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丸顔で、真面目で、格好のよい頭だった…明仁上皇の知られざる素顔|ジミーと呼ばれた天皇陛下

8/25(日) 6:05配信

幻冬舎plus

工藤美代子

「あなたの名前はジミーです」。戦勝国アメリカから赴任した英語教師、ヴァイニング夫人は、最初の授業で若きプリンスにそう告げた……。天皇家から絶大な信頼を得て、若き日の明仁上皇に多大な影響を与えた夫人。『ジミーと呼ばれた天皇陛下』は、夫人が遺した資料を手がかりに、明仁上皇の素顔に迫った渾身のノンフィクションだ。平成から令和へ、新たな時代が幕を開けた今だからこそ、改めて読んでみたい本書。その一部をご紹介します。*   *   *

対面の日、明仁親王は……

いよいよ、アメリカ人家庭教師が、その生徒である皇太子と対面したのは来日して二日後の十月十七日だった。

前例を破って、この会見には天皇、皇后も同席した。これは、いかに天皇がヴァイニング夫人に期待を寄せていたかを物語っている。

この前日、夫人は皇居でブライスと会った。ブライスはすでに皇太子に英語を教えていた。

そして皇太子が新任の家庭教師に会ったとき、どう挨拶するか、もう決めてあり、あなたが「御親切なお言葉をありがとうございます」と答えるだろうと皇太子にいってあると告げた。

それは「不自然な初対面になりそうだ」と夫人は思った。彼女にしてみれば、挨拶の言葉など決めずに、自由に話したかったのだ。

ところが、思いがけないことが起きた。

なんと、皇太子はブライスが教え込んだ堅苦しい挨拶などしなかったのである。十二歳の少年らしく「キャンディーをありがとう」と自然な言葉でいった。

ヴァイニング夫人はすっかり嬉しくなる。

このとき、夫人が天皇、皇后、そして皇太子をどのように観察したかは『皇太子の窓』の中に詳しい。

初めに皇太子についての描写がある。

丸顔で、真面目で、それでいて目もとにちらっとユーモアの見える愛らしい少年であった。殿下は、日本の学生が誰も着る紺の制服──長いズボンに、前に真田の縁取りのついた詰襟の上衣を着ておいでになり、襟のところには、学習院の徽章の、小さな金色の桜の花がついている。日本の普通の生徒と同じように、頭は坊主刈りであるが、短い黒い髪は光沢があり、でこぼこのない、格好のよい頭だった。

夫人が皇太子の頭の形に着目しているところが、なかなか面白い。おそらく日本に着いてみて坊主頭の子供が多く、なかにはひどく不体裁に見える頭もあったのだろう。それが夫人の心に強く印象づけられていたのだと思える。

次に天皇について夫人は筆を進める。

彼女が受けた第一印象は、はにかみやだが、感じの鋭い、しかし親しみのある方というものだった。

さらりと天皇の印象を述べた後で、皇后については、かなり丁寧にその姿を描写した。

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最終更新:8/25(日) 6:05
幻冬舎plus

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