ほかのグランドスラム大会を運営する人々がコーチングを認めるところを目にしたいと思っている者たちがいる。

 その中には、昨年の決勝直後に試合中にセレナとコミュニケーションをとろうとしたことを認め、「内密なコーチングは非常に頻繁に起きており、罰されることなく見過ごされている」と指摘したセレナのコーチのパトリック・ムラトグルーもいる。

 アラスターは、「意見が分かれているのはわかっています。でも結局のところ、私たちはテニスの戦いと、それにかかわることに目を向けなければならないのです。アクセスはその重要な部分ですよ。選手やコーチが話していることを聞きたがっているファンたちとの積極的関与です」と説明した。

 ムラトグルーは、「テニスがなぜ試合中のコーチングが許されない唯一のスポーツなのかが、私には理解できない」と主張している。

 しかし、例えばロジャー・フェデラー(スイス)やウインブルドン主催者たちのように、それはテニスというスポーツの真髄に反するものだと考える他の人々もいる。

 フェデラーは、「僕は、テニスには(試合中の)コーチングがあるべきではないという意見を持つ者のひとりだ。実際それが僕らのスポーツを比類ないものにしているんだよ」という見解を示している。

 オールイングランド・クラブ(ウインブルドン)の責任者であるリチャード・ルイス氏は、「男子選手のほとんどは反対だと言っていますよ。コーチの多くも反対だと言っています」と話した。

「テニスは、剣闘士的であるがゆえに…つまり戦場ではひとりであるがゆえに非常に特別なのだと考える、ウインブルドンを含めた他の多くの人々がいるのですよ」

 これは、このシーズン最後のグランドスラム大会の上を飛び交っているトピックだ。もっともUSオープンでのプレーに関する問いもたくさんある。

 背中のケイレンのため大会を棄権したセレナの健康状態は、どんな具合だろうか? やや調子を崩している様子の大坂は、今回も最後のほうまで勝ち残れるのだろうか? ウインブルドン優勝者のシモナ・ハレプ(ルーマニア)は、唯一ベスト4を超えることができていないこの大会で今年こそ決勝に進むことができるのだろうか? 15歳のコリ・ガウフ(アメリカ)は、よい成績を挙げることによってウインブルドンでの快進撃を裏付けることができるのだろうか? 

 前年度覇者のノバク・ジョコビッチ(セルビア)、ラファエル・ナダル(スペイン)、フェデラーは、ビッグ3間での連続12グランドスラム・タイトル獲得の記録を打ち立てることができるのだろうか? それとも20代の選手の誰かがついに壁を破るのか?

 しかしそのどれもが、ルール変更の可能性より大きな重要性をはらんではいない。コーチングに関するルールに一貫性はなく、これは単一のルールブックやコミッショナーなく、週が変わるたびに条件も変わるという現状を映している。

「(男子も女子も)コーチングを受けられるようになればいいと願うね」と2017年ウインブルドン・ベスト4のサム・クエリー(アメリカ)は言う。

「望むときにはいつでもコーチと話せるようになればと思う」

 USオープンのみが2017年に予選とジュニアの部でコーチングの許可を試したとはいえ、基本的にグランドスラム大会は男女ともに本戦でのコーチングを許可していない。国際テニス連盟(ITF)はデビスカップとフェドカップでそれを許可し、コーチ(監督)はコートサイドのベンチに座ることを許されてさえいる。

 プロサーキットでは、ATPはコーチングを許可していないが、WTAはコーチが観客席からコートに降りてきてエンドチェンジの際にプレーヤーと話すことを許可している。それはアラスターが女子ツアーの責任者だった10年以上前に導入し、始めたことだった。

「どこでもそうするか、どこでもそうしないかよ」と2016年USオープン準優勝者のカロリーナ・プリスコバ(チェコ)は意見を述べた。

「でも私は、どこでもそうしないことのほうを好んでいるわ」

(APライター◎ハワード・フェンドリック/構成◎テニスマガジン )

NEW YORK, NY - SEPTEMBER 08: Naomi Osaka of Japan and Serena Williams of the United States take part in the trophy ceremony after Osaka won the Women's Singles finals match on Day Thirteen of the 2018 US Open at the USTA Billie Jean King National Tennis Center on September 8, 2018 in the Flushing neighborhood of the Queens borough of New York City. (Photo by Mike Stobe/Getty Images for USTA)

最終更新:8/24(土) 12:02
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