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“有機ELテレビ界のポルシェ” REGZA新モデルに驚嘆。「完璧画質」にはさらに先があった!

8/26(月) 6:00配信

PHILE WEB

東芝の4K有機ELテレビ最新モデル“REGZA”「X930」。元エンジニアとして高画質なBD/DVDに多数携わった経歴も持つ“画質マニア”なライター秋山真氏が、同機の画質をチェックした。

■「これ以上、何を望むのか?」

ソニーのマスターモニター「BVM-X300」は全ての有機ELテレビにとって北極星のような存在である。テレビメーカー各社がBVM-300をリファレンスとしているのは周知の事実であり、画質の神様と言っても過言ではない。

にも関わらず、私は前回のレビューで東芝“REGZA”「65X920」の画質を「BVM-X300をそのまま拡大しているみたい」とまで絶賛した。「性能差ではなく、あくまで印象差」というエクスキューズはつけたものの、これは筆者にとって最大級の賛辞である。

後継機の画質にこれ以上、何を望むのか? 正式発売開始前に行われた内覧会で、最終チューニング前のX930をチェックする機会もあったのだが、正直、その時点ではX920との違いがよく分からなかった。

プレゼンの内容自体も新AIモードやDolby Vision、HDR10+のデモが中心。有機ELパネルのスペックも昨年から劇的には変わっていなかったこともあり、「どうやらX930はX920の機能強化版に留まりそう」というのが筆者の“読み”だった。

むしろ画質よりも印象に残ったのは、内蔵スピーカーとは思えないほどに澄んだ音を聴かせるサウンドシステムや、北欧インテリアを思わせるシンプルなデザインの純正壁寄せスタンドであり、今回のレビューもそちらをメインに書こうと思っていた。最新の画質チューニングが施された65X930を観るその日までは……。

■「HDRエンハンサー」進化の効果か?「とんでもない没入感」

今回の取材は、長年REGZAの画質マイスターを務める東芝映像ソリューションの住吉氏にも同席いただいた。「あれからそんなに変わりました?」と訊くと、「とにかく観てください」と不敵な笑みを浮かべる住吉氏。

まずは画質モードを前回のX920で褒めちぎった「映画プロ」にして、『Train Night View 夜の山手線 4K HDR 内回り』のUHD BDから出発進行。夜間を走行する山手線の運転席に固定カメラを設置して、内回り1周分をまるまる4K/60P/HDR10収録したマニアックな映像だが、品川を出発して田町に着く頃には、前述の内覧会時における筆者の“読み”が完全な的外れであったことに気付かされた。

実はこのコンテンツには少し残念なところがある。すれ違う電車のヘッドライトや、駅やビルの看板などが白飛びしているのだ。自宅のX910で明部の調整を試みたこともあるが、グレーディングの時点でクリップしているようでどうにもならない。これはX920でも同じだった。

ところが、X930だけは白飛びしている面積が明らかに小さい。ブラウン管時代を経験している読者には「電子ビームが絞られた状態」と言えば、状況をイメージしてもらえるだろうか。もちろんディスクに収録された階調以上にはならないが、明部の露出が適正にコントロールされたことで、光源のフォーカスが定まり、X920では見えていなかった光の凹凸が出現した。

その結果、X930が手に入れたのは、画面の奥へ奥へと展開する異様なまでの遠近感だ。行き交う電車や遠くに見えるビル群のなんと立体的なことか。眼前に広がる光景はもはやフラットディスプレイが映し出す電子映像の範疇ではなく、まるでX930の有機ELパネルが、運転席の窓ガラスに置き換わったかのような、とんでもない没入感だ。

この完全に予想外な画質の変貌ぶりを、住吉氏は「HDRエンハンサー」の動作が変わったことが理由ではないかと推測する。

HDRエンハンサーとは、RGBW方式の有機ELパネルにおいて、W(ホワイト)のみをブーストし、白や彩度の低いエリアの輝度を最大2倍に伸張するスイッチのこと。これにより各社最新の有機ELテレビは部分ピーク輝度1000nitを実現しているのだ。

ただし、この機能は基本的にパネル側とセットで供給されるもので、これまではオンかオフ(500nit)の二択しか選べなかった。それがX930ではREGZA側でのゲイン制御が可能になったのだという(メニュー上の「オート」がこれに当たる)。

HDRエンハンサーのゲイン制御だけでここまで変わるとは俄に信じがたいが、住吉氏によれば超解像処理やノイズリダクションのパラメーターは、X920から一切変えていないというのだから二度驚く。

