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【朝めし自慢】中村歌六(歌舞伎役者・68歳)「カミさん手製の常備菜以外は僕が作ります」

8/26(月) 6:05配信

サライ.jp

取材・文/出井邦子 撮影/馬場隆

「“ごんげん蒸し”が上手にできれば、一日気分がいい」という歌舞伎役者の健康は、自らが腕を振るう朝食が支えている。

【中村歌六さんの定番・朝めし自慢】

前列中央から時計回りに、ご飯、野蕗のきゃらぶき、煎り豆腐(人参)、鶏そぼろ、漬物(胡瓜と人参の糠漬け・壬生菜・刻み沢庵)、焼き海苔、ごんげん蒸し、大根おろし(葱・鰹節・胡麻)、納豆(葱)、絹さやの浸し(鰹節)、味噌汁(豆腐・若布・葱)、中央右は焼き鮭、左は蒲鉾と山葵漬け。今朝は小鉢に盛っているが、常備菜のきゃらぶきや煎り豆腐、鶏そぼろ、加えてごんげん蒸しなどは大皿で登場し、取り分けていただくことが多い。絹さやは昨夜の残りを浸しに。蒲鉾は、山葵漬け(静岡『野桜本店』の激辛口)をつけて食す。焼き海苔は東京・品川の『みの屋海苔店』のものを愛食。焼き海苔とごんげん蒸しの器の模様は、定紋である揚羽蝶。

味噌汁の味噌は3種類を合わせる。手前から時計回りに、仙台味噌、甘味噌、信州味噌。この他、京都の西京味噌や九州の麦味噌を使うこともあるが、3種類が定番。味噌は、デパートの地下で量り売りのものを自ら購入してくる。


物心つくかつかない頃から、歌舞伎座(東京・銀座)が学びと遊びの場であった。

「祖父に手を引かれて毎日、旧歌舞伎座に通いました。楽屋で化粧や着付けを見たり、奈落を探検したり、かくれんぼをしたり。悪戯書きをした場所も覚えていました」

と、歌六さんは当時を懐かしむ。

歌舞伎の名門、播磨屋の家に生まれた。祖父は女形の名優・三世中村時蔵、曾祖父は上方生まれの三世歌六。昭和30年、5歳で初舞台。小川進一少年は、四代目中村米吉となった。だが、父の二世歌昇(追贈・四世中村歌六)は体を悪くし、若くして歌舞伎を廃業。歌六さんが22歳の時に亡くなった。

後ろ盾を失くした歌六さんを、先輩役者が支えてくれた。

「特に十七代目の中村屋のおじさん(大叔父の勘三郎)が、“お前を一人前にしないと貴智雄(父の本名)に顔向けができねえ。一人前になれねぇんなら死んでくれ”と、指導してくださいました」

歌舞伎界の陰の立役者といわれた祖母の小川ひな、叔父の俳優・萬屋錦之介や中村嘉葎雄の存在も大きかった。全く性格の異なるふたりの叔父の引き出しから、多くを盗ませてもらったという。

昭和56年、五代目中村歌六を襲名。口跡の良さと歯切れのいい科白、役の性根を押さえた陰翳ある演技が舞台に奥行きをもたらす。読売演劇大賞優秀男優賞、芸術選奨文部科学大臣賞、日本芸術院賞、紫綬褒章など、数々の受賞歴がその確かな演技を物語っていよう。

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最終更新:8/26(月) 6:05
サライ.jp

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