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製薬業界のために働く“従業員”たちの肖像

8/25(日) 14:11配信

WIRED.jp

“労働者”たるニワトリたち

撮影は2段階に分けられており、彼はまずNovogenの卵を産み出すニワトリ168羽のポートレートにとりかかることにした。そのとき思い描いたイメージは、従業員一覧のような証明写真である。

長さ100mの鶏舎に小さな台座と青い背景を用意してつくった“スタジオ”で撮影していった。「ニワトリたちをこの産業における労働者として描きたかったのです」と、サライは説明する。

ニワトリを撮影するうえで技術的に難しい点はたくさんあったが、ポーズをとらせるのは難しくなかった。驚いたことに、複数のニワトリがカメラの前に立とうとして小競り合いをすることも何度かあったほどである。サライの存在は、無菌環境に暮らすニワトリたちが初めて遭遇した人間だったからなのだろう。

こうして鶏舎で6日にわたって7,000枚以上を撮影した。それから3週間は、鶏肉を食べる気にはならなかったという。

「テクノロジーの生きた媒介役」に思うこと

ポートレートの次にサライは、施設内の様子とワクチンの製造過程を撮影した。あたかも報道記者のように施設を4~5回訪れて、ニワトリの飼育環境をカメラに収めていった。

「ニワトリたちはまるで病院のような環境にとらわれていました」と、サライは話す。「そこではニワトリの生命活動は、ひとつ残らず数字に変換されていたのです。とても不自然で人工的な生き物になっていました」

一連の写真の最後に、サライはNovogenのマーケティング資料と管理マニュアルを添えた。どちらも作品のいい引き立て役になっている。

Novogenは聞こえのいいブランディングの言葉を並べ、卵の殻の質を理想的な状態に保つにはカルシウムの投与が必要であることを正当化しようとしている。だが、これを見た人はうんざりするだけだろう。

サライも、しばしば葛藤を感じたひとりだった。卵が抑圧された環境で生産されている現実がある一方で、Novogenのニワトリたちが人間の命を救っているのもまた事実なのだ。このふたつの側面にどう折り合いをつければいいのだろうか──。

「こうしたニワトリをテクノロジーの生きた媒介役として、わたしたちは必要としています」と、サライは言う。「人間は正気の沙汰とは思えないようなものでもつくり出し、高度に発展させることができるようになりました。でも、生きた細胞についてはどうでしょう? どんなふうに管理し、扱っていくべきなのでしょうか?」

LYDIA HORNE

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最終更新:8/25(日) 14:11
WIRED.jp

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