■肌色の表現能力もさらに向上

次に暗部にも注目してみよう。すると、電車のヘッドライトが届かない暗闇の中にX920との違いが確実に見て取れる。暗部の色相が時折グリーニッシュに転ぶクセについては、X910からX920になった時点で完璧に修正されたと思っていた。ところがX930の漆黒を目の当たりにすると、前回のレビューで安易に“完璧”という言葉を使ったことを反省せざるを得ない。これは最新パネルの開口率と透過率が、昨年より若干ではあるが向上したことと無関係ではないだろう。S/Nが上がり、擬色の発生が抑えられているのだ。

このことは暗部だけでなく中間輝度、特に人間の眼に敏感なスキントーン(肌色)の再現性にも大きな恩恵をもたらす。ここでディスクを私のリファレンスである『君の名は。』UHD BDにチェンジ。実はこの作品、キャラクターの肌色の描き分けが非常に難しいのだ。

特に01:59付近、『君の名は。』のタイトルバックが出た直後に瀧と三葉がこちらを向く連続ショットは、一見何気ないシーンだが桁違いに難易度が高い。皆様の環境ではどのように映っているだろうか? 瀧は土気色、三葉は貧血気味の顔色になってはいないだろうか? 私自身、これまでに何度もX910やX920で調整を試みたが、このカットだけは最後までBVM-X300のような肌色が出せず、もはや民生機では無理なのだろうと諦めていた。

ところが、このX930と来たらどうだ! 二人の顔色は明らかにBVM-X300を彷彿させる血色の良さではないか! 単に赤味がかっているというような低レベルの話ではない。スキントーンはあくまで中庸なのに、キャラクターの全身に血が巡り、活き活きと動き出すようなこの感覚。RGBW方式の色再現もここまで来たのか。

実は住吉氏にとってもこのシーンはずっと鬼門だったそうだ。今回パネルが新しくなったことで、映像チューニングの幅が拡がり、ようやくこの肌色が出せるようになったとのこと。民生機では無理と勝手に決めつけていた自分の浅はかさを恥じた。

■「放送プロ」モードは「放送画質の歴史におけるマイルストーンだ」

前回のX920で筆者を驚かせたもうひとつの映像モードが「ライブプロ」だ。元々は「ビデオ撮影のコンテンツ全般を20ルックス以下の暗い環境で視聴するためのモード」という位置付けだが、徹底したニュートラル基調であり、特に放送系との相性は抜群。「明るさ検出」と組み合わせて使えば、暗室から外光が降り注ぐリビングまで、普段使いはコレひとつでOKという万能モードだった。しかし、ネーミング的に用途が分かり難かったのも事実。そこでX930では、その名をズバリ「放送プロ」に改名したのだ!……と思ったら、全然違うらしい。

「放送プロ」は、明らかに「ライブプロ」とベクトルが異なっている。端的に言うと「暗室で放送系コンテンツを観るための専用モード」になったのだ。HDRエンハンサーの振る舞いとは関係なく、最初から輝度や彩度を抑え気味にしてモニターライクな画作りに徹している。視聴したのは昨年の『紅白歌合戦』を録画したBD-RE(4K/60P/HLG)だ。

鳥肌が立った!大トリはサザンオールスターズの『勝手にシンドバッド』。ステージ上は全員参加のお祭り状態だ。ロングショットでは出演者が超精密なミニチュアになってステージ上を動き回り、月並みな表現で恐縮だが、手を伸ばせば一人ひとりに触れられそうなリアリティである。

必要最小限に留められたノイズリダクションのさじ加減も秀逸で、MPEG圧縮される前の送出映像を覗き込んでいる気分だ。桑田さんのアップにいたっては、テレビの映像を観ているというよりも、自分がハンディのカメラマンになって、NHKホールで生中継しているかのような極限の緊張状態!手に汗握るとはまさにこのことである。

筆者のボキャブラリーでは上手く伝えられないのがもどかしいが、つまりは「放送プロ」も「映画プロ」と同様に、「眼前に広がる光景はもはやフラットディスプレイが映し出す電子映像の範疇ではない」のである。これは放送画質の歴史におけるひとつのマイルストーンだ。8K放送を否定する気はないが、動画解像度やコントラストの低い液晶テレビではこの画質は逆立ちしたって出せないだろう。

HDR10+とDolby Vision
■明るい環境で観るなら「リビングAIピクチャー」

とはいえ、「映画プロ」も「放送プロ」も基本的には部屋の照明を落とした環境で観るのがベストである。それではX920の「ライブプロ」に相当するような、明るい環境でも使えるモードはあるのだろうか?その答えが冒頭でも触れた新AIモードの「リビングAIピクチャー」だ。

