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消えた伝説の女性飛行士、謎を解く鍵は地上最大の甲殻類ヤシガニに

8/26(月) 18:09配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

80年前、世界一周飛行中に消息を絶ったアメリア・イアハート、今も続く探索

 キリバス、ニクマロロ島は、太平洋に浮かぶ環礁だ。この島には、地球最大の陸生無脊椎動物ヤシガニが生息する。最大で体長90センチ、体重4キロにもなり、強力な爪をもつ。

ギャラリー:消えた伝説の女性飛行士アメリア・イアハート、今も続く探索 写真9点

 現在、ナショナル ジオグラフィックが支援する調査隊が、世界一周飛行中に消息を絶ったアメリア・イアハートの痕跡を探して、ニクマロロ島を調査している。そのなかで注目しているのが、この巨大な甲殻類だ。

 調査を行う日中は、ヤシガニを避けるのは簡単だ。ヤシガニは巣穴から出てくると、ココヤシの木陰やレンの木の枝の間で過ごすからだ(ヤシガニは木に登れる)。

 だが夜は?「ヤシガニに取り囲まれてしまいます」と話すのは、「歴史的航空機の発見を目指す国際グループ(TIGHAR)」の一員であり、ニクマロロ島への調査隊に10回以上も参加しているベテラン、ジョン・クラウス氏だ。「懐中電灯で照らすと、その光の外側には1000匹ものカニがいるのです」。少なくとも、そう思えるくらいいる。だから同氏は、地面で寝ないようにしてきた。

 アメリア・イアハートとナビゲーターのフレッド・ヌーナンは1937年7月2日、世界一周飛行の達成まで残り3行程のところで消息を絶った。イアハートのその後の足取りについてTIGHARが立てた仮説では、ヤシガニが重要な役割を果たしている。

 イアハートとヌーナンは、目指していた太平洋上の島、ハウランド島を見つけられず、ニクマロロ島に不時着したとTIGHARは考えている。当時ガードナー島と呼ばれていたニクマロロ島は、サンゴ礁に囲まれており、これが天然の滑走路になった可能性があるという。やがてヌーナンは死亡し、飛行機は流され、イアハートが島に1人残された。

 その島にいたのが、ヤシガニだった。

 1940年には、英国がニクマロロ島を植民地としていた。この年、植民地行政官ジェラルド・ギャラガーは、上官に人骨の一部が発見されたと報告し、「アメリア・イアハートのものである可能性がある」と電報を送っている。見つかった13個の骨は、フィジーに送られ調査されたが、その後行方がわからなくなった。

 成人の骨は206個ある。残りの193個は、どうなったのだろうか? 「泥棒ガニ」の異名を持つヤシガニの仕業であることを示す証拠がいくつかある。ギャラガーは骨の発見場所について、「ヤシガニが多くの骨をまき散らしていた」と説明している。ヤシガニは雑食性で、ヤシの実はもちろん、落ちた果実や鳥、げっ歯類、他のカニも食べ、さらには死肉もあさる。

 TIGHARは数種の実験を行い、ヤシガニが骨を巣穴に持ち帰るかどうかを確かめた。ある実験では、ブタの死骸を島に持ち込み、何が起きるかを撮影した。ヤシガニに加え、比較的小さなオカヤドカリが多数群がり、肉の大半は2週間以内になくなった。

「この実験で、カニは骨を持ち去るということがわかったのです」とTIGHARの元主任考古学者トム・キング氏は話す。「しかし、どれほど遠くまで運ぶかはわかりませんでした」。実験から1年後、死骸から18メートルほど離れた所で見つかった骨もあったが、すべてを発見することはできなかった。

 イアハートは遭難して、ニクマロロ島で死んだ可能性が高いとキング氏は考えている。死後、ヤシガニが遺体を食べ、骨を巣穴に持ち帰ってしまったのではないか。ギャラガーが発見した13個を除いて。

 今回の調査でキング氏のチームは、ニクマロロ島の南西部にあるレンの木の根元周辺を掘り返した。2年前の調査で遺体捜索犬が、ここで人が死んだ形跡があると合図したからだ。そのときは骨は見つからなかったが、今回連れてきた捜索犬には、合図した木に近い他の場所の匂いを嗅がせた。頭蓋骨が見つかったと考えられる穴、開いた貝殻が溜まっていた場所、飛行機が不時着したかもしれない場所などだ。

 調査チームは引き続き、犬が最初に反応を示した匂いの源を発見することを目指す。イアハートの遺体が眠っているであろう、遠い昔に消えたヤシガニの巣穴があると考えているからだ。

文=RACHEL HARTIGAN SHEA/訳=牧野建志

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