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「認知症を超音波で治す時代」が早ければあと4年で到来!東北大学の挑戦

8/26(月) 6:01配信

ダイヤモンド・オンライン

 認知症の治療は非常に困難である。現在、承認されている認知症治療薬は、いずれも病気の進行を抑制する程度のものであり、劇的な回復が期待できるものではない。ところが、薬ではなく、思わぬ技術を用いた、新たな治療法が注目されている。それは東北大学の下川宏明教授率いるチームが研究を進めている“超音波”を使う治療法だ。(医療ジャーナリスト 木原洋美)

● 検査だけではない 超音波のすごい力を利用

 「認知症の特効薬はあと10年以内にできますよ」――。

 20年ほど前、世界的な研究者から教えられ、一日千秋の思いで待ちわびてきたが、今に至るまであらわれていない。薬で進んだのは、種類が増えて、「飲み薬が苦手な人は、貼り薬が使える」程度に選択肢が広がったことぐらいだろうか。

 実際、フランスは昨年8月、代表的な治療薬4種類を、「有用性が不十分」という理由で医療保険の適用から外してしまった。「進行を抑制する(遅れさせる)」という効果が分かりにくい割に、下痢やめまい、吐き気などの副作用が起きやすいことが理由だ。

 これら4種類の薬剤の日本での保険適用は継続されているが、患者やその家族、将来の発症の不安を抱えている方々にとっては「やっぱり、発症したら打つ手なし」と宣告されてしまったようで、がっくりするニュースだったのではないだろうか。

 ところが思わぬ技術を用いる、新たな治療法が注目されている。その開発を進めているのは、東北大学の下川宏明教授率いる研究チームだ。

 それは薬ではなく、“超音波”を使う治療法で、アルツハイマー型認知症と脳血管性認知症の両方を治せる可能性があるという(認知症にはアルツハイマー型、脳血管性、レビー小体型、前頭側頭型の4種類があり、アルツハイマー型が6割、脳血管性が2~3割で、患者の大半を占める)。

 医療現場での超音波利用といえば、最も身近なのは健康診断時のエコー(超音波)検査。CTと違って放射線被ばくの心配がないため、胎児の検査にも使われている。

 一方、治療では、高出力の超音波の発熱作用を利用した癌(がん)などの治療法はあるが、いずれにしても、一体どうやったら、超音波で認知症が治療できるのかはイメージしがたい。「原因物質とされるアミロイドβタンパクを超音波で破壊するのだろうか」などと考えていたら、全然違った。

 なんと超音波には、血管を新生させ、血の巡りが悪くなって障害された組織の機能を改善させる力があるという。

 こうした超音波のマル秘パワーを利用する治療法は、昨年6月から軽症アルツハイマー型認知症の患者を対象に、安全性を評価する治験治療が行われていたが、今年3月に第1部が終了。効果安全性評価委員会で安全性が確認されたため、今年の6月からは、さらなる有効性の評価を検証するために、患者40人を対象とした第2部の治験治療が開始されている。

 期待が高まる超音波治療法について、下川教授に話を聞いた。

● 第1ステップ 衝撃波で狭心症を治す

 ―― 一般的に認知症は、老年科や脳神経内科の領域ですが、下川先生は循環器内科医です。心臓疾患を診る先生がどうして、認知症治療の研究を始めたのでしょうか。

 発端は、重度の狭心症を治療する目的で始めた「低出力体外衝撃波治療」の研究でした。狭心症は動脈硬化などによって心臓の血管(冠動脈)が狭くなる病気で、重症になるとステント(血管を拡張させる医療機器)が入らなくなったり、血管を移植するバイパス手術も体力的にできなくなったりします。日本では近年、重症の狭心症患者さんが増えており、私はそうした方々を治療する方法を探していたのです。

 そんな中できっかけを与えてくれたのが、私どもが2001年に主催した「第一回日本NO学会学術集会」でした。血管の一番内側にある内皮細胞がNO(一酸化窒素)を産生し、血管を拡張・新生させて、動脈硬化を防ぐ働きをしていることを解明したルイス・J・イグナロ博士が、1998年にノーベル生理・医学賞を授与されたことをきっかけに設立された学会です。その学会で、「内皮細胞に低出力の衝撃波を照射するとNOが産生される」というイタリアの研究グループの発表を聞き、低出力衝撃波を用いた狭心症の血管新生療法を着想しました。

 衝撃波は、雷が鳴るときやジェット機が通過するときなどに発生する振動波で、医療では、尿管結石や腎結石を体外から破砕する結石破砕治療として使われています。

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最終更新:8/27(火) 13:35
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