これまでもREGZAには「おまかせ」モードがあったが、視聴環境の照度のみを参照しているだけだった。それに対し「リビングAIピクチャー」では新搭載の「色温度センサー」を活用することで、外光や照明の色温度まで検出して映像を自動調整。従来の「あざやか」や「標準」モードだけでなく、「ライブプロ」までも包括した次世代の全自動モードとなっている。

具体的な色温度は、上限が約12000K、下限は全暗環境でビデオ素材再生時に約8000K、映画再生時に約7500Kとなるが、この可変範囲はユーザー側でもシフト可能だ。「お好み調整」で「色温度」を「-4」とすれば、映画再生時には約6500Kまで下げることができる。

個人的な願望を言えば、邦画に多い9300Kで製作されたコンテンツまで自動判別してくれるとさらに良いのだが、コンテンツ側のメタデータに色温度の情報があるわけでもないので、現時点ではなかなか難しい。しかし住吉氏は、今後この「リビングAIピクチャー」をさらにマニアックに進化させる構想を持っているようだ。近い将来、「映画プロ」や「放送プロ」さえ不要となるような究極の全自動モードが爆誕する日が来るかも知れない。

■HDR10+とDolby Vision

さて、ここまで来て、ようやくDolby VisionとHDR10+両対応の話である。特にX920ユーザーは気になっているのではないだろうか?このあたりから話が少々ディープになってくるが、ついて来てほしい。

まずはDolby Visionに関してだが、そもそもDolby Visionの立ち位置が以前とは随分変わってしまった。当初は12bit収録というのが一番のセールスポイントだったが、実際には中身が10bit相当と思われるタイトルも数多く存在するし、さらにはテレビ側の映像モードがDolby社の提供する「Dolby Vison Bright」か「Dolby Vison Dark」に強制的に切り替わってしまうため、HDR10やHDR10+との純粋な画質比較ができない。そのため監督や映画会社が「Dolby Visionで再生した映像こそがディレクターズ・インテントだ」と明言しないかぎり、結局はユーザー側の好き嫌いの話で終わってしまうのが現状なのだ。

そうした観点で言えば、筆者は以前からDolby Visionの派手な画作りが好きではなかった。しかし戦略の変更だろうか? 最近ではその派手さも少し影を潜めてきたように思う。この日は『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』のUHD BDを、UB9000側でDolby Visonをオン/オフしながら比較したが、オンの方が暖色系で色乗りも濃厚ではあるものの、以前ほど派手だという印象は受けなかった。

とはいえ、少なくともX930で視聴する限りは、Dolby Visonをオフにした状態、つまりHDR10で再生した方が遥かに高画質だと断言する。これは個人的な嗜好の範疇ではない。誰が見てもHDR10の方がベールを2枚剥がしたくらいに解像感が高いのだ。

ではHDR10+の場合はどうか。『ボヘミアン・ラプソディ』や『メアリと魔女の花』のUHD BDを使って、「映画プロ」モードで比較してみると、こちらは基本的な画調はHDR10と変わらないが、やはり解像力がベール1枚分は落ちる。

原因は、双方の信号がそれぞれ専用のSoCを通るからだ。Dolby Visionに関してはブラックボックス化されているため詳細は分からないが、HDR10+についてはダイナミックメタデータを抽出するためのSoCが10bit処理であり、そこがボトルネックとなってREGZA自慢のフル12bit伝送ができなくなってしまう。HDR10+の規格自体は10bitなので問題が無いようにも思えるが、実際には信号処理の演算精度が落ちるため、最終的な画質に悪影響が生じるのだ。

私にはHDR10が4K解像度なら、HDR10+が3.5K、Dolby Visionが3Kくらいに感じられた。12bit伝送にこだわるREGZAならではの、なんとも皮肉な結果だが、次期機種では映像信号のバイパス経路を作るなどして、せめてHDR10+だけでもフル12bit伝送を実現してほしい。

■「ディレクター」モードの活用法

なお、X930でHDR10+再生時にダイナミックメタデータを使って輝度のコントロールをしているのは「ディレクター」モードだけだ。それ以外のモードではHDR10再生時と同様に、REGZA側で映像をリアルタイム解析することで輝度調整を行っている。先ほど「映画プロ」で比較した際に、解像感以外で差が出なかったはこのためだ。その証拠に「ディレクター」でHDR10+のオンとオフを比較してみると、明暗のダイナミックレンジが明らかに広くなり、随所にダイナミックメタデータの効果が認められた。

