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世界中に広げるスカウト網の内へ、外へ。レッドブル流の育成戦略

8/29(木) 19:00配信

footballista

それぞれ2005年、2009年に資本提供が始まったザルツブルク、RBライプツィヒに加え、世界中に点在する関連クラブ。そのネットワークをフル活用した、レッドブル・グループならではの人材育成とは?

文 河野大地

 レッドブル・グループの人材育成の基盤は、何と言ってもワールドワイドに張りめぐらされたスカウティング網にある。ガーナとブラジルにある直系の育成機関だけでなく、世界各国のアカデミーやクラブチームとのコネクションが数多く存在しており、いち早く金の卵を発見できるスキームが確立されているのだ。2018年に欧州でもトップレベルと言われる敏腕スカウトマン、ポール・ミッチェルをイングランドから連れて来たことにも彼らの本気度がうかがえる。

 RBの手法は、金に糸目をつけず選手を買い漁るようなメガクラブの青田買いとは少しニュアンスが異なり、グループ内のクラブでじっくり育成ができることから数々の若手が成功を遂げてきた。そうした先輩方の前例があることにより、別大陸から初めてヨーロッパの地に足を踏み入れる10代の選手にとっては自らのキャリアプランが想起しやすく、RBグループの大きな強みとなっている。FIFAが制限しようとしている「レンタル育成枠の上限人数」についても、「(グループ内の)クラブ間移籍」という名目にすることで難なくかいくぐれる可能性はありそうだ。

「金が金を生む」サイクルを

 RBグループ内における選手個々の育成方針には2通りが存在する。“トップチーム”であるRBライプツィヒへの昇格と、外部クラブへのステップアップだ。今のところ、特にRBライプツィヒの高い負荷を伴うフットボールに適合できる中盤の選手の場合は、ザルツブルクや関連クラブからそのまま東ドイツに“人事異動”となるケースが多い。一方、アタッカーの南野拓実や奥川雅也はおそらく後者に該当するが、移籍金はそれなりの額が設定されており、その点でザルツブルクとしては、長年の目標である「ショーケース」でのアピール、つまりはCL出場とそこでの躍進が直近のミッションとなる。

 また、多くのMFをアカデミーのあるガーナ、同じく西アフリカのマリ、南部のザンビアなどアフリカ諸国から連れて来ていることにも触れておきたい。内部では代えの利かない貴重な戦力となり、外部に向けても希少な“高額商品”となるナビ・ケイタのような選手の量産を、RBグループは画策しているのだ。現に、 ともにマリ代表のアマドゥ・ハイダラやディアディエ・サマセクは、オーストリアの地でケイタを上回るスピードで順調に成長し次のステージへ進んだ。このように世界中から集められたダイヤの原石たちが、ラルフ・ラングニックらが考案した肉体的にも精神的にも高いプレッシャーをかけるトレーニングを、最先端のテクノロジーが集結した専門施設で日常的に実践することにより、意図的に“超人”が生み出されているわけだ。

 ザルツブルクはバイエルンOBの天下り先としても有名で、ドイツの絶対王者から揺るぎない勝者のノウハウを吸収し続けている。対してRBライプツィヒは新興クラブであるがゆえの強み(縁故採用などの影響をあまり受けない)を最大限に活用し、外部から有能なバックルームスタッフの招へいを絶えず行っている。選手獲得に関わる制約は数あれど、さすがに内部スタッフの補強にはFIFAもUEFAも口出しできないはずだ。選手だけでなくクラブの運営に関わる人材にも惜しみなく投資し、あらゆる新しい取り組みを推進するのもRB流だ。

 こうした国際的なスカウティング・ネットワークの構築は、CFG(シティ・フットボール・グループ)も同様に現在進行形で注力しているが、その前例として最も早く仕組みを構築し実行し続けているという意味では、RBグループが一足先を進んでいると言えるだろう。もちろんこれは、どのようなクラブや組織でも容易にできることではない。潤沢な資金とマーケティングに長けた有能なスタッフを多く抱えることで「金が金を生む」無敵のサイクルを運用できる本家レッドブル社のDNA、長年培われた経営ノウハウの賜物なのである。

最終更新:8/29(木) 19:00
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