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大石昌良、多彩な楽曲をアウトプットできる力ーーアニメ・ゲーム音楽におけるキャリアを辿る

8/25(日) 7:03配信

リアルサウンド

 数々の才能あるアーティストやクリエイターが活躍するアニメ・ゲーム音楽のシーンにおいて、この数年で最も華々しい功績をあげている人物のひとりが大石昌良。オーイシマサヨシ名義でのアーティスト活動に加え、作家としてもTVアニメ『けものフレンズ』のオープニングテーマにして、その年を代表するアニメソングとなったどうぶつビスケッツ×PPP「ようこそジャパリパークへ」(2017年)を手がけるなど、目覚ましい活躍をしている。ここではそんな彼のアニメ・ゲーム音楽におけるキャリアを辿りながら、その魅力に迫りたい。

【写真】大石昌良が振り返る「ようこそジャパリパークへ」のすべて

 2001年に3ピースバンド・Sound Scheduleのボーカル/ギターとしてメジャーデビューし、2006年に同バンドが解散(2011年に再結成)、その後2008年に大石昌良としてソロデビューした彼が、初めてアニメソングに関わったのは2013年のこと。それがTVアニメ『ダイヤのA』(テレビ東京系)のオープニングテーマとして制作されたTom-H@ck featuring 大石昌良名義の楽曲「Go EXCEED!!」。だが、フィーチャリングでの参加ということからもわかる通り、そのときの彼はあくまでいちシンガーとして楽曲に関わる立場であり、同楽曲を歌うことになった経緯もオーディションだったという。

 ただ、それに続いて2014年にも同アニメの後期オープニングテーマ「Perfect HERO」をTom-H@ck featuring 大石昌良として歌い、アニメ業界での認知度を広げた彼は、同年にアニメやゲームコンテンツ向けの名義であるオーイシマサヨシでの活動をスタート。その年の夏クール(7月~9月)に放送されたTVアニメ『月刊少女野崎くん』のオープニングテーマ「君じゃなきゃダメみたい」を担当し、スマッシュヒットを記録する。彼自身が作詞・作曲・編曲を手がけ、今でもアニクラ(アニソンに特化したクラブイベント)などで根強い人気を誇るこの楽曲の魅力は、何といってもファンキーなグルーヴ感とキャッチーな曲調にあると思う。特に印象的なのが、スラップやハーモニクスなどを駆使したアコースティックギターのフレーズ。ソロ活動を始めて以降、「弾き語り」によるエンターテインメントを追求し、ギターのみでベースやドラムスの要素も補填するべく磨き上げられた大石独自のパーカッシブな奏法が、この楽曲には惜しみなくつぎ込まれている。それが華やかなホーンの響きと合わさって、いわゆるアニソン的なイメージとは別種のポップなサウンド感を作り上げているのだ。

 そういった活躍を経て、2015年1月にはTom-H@ckとの音楽ユニット・OxT(オクト)を本格始動。全曲の歌唱を担当するほか、TVアニメ『オーバーロード』のオープニングテーマに起用されたエモ系ミクスチャーロック「Clattanoia」(2015年)や、さらにヘビー&ゴシック感を増した『オーバーロードII』のオープニングテーマ「GO CRY GO」(2018年)などでは作曲も手がけ、MYTH & ROIDでの活動などワールドワイドな視点を持つTom-H@ckとより密接なアーティスト活動を行い、自身の表現の幅を広げていくことに。OxTとしては、90年代の特撮作品『電光超人グリッドマン』をリメイクしたTVアニメ『SSSS.GRIDMAN』のオープニングテーマとして話題を呼んだ「UNION」(2018年)でも作詞・作曲を担当。作品性にマッチしたヒロイックなメロディと歌詞、聴き手を鼓舞するようなボーカル、そしてTom-H@ckのアレンジによるモダンなバンドサウンドが融合した傑作となった。また、同名義での最新シングルとなる『ダイヤのA』第3期のエンディングテーマ「ゴールデンアフタースクール」(2019年)も彼の作詞・作曲で、こちらは90年代のビーイング作品を彷彿させる切なくも爽快なミディアムロックに仕上がっており、スポーツアニメのエンディングにピッタリの青春感溢れるナンバーだ。