ただし、「映画プロ」がBVM-X300のイメージをそのまま拡大したような画質を目指して、超解像やガンマ、色のチューニングを施しているのに対し、「ディレクター」はあくまで測定器上でD65規格に近づけたモードに過ぎない。超解像処理もデフォルトではオフ。現状の「ディレクター」モードはHDR10+の認証を取るためだけに存在していると考えてよい。

そんな「ディレクター」モードの活用法として、筆者が期待しているのは、パナソニックのUHD BDプレーヤー「DP-UB9000」とのコンビネーションだ。「DLA-V9R」をはじめとしたJVCプロジェクターのHDR画質が、UB9000自慢の高精度トーンマップ機能を活用することで飛躍的に向上したのは記憶に新しい。「プロジェクターでHDRは無理」という常識を覆し、むしろ「HDRを観るならプロジェクターかも」と思わせるほど、強烈なパフォーマンスを発揮した。私もその映像にノックアウトされたひとりだ。

ここで注目したいのが、その際に「高輝度プロジェクター」のターゲット輝度とされたピーク500nitという数字だ。実はこれが、前述した「HDRエンハンサー」をオフにした際のX930の最高輝度と同じなのである。

ピーク輝度が落ちて何がそんなに嬉しいのかと思われるかも知れないが、先ほどの説明を思い出してほしい。HDRエンハンサーとは「RGBW方式の有機ELパネルにおいて、W(ホワイト)のみをブーストし、白や彩度の低いエリアの輝度を最大2倍に伸張するスイッチのこと」だ。つまり、「色の正確さ」という点だけに注目すると、Wをブーストしない「HDRエンハンサー」オフの状態こそが、最もD65に忠実な値となる。

そもそも映画鑑賞にピーク輝度1000nitは必要なのだろうか? UHD BDやApple TV 4Kの4K配信でメタデータやヒストグラムを見ると、500nitを超えるのは、ごくごく限られた一部のエリアであることが分かる。

それならばピーク輝度を500nitに制限するのと引き換えに、UB9000の高精度トーンマップを使って、全体の階調性や色再現性を向上させる方が良いのではないか? V9Rとのコラボレーションで暗部階調がこれでもかと掘り起こされる様を見てしまうと、余計にそう思えて仕方がない。

そこで実験。UB9000のメニュー画面で接続機器を「高輝度プロジェクター」に設定し、500nitにトーンマップされた信号をX930へ入力してみる。「HDRエンハンサー」はもちろんオフ。超解像処理は「映画プロ」と同じ値に設定した。

まずは『マリアンヌ』UHD BDを使って、UB9000+V9Rのデモでは必ず驚きの声が上がる、1:25:15からの夜間空襲のシーンをチェックした。おぉ、狙い通りではないか。「映画プロ」よりも暗部の見通しが俄然良くなって、急に夜目がきくようになる感覚だ。

『君の名は。』はどうだろう。こちらもチャプター2冒頭(01:34)からの、瀧と三葉が彗星を見上げる夜空の階調や、濃紺の発色にアドバンテージが見て取れる。ところが、デイシーンになるとデメリットも顕になってくる。ヒストグラムでは500nit以下のシーンであるにも関わらず、明部が必要以上に寸詰まってしまうのだ。おそらく他の作品でも明るいシーンでは同じ結果になるだろう。

どうやらREGZAがUB9000とコラボレーションするには、JVCプロジェクターと同じように、受け側にも専用にチューニングされた500nitモードが必要ということらしい。しかし上手く追い込めば、暗室での映画鑑賞には間違いなくメリットがありそうなので、是非ともファームウェアアップデートでの対応をリクエストしたい。なにせ歴史を紐解けば、同じくパナソニックが開発したMGVCディスクに、事実上初めてフル対応を果たしたのは、12bit伝送が自慢のREGZAだったのだ。そんな前例もあるだけに否が応でも期待してしまうではないか。

「最新のREGZAが最良のREGZA」
■「最新のREGZAが最良のREGZA」

ドイツの高級車ポルシェを評価する際に、「最新のポルシェが最良のポルシェ」という表現がよく使われる。その言葉を借用するならば、フラットディスプレイの世界に「イマーシブ画質」という新境地を切り拓いたX930もまた、「最新のREGZAが最良のREGZA」であることを体現している。

