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私だったら親に文句を言う「子育てブログ」の功罪(中川淳一郎)

8/24(土) 5:55配信

デイリー新潮

 他人のブログをひたすら見続ける仕事を始めてはや13年。芸能人、一般人にかかわらず「子育てブログ」ジャンルが定着し、ブログのネタとして子供の成長は欠かせないものになっています。成長記録をつづることで、後輩ママの役に立ちますし、悩みを書けばコメント欄で助言ももらえます。

 子育て中ではない読者もほのぼのとした気持ちになれますが、もしも自分のことが親に毎日のように勝手に書かれていたら……と考えるとゾッとします。あぁ、自分が赤ん坊の頃や幼少期にブログがなくて本当に良かった。

 実際、以下のようなことまで親に書かれてしまうんですよ。

「今日、初めてうんちをしたことを自分の言葉で伝えました」「5歳にしてようやくおむつがはずれました。これまで長かったです」「毎日お風呂の中でうんちをしてしまいます」「頭の形がいびつなので矯正ヘルメットをつけました」

 ママ友同士でブログを読み合っている場合、小学校入学後も赤ちゃん時代~幼少期のことが同級生に筒抜けになってしまっているかもしれません。そうすると「うんちマン」や「5歳おむつマン」「矯正マン」といったあだ名に加え、「おーい、プールでうんち出すなよ!」なんて揶揄されるかもしれません。

 問題は、ブログ執筆者は、可愛い我が子の成長記録をつづることで愛情を示すとともに、子供にとっていつか人生を振り返る貴重な自分史になると信じている一方、子供の許可は得ていない点です。ある程度の年齢に達した時に子供が親のこの行為を否定的に捉える可能性もあるわけです。

 私だったら絶対親に文句を言います。

「なんで徒競走でビリだったこと書くんだよ!」「なんでおならが出やすい体質だってことバラすんだよ!」「ピアノを習ってたことがバレちゃったじゃないかよ!」

 最後の件については補足が必要ですが、1980年代、小中学生男子がピアノを習っていると「女みてぇなヤツだな」とバカにされるのが常だったのです。だから、40人クラスに2人ほどいるピアノ男子はピアノ教室に通っていることをひた隠しにしていたのでした。

 子育てブログには、時には弱音を吐いたり、苛立ちのあまり子供を怒鳴りつけてしまったことなども書かれますが、これは慰めてもらいたいから書いていることが多い。子供はうんちを漏らしたことや屁をひり過ぎることなどを赤裸々に許可ナシで暴露されてしまうのに、親はあくまでも綺麗ごとしか書かない。

「不倫相手との修羅場、マジこの男殺してやろうかと思った」なんてことは絶対に書かれないのです。「子供のために頑張る素敵で優しいママ・パパ」の部分を作るために子供が使われている。書くことは否定しませんが、将来子供が嫌がる可能性は心のどこかで認識しておいた方がいいのでは。

 あと、写真にしても、目の部分に★や♥を入れて隠すのならまだしも、一切隠すことなく出す親もいます。その成長過程をつぶさに観察すると「こいつ、中学卒業のタイミングで整形したな」なんてこともバレてしまうのでご注意を。我が子の恨みを買う行為は慎みたいものです。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

「週刊新潮」2019年8月15・22日号 掲載

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最終更新:8/24(土) 5:55
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