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すべての電力を再生可能エネルギーで供給する鍵は「地中」にあり:地熱発電の展望と課題

9/2(月) 12:34配信

WIRED.jp

再生可能エネルギーだけで米国の電力をすべて供給する鍵は「地中」にあった──。地熱エネルギーで米国の電力の20パーセントを賄えるという試算が、このほど環境系シンクタンクによって発表された。再生可能エネルギーとして風力や太陽光などが注目されるなか、これまでほとんど注目されてこなかった地熱発電。地震を引き起こす危険性も指摘されるが、政策支援や技術開発があれば有効に活用できると指摘されている。

有効な技術に付いて回るリスクとは?

想像してほしい。炭素を排出しないエネルギーが足元の地面に隠されているとしたらどうだろう? しかも、それは曇りの日でも風のない日でも、いつでも使えるものだとしたらどうだろうか──。

実際のところ、想像する必要はない。それは現に存在するからだ。再生可能エネルギーだけで米国が機能し続けるには、地熱エネルギーが鍵になる可能性があることが、これまでの研究で示されてきた。クリーンエネルギーの推進を目指す保守系シンクタンク「ClearPath」が2019年5月に作成した報告書によると、地熱エネルギーで米国の電力の20パーセントを賄えると試算されている。

言うなれば、電力の約4分の1を地熱から得ているアイスランドに近い状況だろう。そして実現できるかどうかは現行の規制を緩和できるか、そして石油会社やガス会社が利用するボーリング技術を地熱にも活用できるかにかかっている。

「(地熱は)素晴らしい資源ですが、あまり大事にされていません」と、ClearPathのエネルギー革新プログラム責任者であり、この報告書を作成したスペンサー・ネルソンは言う。

地熱が潜在的にもつ可能性を米国議会が十分に理解すれば、地熱エネルギーを推進するための助成金や規制改革が可決されるだろうと、ネルソンは指摘する。この種の問題は、現在の米国における奇妙な政治情勢下においても、超党派の支持を得られる可能性があるからだ。

忘れられた地熱のポテンシャル

米国における地熱エネルギーの活用は、米西部のカリフォルニア州やネヴァダ州、ユタ州といった数カ所でしか現時点では見られない。いずれも、地下の温泉から得た蒸気を利用して電気タービンを回す技術が採用されているが、電力供給量は合計で米国全体の0.4パーセントにとどまっている。その要因のひとつには、政治家たちが地熱エネルギーの存在を気に留めていないことが挙げられると、ネルソンは言う。

クリーンエネルギー推進のための優遇措置が米国議会で可決されたとき、議員たちは地熱発電にあまり関心を示さなかった。事業者は風力発電や太陽光発電では30パーセントの税額控除が受けられるが、地熱発電の税額控除は10パーセントにすぎない。「この決定は間違いでした」と、ネルソンは指摘する。

過去を振り返れば、油井とガス井に対する環境規制を緩和する法律を05年に通過させたときも、米国議会は地熱を視野に入れていなかった。その結果、地熱エネルギーを得るための掘削に必要となる環境関連の承認プロセスは、石油開発ための掘削よりも大幅に時間がかかるものになっている。

こうした面倒な手続きが、地熱エネルギーが普及しない主な理由であることは、米国立再生可能エネルギー研究所(NREL)の調査でも指摘されているところだ。地熱プロジェクトに着手するために必要な環境調査には通常8年かかり、発電所を建設しようと考える人にとっては極めて高いコストがかかることになる。

この調査レポートによると、仮に承認プロセスを4年に短縮した場合、新規のプロジェクトが急増することが見込まれるという。その結果、地熱発電による50年までの電力生産量は、現行の規制の下で予想される量の倍に膨らむことも十分にあり得ると指摘されている。

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最終更新:9/2(月) 12:34
WIRED.jp

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