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相続争いで放置した実家…隣家から「損害賠償請求」されたワケ

8/25(日) 8:00配信

幻冬舎ゴールドオンライン

「相続」発生時に対象となるのは、「お金」や「不動産」といったプラスの財産だけではなく、借金や未納の税金の支払い義務などの「負の遺産」も含まれます。本記事では、司法書士法人ABC代表で司法書士の椎葉基史氏の著書、『身内が亡くなってからでは遅い 「相続放棄」が分かる本』(ポプラ社)から一部を抜粋し、資産だと信じて相続した「”負”動産」に苦しめられる「不動産相続難民」と呼ばれる人々の実態にせまります。

「負動産」の固定資産税以上に厄介なリスクとは?

相続した不動産が、資産となるどころか、むしろ資産を食いつぶす、「負動産」だった──。それは今や珍しいことではありません。

不動産の厄介なところは、目に見える借金と違い、一見それが「資産」であるかのように見えるところです。

多くの人が「とりあえず相続しておいて、いざとなったら売ればいい」と安易に考えるのも無理はないかもしれません。けれども実際は、地方の農村部だけでなく、大都市周辺部のかつては“新興住宅地”と呼ばれたような地域でさえ、タダでも売れない=資産的価値のない「負動産」で溢れています。

売れないなら、ほうっておけばいいと思うかもしれませんが、そうはいきません。不動産を所有すれば、固定資産税を支払う義務を負うことになります。

つまりそういう意味では、負動産を所有することは、一生払い続けなくてはいけない負債を背負うことと状況的には何も変わりません。そして実は「負動産」というのはこの固定資産税以上に厄介なリスクをはらんでいるのです。

大阪にお住まいの渡辺修二さん(65歳)は6人兄弟の次男。10年前に亡くなった父親の相続の遺産分割協議がうまくいかず、兄弟の間に深い溝ができたせいで全ての相続が宙ぶらりんの状況になっているのだそうです。

長崎にある実家は、名義変更ができないために売却することもできません。年間4万円ほどの固定資産税は、相続人の代表者として渡辺さんが払い続けていたそうです。10年もの間、誰も様子を見に行くことさえせず、完全に放置していたので、実家がそれなりに傷み始めているであろうことは渡辺さんも想像していました。

機械的に固定資産税の支払いを続けることには苦々しさを感じていたものの、取り立てて策を講じようとは考えていなかったと言います。ところがある日、実家の隣で会社を営んでいる人の弁護士を名乗る人物からクレームが入ります。

「家屋の老朽化が進んでいるせいで、風が吹くたびにガタガタとうるさく、いつこちらの敷地内に倒れてくるかわからない。会社の倉庫を傷つける恐れもあるので、即刻修理をするなり、取り壊すなりしてほしい。もしも、実際に被害を受けた場合は、損害賠償を請求します」。

損害賠償というフレーズに驚いた渡辺さんは、すぐに私の事務所に相談にいらっしゃいました。厳密に言えば、渡辺さんはその土地の全てを相続しているわけではないのですが、相続人の代表という立場で固定資産税を払い続けているので、その存在を知らなかったという主張はどう転んでも認められません。

ですので、ここからの相続放棄という選択肢はもはやないものとするしかありませんでした。

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最終更新:8/26(月) 16:03
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