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女優・吉行和子――常識におさまらない人間の生々しさを演じる

8/25(日) 12:33配信

Wedge

 「撮影中は、自分の性格を忘れて雪子さんの性格に入り込んでしまうから、毎日何を食べさせようとかポチ袋にいくら入れようか、どうやって渡そうかと考えていて楽しかった。そうなっている自分が面白いの。役者冥利につきる時間で、役者やっててよかったと思うんです」

 映画が完成すれば、雪子さんから吉行和子に戻る。強烈な雪子さんとつい重なってしまう意識を振り払い、目の前の吉行に意識をフォーカスし直す。

 「私? 私は雪子さんとは全然違う。実人生の私は、人のために一生懸命料理を作ってあげるなんてありえない。自分のために食べるのも面倒くさいくらいなんですから。生きてくためには食べなきゃならないけど、料理は全くしません」

 このひと言で一気に雪子さんは消え去る。同時に、雪子さんと正反対の、これまた強烈な吉行の芯がみるみる立ち上がってくるような印象に、一瞬たじろぐ。

 「私、協調性はあまりないですね。すごいエゴイストなんだと思う。大事な友達もいるし、友達との時間も楽しいのよ。でもそれはそれ、本当の私の楽しさはそこにあるんじゃないような気がしてるの。ひとりで空想したり、映画や芝居を見て何かじっと考えているほうが、人生をより楽しんでいられるようで好きなんです」

 そういえば以前読んだインタビュー記事で、自宅に人を呼ぶことはないと話していたことを鮮明に覚えている。

 「人のために時間を費やすのがイヤなのね。外で一緒に楽しむのは好きだけど、いわゆる“おもてなし”というのが嫌いなの」

 吉行の語り口は、躊躇がなく、さっぱりしていて、どこまでも潔い。それでいて、ひとつの価値観を主張する気配もない。だから、私の心の奥底にあるフタをしてきた何かにピクリと響いてくる。1935年に生まれ、物心つく前から、女たるもの料理は好きで当たり前という戦前の価値観を世の中全体から刷り込まれた時代を生きてきてなお、このようにはっきりと自分を語れる吉行に、戦後生まれの私が羨望を覚え、まぶしさを感じる。

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最終更新:8/25(日) 12:33
Wedge

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