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北海道の発展に貢献した物語を実感できる日本遺産の旅

9/4(水) 11:54配信

旅行読売

 今年5月、赤平(あかびら)市、小樽市、室蘭市、夕張市、岩見沢市、美唄(びばい)市、芦別(あしべつ)市など、北海道内12市町の45施設を構成文化財として「本邦国策を北海道に観よ!~北の産業革命『炭鉄港(たんてっこう)』~」が日本遺産に認定された。
 雄大な景色や四季折々の食べ物を楽しむ旅ももちろんいいが、北海道の発展に貢献した物語を知ると、北海道の新たな魅力が浮き出てくる。「炭鉄港」の構成文化財の一つ、赤平市の「住友赤平炭鉱立坑櫓(たてこうやぐら)・周辺施設」を訪ねて、その思いがいっそう強くなった。

 日本遺産とは「地域の歴史的魅力や特色を通じて我が国の文化・伝統を語るストーリー」を文化庁が認定するもの。「炭鉄港」のストーリーは、「明治の初め、美しくも厳しい自然の中で石炭、鉄鋼、港湾とそれらを繋ぐ鉄道を舞台に繰り広げられた北の産業革命『炭鉄港』は、北海道の発展に大きく貢献してきたこと」だ。
 その基軸となっているのが空知(そらち)地方の石炭である。札幌から北東へ車で1時間30分、住友赤平炭鉱立坑櫓・周辺施設を訪ねた。ここは昨年7月に赤平市炭鉱遺産ガイダンス施設として整備され、のどかな景色の中にそびえる巨大な鉄塔が印象的だ。高さ43.8メートルの鉄塔は、1994年に閉山した住友赤平炭鉱の立坑櫓で、かつては地下550メートルから石炭を揚げていた。

漂う空気は25年前と同じ

 施設では1日2回、かつて炭鉱マンとして働いていたガイドが、内部を案内する。炭鉱の概要を学んでから、ヘルメットをかぶって内部へ入るのだが、度肝を抜かれた。まず、複雑にレールが敷かれ多くの炭車(トロッコ)が置かれた巨大な空間に圧倒される。全国で炭鉱施設が取り壊されていく中、赤平の炭鉱施設は炭鉱会社と赤平市の間で交わされた地域振興の協力協定の中で利活用の方針が示され、一部がそのまま残された。巨大なだけではない。25年前の閉山当時の空気が、そのまま閉じ込められ残っている。炭車は今にも動き出しそうだ。炭鉱マンの威勢のいい声が聞こえてきそうだ。

 秘密基地を探る気分で、奥へ進んで、立坑櫓を見上げる。この立坑櫓は当時の金額で20億円が投じられ、その設備は東洋一と言われたそうだ。内部には、炭鉱マンや石炭を地下550メートルまで揚げ降ろししたケージ(エレベーター)があり、2階の巻上機室に上ると操縦室にも入れる。壁に掲げられたカレンダーを見ると、1994年の閉山時のもの。真空管がびっしり並ぶ電気系統も当時のまま。時間がぴたりと止まっている。鳥肌が立った。
 文化庁への日本遺産認定申請書には「当時の繁栄の足跡は(略)見る者を圧倒する本物の産業景観として今でも数多く残っています」とある。その言葉通りの迫力、ありのままの姿、空気感、染み込んだ歴史を体感できる場所だった。これを機に、ほかの構成文化財を見たくなった。美観やグルメだけではない北海道の魅力の一端を知った。

文/渡辺貴由 写真/齋藤雄輝

●赤平市炭鉱遺産ガイダンス施設
 炭鉱遺産ガイド付き見学は1日2回(10時~、13時30分~)、所要1時間30分、800円、電話0125・74・6505。休館日など 詳細はホームページを参照。施設へは根室線赤平駅から徒歩15分、道央道滝川ICから10キロ

最終更新:9/4(水) 11:54
旅行読売

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