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「議会の無力化」で暴走するジョンソン英首相の勝算

8/29(木) 18:00配信

日経ビジネス

 夏の終わりが近づく8月下旬、英国は怒号の嵐に見舞われた。

 ボリス・ジョンソン英首相は28日、英議会を9月9日の週から10月13日まで約1カ月間、閉会とする案を明らかにした。同日、エリザベス女王はその政府案を承認した。英議会は現在、夏休みの休会中だが、9月3日の再開直後に閉会となる。

 10月14日にエリザベス女王の施政方針演説で議会が開会した直後の17日と18日、ブレグジットを協議するEU首脳会議が開催される予定だ。ジョンソン首相は「審議の時間は多くある」と言うものの、議会開会から31日のEU離脱日まで2週間強しかなく、一定期間とはいえ、「議会の無力化」を図ろうとしているのは明らかだ。

 ジョンソン首相の決定に対して、英国の議会や世論は激しく反発した。「民主主義への侮辱と脅威だ」(労働党のコービン党首)、「憲法違反だ」(バーコウ下院議長)、「これは民主主義ではない」(スコットランド自治政府のスタージョン首相)など、ジョンソン首相を糾弾する声が出た。議会周辺では急きょ、抗議集会が開かれ、ジョンソン首相を激しく批判した。

 今のところ、議会で審議する時間が足りないため、合意なき離脱の可能性が高まったという見方が大勢を占める。大和総研ロンドンリサーチセンターの菅野泰夫センター長が以前、指摘していたように(関連記事「英新首相、EU離脱で議会制民主主義に対する冒涜も」参照)、ジョンソン首相は一部でささやかれていたシナリオを実行に移そうとしている。

EUと「手打ち」があったのか

 だが、あまりにも唐突な発表に、首をかしげる人もいる。ある識者は「EUとの間で極秘で何らかの合意があったのではないか」と指摘する。離脱日の2カ月前のこのタイミングで、政府案を議会の俎上(そじょう)に載せれば、様々な思惑が乱れ飛び、議会が否決する可能性が高い。開会後に審議の時間を十分に与えず、政府案の是非を問い、一気に合意に持ち込むというシナリオがあるのかもしれない。

 気になるのは為替相場の動きだ。英議会の閉会方針が明らかになるとポンドは大幅に下落したが、その後は対ドルや対円で戻している。急落の反動かもしれないが、金融関係者は「合意なき離脱」の一点張りというわけではなさそうだ。

 ジョンソン首相のEU離脱交渉は、メイ前首相のそれとは真逆と言える。メイ前首相は議会と真っ正面から向き合い、失敗した。EUとの合意案を議会に諮り、3回も否決された。対照的にジョンソン首相は、議会を封じ込めて審議の時間を大幅に制限しようとしている。

 メイ前首相の離脱交渉は「秘密がほとんどない」と言われたものの、ジョンソン首相のそれは謎が多い。ブレグジットの姿は未だに見えないが、長い間かけて築き上げてきた議会制民主主義を犠牲にする奇手が必要なほど、英国が追い込まれているのは確かだ。

大西 孝弘

最終更新:8/29(木) 18:00
日経ビジネス

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