その一方で、X920のエネルギッシュな画質は、BVM-300で観た“印象”を大画面に拡大するという点においては、今でもナンバーワンではないかと思うし、X910は地デジ画質では流石に見劣りするものの、他の有機ELテレビでは得難いシルキーな質感が実に魅力的である。つまりこの3機種は、まるで歴代のポルシェのように、それぞれの画質を「個性」として語れるレベルにまで到達しているのだ。

この先、REGZAはどこに向かうのだろうか? 今、4K/HDR製作の現場では、長年、絶対的リファレンスとして君臨してきたBVM-X300が、徐々にBVM-HX310に置き換わり始めている。

メガコントラスト液晶パネル搭載のHX310であれば全白でも1000nitが出せるため、グレーディングの自由度が飛躍的に高まるからだ。ただし、これはあくまで31型で、且つグレーディングという特殊な世界での話。仮にこの技術が民生機レベルまで降りてきても、動画解像度という液晶の泣き所が解決されないかぎりは、有機ELの画質優位は変わらないだろう。

もっとも、住吉氏が長年追い求め続けているのは、BVMの完全コピーではない。カメラレンズの前に広がる現実世界、つまり電子映像化される前の被写体の姿を「リクリエーション(Re-creation)」する。それがREGZAの目指す究極画質なのだという。

実のところ、スタジオ出身の筆者にはこの思想がなかなか理解できなかった。それゆえにX920の総括では「画質に関しては、これ以上どうするのか」「パラダイムチェンジには印刷方式による有機ELパネルの登場を待つ必要があるかも知れない」と書いた。しかしX930を観た今なら分かる。私はたしかに山手線に乗っていた。たしかにNHKホールにいた。REGZAによる「画質革命」はもう始まっているのだ。

■アクセサリー交換でさらに高画質化をめざす

前回のレビューの最後で、X920の画質を無双状態にするアクセサリー類を幾つか紹介したのだが、“いろんな意味”で反響が大きかったようだ。特にサンワサプライの「CAT6H4LAN」という産業用LANケーブルは、記事掲載後にAmazonで売り切れ状態が続いたほどだ。

それに気を良くして、今回の取材では同じくサンワサプライの「KB-T8」というCAT8仕様の極太単線ケーブルに、日本テレガートナーの「MFP8」というプラグをつけた自作品を用意した。CAT6H4LANも非常にバランスの取れたケーブルだが、こちらは画質も音質も桁違い。ただし結線方法にひと工夫必要なのと、プラグが高価ということもあって、今回は参考出品という扱いにしたい。ご興味がある方は筆者のTwitterまでお問い合わせを。

筆者が監修している電源ケーブルのオヤイデ電気「TUNAMI THE MASTER」(受注生産品)や、USBパワーコンディショナーのパナソニック「SH-UPX01」(背面のUSB2.0空き端子に挿す)も、X930のポテンシャルを最大限に引き出すアクセサリーとして引き続き激推しする。特にSH-UPX01は、最近通販サイトで2万円を切る価格で販売されることも多くなってきた。今が買い時である。

さらに今回はAIM電子の光ファイバーHDMIケーブル「LS2-015」も用意した。光ファイバー=長尺というイメージがあるかも知れないが、このケーブルの真価が発揮されるのは、むしろ短尺での使用だ。非常に高価ではあるが、同社「ReferenceII」との比較でも画質は圧勝。それまでの画が全て虚像に思えてしまうほどの猛烈な解像力を誇る(あまりの衝撃に、私も取材後に清水の舞台から飛び降りてしまった……)。

REGZAは有機ELテレビのポルシェである。どんどんチューンナップして究極画質を目指してほしい。

<ご注意>X930の取扱説明書には「電源コードは、本機の付属品を使用する」の指示が記載されております。電源ケーブルを交換する際は自己責任で行って頂きますようお願い致します(編集部)

秋山 真
20世紀最後の年にCDマスタリングのエンジニアとしてキャリアをスタートしたはずが、21世紀最初の年にはDVDエンコードのエンジニアになっていた、運命の荒波に揉まれ続ける画質と音質の求道者。2007年、世界一のBDを作りたいと渡米を決意しPHL(パナソニック ハリウッド研究所)に参加。ハリウッド大作からジブリ作品に至るまで、名だたるハイクオリティ盤を数多く手がけた。帰国後はアドバイザーとしてパッケージメディア、配信メディアの製作に関わる一方、オーディオビジュアルに関する豊富な知識と経験を生かし、2013年より『AV REVIEW』誌や『ホームシアターファイルPLUS』誌でコラムを連載中。夏が来るたびに釧路移住を夢見る42歳。

秋山 真

最終更新:8/28(水) 16:00
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