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ダム撤去でサケが急回復、鍵はなんと海辺のビーバー、なぜ?

8/26(月) 7:14配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

ダムの撤去から始まった意外な復活の物語、北米西海岸

 ある晴れた夏の日、米ワシントン州の北西部を流れるエルワ川の河口では、キングサーモン(マスノスケ)が川の流れに逆らって元気よく飛び跳ねていた。

ギャラリー:人間が持ち込んだビーバーの悲劇 写真17点

 オリンピック国立公園の緑豊かな山々を源流とし、ファンデフカ海峡へと注ぎ込むエルワ川の流れは強い。本流から外れた細い水路に立っていても、思わず足をとられそうになる。この本流をものともしないキングサーモンはよほど強靭な体を持っているのだろう。彼らは川を遡り、遥か上流の産卵場を目指す。そして、オリンピック山脈の雪解け水の中で卵からかえった稚魚たちは、一生の大半を過ごす豊饒の海へと川を下ってゆく。

 だが、その長い旅路の入り口は、彼らの祖父の時代とは大きく様変わりした。2011年から2014年にかけて、エルワ川にかかる巨大なエルワダムとグラインズキャニオンダムが撤去されたことが原因だ。どちらのダムも建造から100年近く経っていたが、撤去後数カ月のうちに河口の三角州が広がり、豊かな自然が戻ってきたのだ。

 2014年以降、三角州は少なくとも0.4キロ平方メートル拡大し、海峡へ向かって90メートル以上伸長した。そこへ鳥やチョウが集まり、ヤナギ、ハンノキ、セイタカミゾホオズキ、オニハマダイコンなどが生い茂るようになった。

 キングサーモンの生息数は、1984年以降、全体で60%減少していたが、エルワ川ではダムの撤去後に2倍近くに増加した。オリンピック国立公園の主任漁業生物学者パトリック・クレイン氏は、今年は9000匹を記録するだろうと期待する。

 キングサーモンの個体数回復にビーバーが関わっているらしいという話を聞いて、私はここエルワ川河口へ取材にやってきた。汽水域の河口部でビーバーを探しているというと奇妙に聞こえるかもしれない。彼らは本来、内陸の淡水湖や河川、湿原に生息する生き物だからだ。だが、この環境で発揮される「生態系エンジニア」としてのビーバーの役割こそが、キングサーモンの驚くべき回復の鍵を握っていると考えられている。

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