 そのOxTやソロでのアーティスト活動と並行して、歌い手・りぶに提供した「君じゃなきゃダメみたい」路線のファンキーな「不可侵領域デストロイヤー」(2015年)、アニソンシンガー・鈴木このみによるハッピーフィーリング全開のコール&レスポンス曲「Nice to Me CHU!!!」(2015年)など、職業作家としても名を上げていった。そんな大石がさらなるブレイクのきっかけを掴んだのが、先述した「ようこそジャパリパークへ」のヒット。アニメ『けものフレンズ』の出演声優たち8人が歌うキャラクタ―ソングとなる本楽曲は、フレンズたちの平和でたーのしーワイワイ感を凝縮したパーティーチューンで、当時、星野源や平井堅といった同業者も絶賛するほどの広がりをもたらした。どこを切ってもキャッチーなメロディとアニソン的な密度の濃さを絶妙にブレンドしたバランスの良さが、その理由だろう。

 また、アニメ『けものフレンズ』の放送と同じ時期にサービスがスタートしたアプリゲーム『A3!』の主題歌「MANKAI☆開花宣言」(2017年)も、彼らしい躍動感あるメロディと賑々しいサウンドが楽しめる一曲。さらに声優の斉藤壮馬によるアーティストデビュー曲「フィッシュストーリー」(2017年)では爽やかかつゴージャスなオーケストラルポップを、同じく声優の大橋彩香が歌う「シンガロン進化論」(2018年)ではQueenばりのシンフォニックなパワーポップを提供するなど、様々な音楽的語彙を駆使しながらさらに進化していった彼は、2018年5月にオーイシマサヨシ名義での約4年ぶり2枚目となるシングル『オトモダチフィルム』をリリース。『月刊少女野崎くん』の制作スタッフが集結して作られたオリジナルアニメ『多田くんは恋をしない』のオープニングテーマとなったこの曲は、麗しいストリングスの音色と軽快なロックンロールが合わさったラブソング。さらに同年7月には特撮作品『ウルトラマンR/B』のオープニングテーマ「Hands」をオーイシマサヨシとして歌い、改めて熱く爽やかな歌声を持つシンガーとしての資質もアピールした。

 そして2019年も彼の快進撃は継続。アニメ『けものフレンズ2』のオープニングテーマとなるどうぶつビスケッツ×PPP「乗ってけ!ジャパリビート」では、かねてよりソロ作品や提供楽曲などで見せていたビッグバンドジャズのテイストを前面に打ち出し、ボードビル~ミュージカル調の華やかな曲調で、「ようこそジャパリパークへ」とはまた違った方向からフレンズたちの魅力を描き出している。さらに音楽番組『アニソン!プレミアム!』(NHK BSプレミアム)のテーマソング「☆(きらりん)トリルで始まっちゃう!」では、2000年代以降のアニソンを語るうえで欠かすことのできない音楽家・上松範康(Elements Garden)との共作も体験(作詞は畑 亜貴、編曲は藤永龍太郎)。アニソンシーンにおいてますます存在感を強めている。

 そんな彼による、オーイシマサヨシ名義のニューシングル表題曲「楽園都市」は、TVアニメ『コップクラフト』のオープニングテーマ。『ルパン三世』シリーズの音楽で知られる大野雄二サウンドを意識したであろうホーンと銃声が最高なイントロ、ラテンの要素をたっぷりと散りばめたクールなジャズサウンド、光と闇が交差する「街」とそこで暮らす人々を描いた歌詞など、日本人の琴線に触れるであろう懐かしさと新味を併せ持った楽曲で、ハードボイルドなバディアクションものである『コップクラフト』の世界を彩っている。カップリング曲の「Hero」はWEBアニメ『モンスターストライク ~ノア 方舟の救世主~』(『モンストアニメTV』公式YouTubeチャンネル)の主題歌。こちらでは「Hands」のときと同じく自身はシンガーに徹し、勇気と希望に溢れたヒーローソングを情熱的に歌唱している。

 このように、歌やギター演奏はもちろん、作詞・作曲・編曲など何でもマルチにこなせてしまい(自身で編曲を行う場合、ドラム以外の楽器はほぼ自分で演奏することが多い)、なおかつ様々なクリエイター/アーティスト/声優/作品との縁を大切にしながら、それぞれの求める内容やシチュエーションに応じて多彩な楽曲をアウトプットできるのが、大石昌良の個性であり魅力なのだろう。本人は自己紹介のときによく「アニソン界のおしゃべりクソメガネ」と名乗っているが、彼は今や間違いなく「アニソン界最強のヒットメイカー」のひとりとして、シーンの一翼を担う存在になっている。

流星さとる

最終更新:8/25(日) 7:03
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