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セミの最期は澄んだ空を見ることさえできない

8/25(日) 6:20配信

東洋経済オンライン

生きものたちは、晩年をどう生き、どのようにこの世を去るのだろう──。
老体に鞭打って花の蜜を集めるミツバチ、成虫としては1時間しか生きられないカゲロウなど生きものたちの奮闘と哀切を描いた『生き物の死にざま』から、セミの章を抜粋して掲載する。

■死を待つセミは何を見る

 セミの死体が、道路に落ちている。

 セミは必ず上を向いて死ぬ。昆虫は硬直すると脚が縮まり関節が曲がる。そのため、地面に体を支えていることができなくなり、ひっくり返ってしまうのだ。

 死んだかと思ってつついてみると、いきなり翅(はね)をばたつかせてみたりする。最後の力を振り絞ってか「ジジジ……」と体を震わせて短く鳴くものもいる。

 別に死んだふりをしているわけではない。彼らは、もはや起き上がる力さえ残っていない。

 死期が近いのである。

 仰向けになりながら、死を待つセミ。彼らはいったい、何を思うのだろうか。

 彼らの目に映るものは何だろう。

 澄み切った空だろうか。夏の終わりの入道雲だろうか。それとも、木々から漏れる太陽の光だろうか。

 ただ、仰向けとは言っても、セミの目は体の背中側についているから、空を見ているわけではない。昆虫の目は小さな目が集まってできた複眼で広い範囲を見渡すことができるが、仰向けになれば彼らの視野の多くは地面のほうを向くことになる。

 もっとも、彼らにとっては、その地面こそが幼少期を過ごした懐かしい場所でもある。

 「セミの命は短い」とよくいわれる。

 セミは身近な昆虫であるが、その生態は明らかにされていない。セミは、成虫になってからは1週間程度の命といわれているが、最近の研究では数週間から1カ月程度生きるのではないかともいう。

 とはいえ、ひと夏だけの短い命である。

 しかし、短い命といわれるのは成虫になった後の話である。セミは成虫になるまでの期間は土の中で何年も過ごす。

 昆虫は一般的に短命である。昆虫の仲間の多くは寿命が短く、1年間に何度も発生して短い世代を繰り返す。寿命が長いものでも、卵から孵化(ふか)して幼虫になってから、成虫となり寿命を終えるまで1年に満たないものが、ほとんどである。

 その昆虫の中では、セミは何年も生きる。実に長生きな生き物なのである。

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最終更新:8/25(日) 6:20
東洋経済オンライン

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