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日本の「医療費抑制論」で見落とされている視点

8/29(木) 5:00配信

東洋経済オンライン

人生100年時代の到来によって、医療費は増加している。医療費の増加によって、日本の財政は破綻しないのか。「日本人は医療費増大の本質をわかっていない」(2019年8月22日配信)に続いて、慶應義塾大学総合政策学部学生の菅原一輝さんをインタビュアーとして有識者に尋ねた。

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■質の高い医療サービスはこれから先も保障される? 

 菅原 一輝(以下、菅原):少子高齢化と厳しい財源を背景に、医療費削減のプレッシャーが強いことがわかりました。さまざまな調査で日本の医療サービスに対する国民の満足度は高いことが示されているものの、この先も同じように質の高い医療サービスが受けられるのでしょうか。

 佐藤 啓(以下、佐藤):現在は、「オプジーボ」(人が本来持つ免疫力を利用してがんを攻撃し退治する免疫チェックポイント阻害剤)のような高額な治療薬もあります。薬価が引き下げられた現在でも平均的な日本人の男性に1年間投与すると年間1000万円以上の支払いが必要となり、これが保険適用になることで医療財政を大きく圧迫するのではないかと懸念されています。

 しかし、実際にオプジーボには皮膚がんや胃がんの治療薬として効果があることがわかっています。このような、高額だけれども効果のある薬についてどう考えればよいでしょうか。

 津川 友介(以下、津川):治療や薬のコスパを測るときに用いられる「費用対効果分析」は、国全体の財政への影響を一切考慮していません。C型慢性肝炎の治療薬として1錠の価格が6万円以上もする高額な薬であった「ソバルディ」の問題が議論されたときにも、「ソバルディ」のコスパ(費用対効果)は優れているが、国全体の医療費負担は激増し、財政破綻を引き起こすのではないかということが懸念されました。

 しかし、国が「財政破綻を引き起こすかもしれないので支払いません」という立場を取っては、新しい薬の開発やイノベーションを阻害することになってしまいます。このため、国民的な価値観によるところでもありますが、高額だが効果のある治療薬を将来に対する「投資」と捉える先進国は少なくありません。

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最終更新:8/29(木) 5:00
東洋経済オンライン

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