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絵画・工作・演劇…クリエイティブ研修が会社の成長につながらない理由

8/26(月) 6:01配信

ダイヤモンド・オンライン

 「多様性のある視点を獲得するため、ワールドカフェに行ってきます」
「美的センスを鍛えるため、お絵かき講座に参加します」
「共創の感覚を磨くため、演劇のワークショップにエントリーします」
 
 最近流行している研修(と呼んでよいのか)は、なんだか「ふわふわ」している。いろいろな人といろいろなことをしゃべる(対話する、と彼らは言う)、絵を描く、演じる、思いつきをポストイットに書いて貼る…。

 ビジネスの環境が目まぐるしく変化し、次なる勝ちパターンを模索する中で、詰め込み教育の逆を行くような“クリエイティブな研修”が組織に新風を吹き込んでくれるのではないかと、期待する企業は少なくない。ただ、そうした研修が実際のビジネスに「どう生きるのか」は、いかんせん見えにくい。

 「お遊びみたいなことをやって、本当に意味があるのか」「仕事はもっと真面目にやるものじゃないのか」と、このような活動に対して手厳しい批判を下す人も当然いるだろう。

 その実、私自身が手掛けているカルチャースクール(のようなもの)では、上記と似たようなプログラムを実施してきており、実際に好評を博している。個人的にはこれらのプログラムの素晴らしさを強調したい気持ちは強いものの、企業の就業時間内における研修ではなく、あくまでアフター5に知見を広げてもらうための個人向けのプログラムとして提供している。先述のとおり、仕事へのダイレクトな成果がいまひとつ実感できないこともあるからだ。

● イノベーションに必要な 3つのプロセスとは?

 そもそも、イノベーションを伴う仕事にはフェーズがある。着想、発案、実現の3段階だ(デザイン思考の巨匠ティム・ブラウン氏の提唱による)。

 着想はソリューションを探り出すきっかけになる問題や機会を導き出すプロセス、発案はアイデアを創造、構築、検証するプロセス、実現はアイデアをプロジェクト・ルームから市場へ導くプロセスである。チームがアイデアを改良したり、新たな方向性を模索したりする間に、プロジェクトがこの3つの領域を何度も行ったり来たりする。さらに、これらの段階をぐるぐる回しながら、改良を重ねていく。

 特に、日本の大企業が苦手とするのが、最初の「着想」の部分である。実現可能性からの逆算で発想するやり方には慣れているが、それでは従来の枠組みを抜本的に変えるようなアイデアは生まれない。新しいビジネスを発案し、成功に導くには、これまで関わらなかった分野の人と対話をして、自分の視野を広げ、今までにない頭の使い方をするために目と手を鍛え、全体を構想しながら柔軟に各工程を行き来する遂行プロセスそのものを習得する必要がある。

 そうしたやり方に寄与するものが、ワールドカフェでの視野の拡大であり、美術講座や演劇講座による解釈の多様性の確保であり、デザイン思考の研修によるプロセスの学習であったりするのだ。そして、日頃の思考や行動の枠をはみ出していくためには、このような遊びの要素がふんだんに採り入れられているトレーニングが欠かせないのだ、と推進者は強調する。

● クリエイティブ研修に懐疑的な 中高年管理職

 しかしながら、「きちんとした会社」の中高年管理職は、そもそも仕事の中に遊びの要素が入ってくることを好まない。極端な人は笑顔を見せて雑談しているだけで、真面目に仕事をしろ、などと怒る。こうした人は「真剣、一途、専門特化、単純化、秩序、継続、完全、ミスをしない」などを、重要な価値として認識しているのである。

 一方、クリエイティブを自任するものは「(精神的)余裕、多様性、複雑性、越境、連結、破壊と創造」などを標榜する。

 そして、互いの価値観は大きく対立してしまう。

 最近では、前者の価値観だけでは組織は同質化する一方で、利益を生む事業を開拓できないようにみえるため、後者が優勢になってきているようにみえる。時代錯誤な真面目さへの固執が日本企業の停滞を生んでいるのだ、と。

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最終更新:8/26(月) 6:01
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