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製薬業界のために働く“従業員”たちの肖像

8/25(日) 14:11配信

WIRED.jp

「鶏が先か、卵が先か」という慣用句がある。だが、その卵が遺伝子操作されていたとしたら、どちらが先なのだろうか──。

【写真ギャラリー】遺伝子操作されたニワトリ

人間はその飽くなき探究心によって、自分たちを取り巻く世界を意のままに操ろうとする。そんなテクノロジーと自然の危うい関係を、ブダペストを拠点に活動する写真家のダニエル・サライは、作品集「Novogen」で掘り下げている。

この作品の主題は、フランス企業のNovogenが生産している卵だ。高品質で病原体は一切なし。“極度に”管理が行き届いた環境で生産されている。

Novogenの卵を産むニワトリは、一分の隙もなく管理されていると言っていいだろう。その消化管は遺伝子操作によって“独特の進化”をとげている。理想的な体重になるまで急激に増やされ続ける餌を、ずっと食べられるようにするためだ。

ニワトリ版「ハンドメイズ・テイル」

このニワトリのプロトタイプには、1羽1羽にICチップが挿入されていた。ICチップによって測定した生体データに基づき、遺伝的に見て個体にどのような品質のポテンシャルがあるのかを推定していたのである。

そこでは卵の殻は、色味や厚さまでモニターされていた。まるでドラマ「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」のニワトリ版とでも言わざるを得ない。

こうしたニワトリたちに一切の無駄は許されず、「使用期限」まで定められている。この「NOVOgen WHITE」と名づけられた品種は、高品質の卵を産めなくなった時点で殺されてしまうのだ。大量生産を掲げる実利主義が、ダーウィンの進化論に拍車をかけていることを示すひとつの例だろう。

この状況はニワトリにとっては受難に違いないが、わたしたちには利益をもたらしている。卵は製薬会社に販売され、新たな薬剤やワクチンの開発に利用されるのだ。

“白い宇宙服”と手袋

ハンガリーにある卵の生産・販売施設でサライが見た光景を、写真は伝えている。彼は2度の申請を経て、ようやく施設への立ち入りを許可された。

さらに入室する際にも厳しい条件をクリアしなければならず、“白い宇宙服”と手袋を着用するよう命じられた。そしてニコンのデジタル一眼レフカメラ「D800」をはじめとする撮影機材は、入念に滅菌消毒されたのである。

モホリ=ナジ芸術大学の学生である彼がこの作品を手がけることにしたきっかけは、オランダで18年に開催された写真展「BredaPhoto」に出展するためだった。ちなみに、このときの展示テーマは「無限とそれを超えたところ」である。

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最終更新:8/25(日) 14:11
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